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往復書簡
#12
所有感を
共有する場

text & photo :naoko mangyoku

建築家ふたりが自ら手がけた自邸について、手紙を通して近況を伝えあう「往復書簡」シリーズ。前回に引き続き日々の暮らしで気付いた、様々なトピックをプライベートな視点も織り交ぜながら綴ってもらいます。今回は、萬玉(まんぎょく)さんから、梁井(やない)さんへの手紙です。

萬玉邸にて。(右)萬玉さん、(左)梁井さん。photo:akemi kurosaka


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やないさんへ

こんにちは。お久しぶりのお手紙です。

やないさんの「梅仕事」いいですね。

息子さんが持っているからか、かなり特大梅に見える(笑)。じつは私、「好きな食べ物は?」と聞かれたら「梅干し」と答え続けて30年……というくらい梅大好き人間なのです。来年はぜひお手伝いに行かせてください。せっせとヘタ取りしたり、梅干し用に三日三晩干しますよ。

さて、梅の話は置いておいて(笑)。庭が順調に耕されていますね。とくに4・5月のステイホーム中に庭があることは支えになったのでは!? と思います。

やないさんの庭生活に反応するように、我が家もL字のベランダ(A面、B面の流れで、ベランダをC面と冗談で名付けております)では、暮らしはじめてから少ずつしDIYで手を加えています。まだデッキ張りの途中段階ですが、アウトドアベンチや植物も少しづつ増やしています。ミニ菜園をしてみたり、先日は孵化したアゲハチョウを育てました。毎朝起床して、様子を見に行くのが日課になり、生活の中に「育てる」という営みが入るのはとてもポジティブだなと思いました。

さて、私もやないさんも新居での生活がスタートしたと同時に、外出自粛生活・リモートワーク生活がはじまりましたね。

私は、もともと新居に引っ越したタイミングでリモートワークを個人的に取り入れようと計画してました。何より片道1時間かかる通勤はそろそろ見直しても良いかなと感じていたので。仕事柄、チームでプロジェクトを動かすことが多いのでリモートワークへの不安もあったのですが、この自粛期間のおかげ(?)で、オンデザイン全体がリモートワークとなり、少し不謹慎ですけど私としては、たまたまタイミングが重なって良かったと思う面もあります。

ただ、保育園休園は全くの想定外でしたね……。

緊急事態宣言とともに5月末までおよそ2ヶ月、自宅に息子がずっといる生活となりました。息子は生後2ヶ月半から保育園に通っていたので、私としてもこんなに息子と一緒なのって一体どうしたらいいの(!?)状態で「遅れてきた育休期間」と冗談のように名付けて過ごしていました。

まぁ一言で表すとカオスな日々でしたが、「緊急事態宣言期間=非日常」というよりは「ある日常の側面を見せてくれた期間」だったな~と、今振り返ると思います。おかげで引っ越しをしてすぐに近所のいろんな公園を制覇できたり、スーパーの比較もできたりしたので、環境変化の馴染みは早かったです。

そんなこんなで、A面/B面という切り替えのある空間がさっそく大活躍しました。

今回は、B面の現在の使い方や様子を紹介できればと思います。

今のところ、私(たまに夫)のワークスペースと息子の遊び場という、大きく分けて2つにゾーニングされた使い方をしています。

B面では唯一の家具である造作の棚柱収納の分類が何となく空間の用途を決めていて、建築専門書籍の多い棚の近くが私の仕事場、おもちゃをたっぷり収納してる周りでは息子の遊び場として使っています。A面の生活エリアと(空間が)区切られているせいか、おもちゃをどれだけ散らかっていようが、仕事道具を広げっ放しになっていようが気にならないことが助かっています。

先日、友人家族が来た時はB面で食事をしたり、夜はマットを広げてストレッチをしたり、週末はDIYスペースになったり、時と場合によっていろんな活動を受け止めてくれてます。

建築関係の書籍の下はワークスペースとなってます。緊急事態宣言中はここで親子三人並んで仕事+息子は動画という光景が頻繁にありました

設計時は「決まった用途のない余白空間」としてB面を考えていましたが、使いはじめてみると、ある時は私の仕事場に、ある時は息子の遊び場に、ある時はホームパーティ会場に、ある時はDIY作業場所に、ある時は深夜のシアタールームに……と「人によって発生する活動と時間を受け止めてくれる場」なんだなと感じています。そして私も夫も息子もみんながB面は「自分の場所」と思っている不思議な状況になっています。個室だと、誰々の部屋というふうに所有者の専有空間になりがちですが、このB面は機能も定まっていないうえ、家族みんなが所有感を持ち時間によって共有されている場なのかな? と感じてます。

だいたいB面にはこんな感じでおもちゃが散乱しています

一点、ステイホーム中の難点を挙げるとすれば、我が家には個室がないので、オンラインミーティングの際に息子の声が平気で響き渡るし(何なら乱入してくるし)、「ちょっとこの時間だけ集中させて!」と籠る逃げ場がないのは盲点でした……。

これからの住宅には、シェアオフィスによくあるようなオンラインミーティング用ブースなんていうのも置かれるかもですね。もしくはコロナが落ち着いたら近所にワークスペース用物件を持つこともあるのでしょうか。その時、オフィスってどうなるんでしょうね。など、新しい生活様式は私たちの生活環境にも新しい発見を与えてくれそうですね。

仕事する私とお絵描きする息子がいい距離感

さて、新生活の感想のようなお手紙になってしまいました。

そういえば、やないさんは仕事と家事と育児のバランスのために家づくりで工夫したところってありますか? この往復書簡のタイトルである「ワーママ建築家」っぽい目線のこだわりポイント教えてほしいな!

 

次回は、7月17日の投函予定です。 📪

profile
萬玉直子  naoko mangyoku

1985年大阪府生まれ。2007年武庫川女子大学生活環境学科卒業。2010年神奈川大学大学院修了。2010年〜オンデザイン。2016年〜オンデザインにてチーフ就任。2019年〜個人活動としてB-side studioを共同設立。主な作品は、「大きなすきまのある生活」「隠岐國学習センター」「神奈川大学新国際学生寮」など。共著書に「子育てしながら建築を仕事にする」(学芸出版社)。趣味は朝ドラ。最近はアレクサに話しかけるのが密かな楽しみ。