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往復書簡
#08
住宅論か?
家族論か?

text & photo: naoko mangyoku

 

オンデザイン の萬玉(まんぎょく)さんと梁井(やない)さんによる、家づくりの往復書簡。いよいよ萬玉さんの自邸のリノベも佳境に差し掛かってきたようです。

(photo: Akemi Kurosaka)

 


mangyoku  >>  yanai 📨 

 

やないさんへ

竣工、そして引越し完了、おめでとうございます。

新居での生活、いかがお過ごしでしょう?

我が家も今月末の引越しに向けて最終段階に入っており、バタバタと過ごしております。慌ただしい中にも新居での生活を想うと期待感に満ちあふれ、前向きになれたりもします。

一方で、ここ最近は終わりの見えないコロナ感染が世の中をザワつかせていますね。建設業界にも影響が出ており、現場にモノが入らないといった話題も耳にすることがあります。幸い我が家は影響を受けずに予定通りに工事も進んでよかったのですが、本当に何が起こるか分からない世の中だなぁと思います。こういう非常事を通して、当たり前の日常を見直すことが繰り返されていくのでしょうか。混乱が落ち着いた後に、世の中の価値観がアップデートされていることに希望をもちたいものです。

さて、やないさんの手紙にあった旦那さんとの設計作業分担のお話、面白いですね。住宅のおへそにあるあの階段、気になってました。スチールと木の組み合わせや、材の寸法など、部材のパッチワーク的なアンバランスさが新鮮でした。そこにはやないさんのほかに、旦那さんのエッセンスが入っていたんですね。

結果、「我が家らしさ」が出たとのこと。

この「〇〇らしさ」、食いついていいですか?

私はオンデザインという設計環境にずっと身を置いていたので、無意識のうちにアウトプットするものに「オンデザインらしさ」とか「私らしさ」が出てしまっているのかも……と自邸を設計しはじめた頃に思ったことがあります。自邸だし、そこから脱したいという気持ちと、やないさんも仰ってたように実験的なことをしたい気持ちもありながら設計を進めていました。

そして、いくつか試してみたうちのひとつが、今までオンデザインを通して繋がりのなかった人たちに協力を得ようということ。

今日はその方々をご紹介できればと思います。

まず、施工については、はじめてのお付き合いとなるウェルカムTODOさん。リノベーション実績が多いという点と、代表の佐藤さんと世代が近いという理由でピンときて依頼しました。

前回のお手紙で触れた通り、ラフで細やかなやり取りがとてもストレスフリーでした。

そして、ずっとお世話になっているものの、私の案件では納入が実現していなかったデュラビットの川原さんに衛生設備機器をお願いしました。やない家にもたくさん入っていましたね! 

今回の条件では浴室は在来工法が適しており、「せっかくならホテルライクの水まわり空間を!」と考え、スタルクのバスタブ、Luvの洗面ボウルなど使うことになりました。とっても楽しみです。

タイル施工中。左がTODOの佐藤さん。とっても腕の良いタイル屋さんで感動する仕上がりに

デュラビットの洗面ボウルと水栓

また、その水まわり空間には、印象的なタイルを使っています。タイルは、平田タイルのフリーペーパー『aiu』の制作をしている、大学時代の友人で元ルームメイトの古川真由子さんに相談に乗ってもらいました。タイルって、ついつい無難なデザインに走りがちなのですが、今回は自邸だし思いっきり使ってやろうという気持ちもあって、浴室には変形六角形、洗面には大理石のマイクロモザイコ、キッチンには色が好みのマスタードを選びました。

キッチンのマスタードタイルと古川さんと写真家の森田さん

素材については、「A面/B面」でメリハリをつけたいと考えていました。A面は、生活空間なので機能や居心地に合わせてしっかりと素材を使い、既存躯体も白で塗りつぶしたリッチな空間に。B面は、ほぼ既存そのままの粗野な空間に。なので、タイルはA面の空間をより引き立てているなと思います。

そして、カーテンはファブリックスケープの山本さんにお願いしました。山本さんの自邸を参考にウールカーペットを取り入れてみたり、今回めちゃくちゃ影響を受けましたね(笑)。

ファブリックスケープの山本さんと現場中にサンプルで確認

最後に製作家具は友人の石川製作所の石川さんにお願いしています。B面にちょっと異様なソファをつくろうという計画があって、暮らしはじめてから具体的に計画を練る予定なのですが、これも本当に楽しみ。

家具の石川さんと現場打合せ。奥の合板の上で息子昼寝中……

長くなりましたが、こんな感じで、私と旦那以外にも多くの方々の知恵に背中を押されてなんとかカタチになったな〜、と思います。

そう言えば、自邸づくりを行なっていて、

「普段の設計と自邸の設計って違いますか?」

と聞かれる機会が何度かありました(やないさんもありませんでしたか??)。

「建築のチカラで“空間”と“生活”をブリッジさせたい」という私自身の考え方は設計するときのクセみたいなもので、いつもと変わらずですが、例えば、ひとりで設計者と施主の二役を担ったり、オンデザインでのパートナー制設計手法を取らないので、他者との対話時間が少なかったり、好き嫌いという個人的な判断基準のみで素材やモノを選定できたり……など、やはり普段とは、設計状況が全く違うと感じています。

と言いながら、聞かれる度に悶々としていたのですが、この手紙のやりとりを通して最近気付いたことがあります。

それは、「これは住宅論なのか? はたまた家族論なのか?」ということ。

個人的な家族の事情と、この時代におけるA面/B面という住宅のカタチが、こんなにもシームレスに語れていることが普段よりも特別なことかもしれません。

さて、お互いいよいよ自邸での生活がスタートですね。

お手紙の交換も、このまま変わらず続けていければ!

 

 次回は、お互いの家を内覧しあう「往復書簡番外編」を予定しています。お楽しみに! 

profile
萬玉直子  naoko mangyoku

1985年大阪府生まれ。2007年武庫川女子大学生活環境学科卒業。2010年神奈川大学大学院修了。2010年〜オンデザイン。2016年〜オンデザインにてチーフ就任。2019年〜個人活動としてB-side studioを共同設立。主な作品は、「大きなすきまのある生活」「隠岐國学習センター」「神奈川大学新国際学生寮」など。共著書に「子育てしながら建築を仕事にする」(学芸出版社)。趣味は朝ドラ。最近はアレクサに話しかけるのが密かな楽しみ。