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往復訪問
#09
北沢のリノベーション、
ご案内します。

photo:akemi kurosaka  text:satoshi miyashita 
 llustration:naoko mangyoku

 

萬玉さんと梁井さんは、同じ設計事務所で働く30代建築家です。同時期に子育てをしながら自邸を設計し(これまでの家づくりの途中経過は『建築家の往復書簡』にて連載中)、このほど無事に完成を迎えました。今回は引っ越し間もない新居を訪ねあう特別編。異なる条件から生まれたそれぞれの居住空間を見て、はたしてお互いどんな感想を抱くのでしょう。まずは梁井さんが、萬玉さんの自邸<北沢のリノベーション>を訪ねます!  

 

@東京・東北沢

 

薄いカーテンの向こうに室内の様子が垣間見える。

まずは、<北沢のリノベーション>の設計者である萬玉さんが自ら描いてくれた平面図から室内の全体像を。

(梁井)
こんにちは、お邪魔しまーす。

(萬玉)
はい! どうぞ、どうぞ。

(梁井)
今日は、朝からありがとう。おーっ、A面とB面だー!

「往復書簡」番外編は、そんな、ふたりの挨拶からスタート。
さっそく、エントラスからリビング空間へ。

(梁井)
このライト、デザインがかっこいい!

(萬玉)
これは〈ニューライトポタリー〉という奈良にあるインテリア照明のお店で購入しました。カーテンをデザイン してくれた大阪の〈ファブリックスケープ〉とも知り合いなんです。

(梁井)
空間の構成は『往復書簡』でのやりとりを通じて知っていたけど、カーテンや家具などが入った実際の空間を見るとやっぱり印象が違いますよね。

(梁井)
カーテン生地の陰影が空間のコントラストをつくっていて印象的。

(萬玉)
このカーテン、使い方次第で遮光の調整もできるし、間仕切りとしても使えたり……、すごく気に入ってます。

(梁井)
絨毯も気持ちいいね。

(萬玉)
基本、空間の色をグレーのトーンで統一しました。設計段階では、A面を塩ビタイル。B面を三和土(たたき)で検討していましたが、A面の居住性を高めたいと思い、A面は絨毯、B面はフレキシブルボードに変更しました。絨毯は、ウール100%なので肌触りが心地いいんですよね。

B面空間は、フレキシブルボードに

 コラム❶  編集部から 梁井さんへ質問 

Q.<北沢のリノベーション>の第一印象を教えてください。

A. 「都会のすまい」というのが第一印象ですね。それと、もともと間取りにあった壁、開口部の存在感を感じさせない工夫が随所に散りばめられていて、リノベということを忘れてしまうような空間でした。

 

プライベートな「A面」から、
ワークスペースの「B面」へ

A面とB面をつなぐ通路

(梁井)
あ、あの絵、懐かしい。

(萬玉)
ヨコハマアパートメントで展覧会をした、アーティストの熊井 正さんの作品ですよ。最近、息子がどうしてもここに眉毛を描きたがっていて……(笑)。

(梁井)
それは巨匠の素質あるかもね(笑)。

(梁井)
B面は完全なワークスペースですね。仕事もしやすそうー!

(萬玉)
今後は、テレワークでの作業も増えてくると思うし、机に資料を広げっぱなしにしていても、ここなら許されそうだし。

(梁井)
家だとどうしてもテーブルで仕事しがちだけど、いちいち片付けたりするのも不便だからね。

A面、B面の両方の壁には友人がつくってくれた棚が設置されている。棚板は18㎜のラワン合板を使用し、真鍮の棒で支えるシンプルな構造

(梁井)
ここの壁面は何か塗っているの?

(萬玉)
いや、壁面は、もともと天井部のような感じでした。とりあえず剥がして研磨したら白壁だったので、そのままでいいかなと。A面の空間はしっかり仕上げて、逆にB面はなるべくそのままの状態にしようと。

(梁井)
もともとの空間にあった動かせない壁なんかもポジティブに捉えているところは、さすがだなあと思う。

(萬玉)
ありがとうございます! 私もいろいろとプランを考えたけど、結果的に空間をふたつに分けたことが良かったなあと思っています。子どもはここで本を読んだり、遊んだりしていますし。

ワークスペースの隣りには、お子さんのプレイスペースも

 コラム❷   編集部から 梁井さんへ質問 

Q. “リノベ”の良さとは、何だと思いますか?

A.単純なことですが、同じ予算なら“リノベ”のほうが、より都心側に住めるというメリットはありますよね。私自身、23区に住むことへの憧れがいまだにあるから、すこぐうらやましい! あと仕上げに予算をかけられるというのもあるかな。今回見ていて、タイル素材や生地など、いろんなデザインが楽しめるのも“リノベ”の魅力だと思いました。

カーテンレールの取り付け方について、ディテールを話し合うふたり。その目はすでに建築家モード……

(萬玉)
ここは築50年の建物だからサッシのサイズが今よりも小さいんですよね。

(梁井)
だから、カーテンレールを天井に付けたんだ。さっき見た時に、いいなあと思ったんだよね!

 
ふたたびA面に戻って、
水回りを拝見

(梁井)
ごはんは、けっこうつくるほう?

(萬玉)
基本、平日は子どもとふたりだからね。つくるにしてもめちゃくちゃ簡単な料理ですね。

あえてシンプルな業務用のキッチンを選んだという

(梁井)
このキッチン、シンプルで素敵。

(萬玉)
今は食器類とかどう収納したらいいかを考えていて……。やっぱり大きなシェルフを買おうかなと。

トイレにはお子さんの遊び道具も⁉︎

(梁井)
お風呂、広いね!

(萬玉)
もともとの空間の形状から、ユニットバスが置けなかったんですよね。

(梁井)
でも、その結果、めちゃくちゃ贅沢な水回りになっていて、うらやましいー。

 コラム❸  編集部から 梁井さんへ質問  

Q .空間の中で「ここは感心した」という場所はありますか?

A. 「取り壊せない壁」という通常ネガティブと捉えてしまう状況をポジティブに変換してデザインするところがまんちゃんらしく、さすがだなと思いました。A面とB面、それぞれが面白いのですが、浴室を拝見して、既存の枠を超えてつくり変える発想には感心しました。排水などは既存のルールは遵守しつつも、新しい挑戦をしているなと。

 

 〈北沢のリノベーション〉 を設計した萬玉さんに聞く
  暮らしはじめて、いろいろ気付いたこと 

我が家は築50年ほどのマンションを購入して、リノベーションしました。
けっこう勢いで購入した側面もあり、電気が単相二線式だったり、設備面の事前調査が甘くて後々気付くことが多かったのは反省点です。
3月末に引越したのですが、新居生活スタートと同時にステイホーム生活も始まりました。図らずもいきなり新居を存分に使えているので、息子含めて新生活に慣れるのは早かったです。お風呂の浴槽が広くて最高で、入浴タイムが以前より長くなったり、掃除をこまめにするようになったり(笑)してます。最近は気候も良くて窓全開で風をたっぷり入れて過ごしてます。
B面は三方向に窓があるので、開け放しにてるとほぼ屋外に近いです。そのせいか、私と夫がオンラインmtgに集中している隙に、息子がB面の床に土や水を撒いて砂場のごとく遊んでいました。まぁ最初に気付いた時は絶叫しましたが、「もういいやー」としばらく放置するくらい寛容な使い方をしてます。暑くなる前にベランダをDIYで居心地アップする計画です。

DATA
竣工:20203
設計:萬玉直子+鎌谷潤/B-side studio

延床面積:78.00㎡(内部)+31.80㎡(外部)
施工:合同会社ウェルカムトゥドゥ
カーテン:fabricscape
家具制作:石川製作所

※本記事の取材は、4月7日の緊急事態宣言発令前に行いました。

好評連載中の『建築家の往復書簡』の記事は、こちらよりご覧いただけます。

owner’s profile
萬玉直子  naoko mangyoku

1985年大阪府生まれ。2007年武庫川女子大学生活環境学科卒業。2010年神奈川大学大学院修了。2010年〜オンデザイン。2016年〜オンデザインにてチーフ就任。2019年〜個人活動としてB-side studioを共同設立。2020年〜明治大学兼任講師。主な作品は、「大きなすきまのある生活」「隠岐國学習センター」「神奈川大学新国際学生寮」など。共著書に「子育てしながら建築を仕事にする」(学芸出版社)。趣味は朝ドラ。最近はアレクサに話しかけるのが密かな楽しみ。

visitor’s profile
梁井理恵 rie yanai

1983年生まれ。神奈川県出身。2002年、恵泉女学園高等学校卒業。2009年、首都大学東京修了。同年、オンデザイン所属。これまで、「FIKA」「軒下と小屋裏の家」などを担当。