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往復書簡
#16
アップデートしながら
「自分ち」を楽しむ

text & photo : naoko mangyoku

自ら設計した家での新たな暮らしを伝えあう建築家の「往復書簡」シリーズ。今回は、萬玉(まんぎょく)さんから、梁井(やない)さんへの手紙です。

photo:akemi kurosaka


mangyoku>>  yanai 📨 

 

やないさんへ

こんにちは。

少しずつ秋の気配を感じつつもまだまだ日中は暑い日が続きますね。

窓の多い我が家で風がよく抜けるのですが、いくら窓全開放にしていても猛暑には敵わず、この夏はエアコンフル稼働の日々でした。

これから自邸での初めての秋、そして冬を迎えるのが楽しみです。

さて、やない家の日々の生活のリアルが垣間見れたお手紙でした。

たしかにやない家では、1階がドラマチックで見せ場の空間ですが、生活の重心は2階にありそうですね。2階の将来子ども部屋想定エリアが、お子様向けリビング(1階は大人向けリビングとすると)のようにも見えます。竣工時にお邪魔した時は、将来子ども部屋用の予備スペースという印象でしたが、今見ると「子どものための多目的スペースだったんだ!」と気づきます。使い始めてからのイメージってやっぱり変わりますね。

使い始めてからの発見というと、我が家も最近、ある場所が予想外の人気スポットになっています。

その場所とは、A面とB面をつなぐ三方枠のトンネル周辺です。ここは我が家では唯一の動線空間にあたるのですが、何故だか息子がここでよく遊ぶんです。もちろん動線なのでめちゃ邪魔だし、おもちゃ踏んじゃうし、いいこと無しなのですが、毎日よくここを占拠しております。

おもちゃや本を広げたり、マットをずるっと敷いて寝床をつくったり、挙げ句の果てにはここでお菓子を食べる始末です(釣られて夫もここで寛ぎ始めるという……)。

なんでだろうと観察すると、「おそらくここが家全体をなんとなく感じられる場所だからかな?」という仮説に至っております。

私としてはこのトンネルは、例えば、家事と仕事を切り替えるスイッチとして機能しているのですが、息子にしてみればそんなスイッチなんてもちろんあるはずもなく……。なので、家に一緒にいる私や夫の見える位置を選んでいった結果、このトンネル周辺になったのでしょう。

ちなみに私はお風呂が一番のお気に入り空間です。とくにひとりでゆっくり入れる時は、音楽を聴いたり映画を観たりしながらお風呂タイムを満喫してます。

やないさんに質問をもらっていた「将来の使い方」についてですが、正直本当にノープランです(笑)。

「ゆくゆく息子が成長して個室が必要になったら、やっぱりB面の一部を個室かするのかな?」とか、
「もしこどもが増えらたらどうなるんだ?」とか、
「私が自宅でもバンバン模型づくりを始めたら、むしろB面でも手狭になるのか?」とか、
「介護が必要になった親との同居なんてことも0%とは言い切れないよな……」など、
「もしも」を考え始めると本当にキリがありません。そして我が家の入っているマンションは、まもなく築50年を迎えるので、そもそもマンション側の寿命も気になるところです。

ただ長い目で見るとわからないことだらけですが、短いスパンで考えると住み始めてからもDIYでデッキを張ったり、塗装をしたり、水回りに鍵をつけたり(お客さん用)など、「なんだかんだで動き続けているな~」と感じます。いまはB面の北側ニッチに収納付きデイベッドを計画中で、住みながら妄想して設計図に反映するという手順は自邸の醍醐味だな、と楽しんでいます。

この手紙を書いていて思うのは「自邸」という言葉の響きがどこか立派でおおげさなものと感じてしまうくらい、単純に「自分ち」をアップデートしながら生活をのびのび楽しんでます。その経験がこれからの住宅建築への気づきとして増えていくといいなと思っています。

暮らし始めて半年、やないさん自身の自邸での気づきと設計活動へのつながり、ぜひ聞いてみたいです。

萬玉直子

 

次回は、10月9日の投函予定です。 📪

profile
萬玉直子  naoko mangyoku

1985年大阪府生まれ。2007年武庫川女子大学生活環境学科卒業。2010年神奈川大学大学院修了。2010年〜オンデザイン。2016年〜オンデザインにてチーフ就任。2019年〜個人活動としてB-side studioを共同設立。主な作品は、「大きなすきまのある生活」「隠岐國学習センター」「神奈川大学新国際学生寮」など。共著書に「子育てしながら建築を仕事にする」(学芸出版社)。趣味は朝ドラ。最近はアレクサに話しかけるのが密かな楽しみ。