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往復書簡
#04
「A面/B面」
という考え方

text & photo:naoko mangyoku

 

家づくりの進捗を振り返りつつアイディアを練る萬玉さん (photo:akemi kurosaka)

子育てと仕事を両立するかたわらで、目下、自邸を建築中の萬玉(まんぎょく)さんと梁井(やない)さん。ふたりは、往復書簡を通して日々の近況を伝えあっています。前回の梁井さんの手紙を受けて、今回は萬玉さんからの返信です。


mangyoku  >>  yanai 📨 

 

やないさんへ

 

こんにちは。

最近ぐっと冷え込んで本格的な寒さがつづいてますね。こんな時期は、たいがい子どもも体調不良になりがちなのですが、我が家もご多分にもれず……、ここ2週間ほど登園NGや発熱、呼び出しなどに追われています。

母親業も3年が経つと振り回され慣れてきたなと思う一方で、やっぱり余裕のない自分が顔を出したり……毎日がジェットコースターのようです。

……おっと、ついついワーママ・トークになりました。

気を取り直して。

お手紙たのしく拝読しました。

無事に上棟を終えたとのこと、おめでとうございます!(我が家は来週から着工なので、ぐんぐん進んでる「やない家」がまぶしい・笑)。

お手紙にも書かれていた「住みながらつくり続ける」という感覚、とても共感します。それはつまり「余地」を残しておくということでもあるのかなと解釈しました。

わたしたちのタイミングでの自邸計画だと、子どもの成長や家族人数の変化、働き方の変化や趣味の発見など、まだまだ家族のライフスタイルが発展途上なので、どうしても不確定な未来と向き合わざるを得ないなと思うのです。そしてその不確定な未来は、子どもが大きくなったり、モノもきっと増えていくだろうし、何者になるのか可能性は無限大という、拡がりある増幅方向であることが予想されるので、その「余地」があってほしいと思うのです。

なので設計時に全部決めきれない。むしろ最低限、何を用意しておけば、私たちの生活はおもしろいか? という作業。最低限でスタートして、住んで3年くらいの状態を竣工と言う、やないさんの名言、とっても賛成です。

 

さて、今日の本題は、その先の設計についてです。

やないさんからの手紙のキーワードは「シンプル」ということでした。

私の場合、キーワードで言うと「B面」ですね(我々世代はギリギリカセットテープを使ったことがあるので、この「A面/B面」が分かると思うのですが、分からない世代も多いかと思うと震えますね。カセットテープを知らないという方はググってくださいませ!)。

とは言え、いきなり「B面」と言われても「ハァッ!?」という感じだと思うので少し経緯をお話しします。

前回お伝えしたように私たちは中古マンションのリノベーションを選択しました。

これは購入したあとに明らかになったのですが、マンション1室を「2:1」に分断するように耐力壁が入っていました。その耐力壁には、幅800mm、高さ2,000mm程度の開口部しか設けられておらず、かなりの存在感を発揮しておりました。耐力壁なので勝手に穴を開けるわけにもいかず、マンション1室を「2:1」の空間に分けざるを得ない与条件があったんですね。

そこからプランを練っていったのですが、この「2:1」に対して、キッチン・ダイニング・リビング・水回り・寝室をどう割り振るかということに非常に頭を悩ませました。私の場合、夫と一緒に設計作業を進めているのですが、ふたりして、ああでもないこうでもないの繰り返し。

そんなとき生活に必要な機能をまんべんなく配置している、いわゆるnLDKでの間取りを思考している自分に気付きました。同時になんて古風な人間なんだと恥ずかしくもなりました……。

検討を進めていくと、「2:1」の2の部分だけでキッチンもダイニングもリビングも水回りも寝室も玄関も、生活インフラが高密度ながらもおさまってしまったんです。

普通に生活するなら問題なく過ごせるレベルが住居の23で満たせてしまった。では、残った1/3はどうしようか、ということになります。この「どうしようか?」は、「住みながら決めていけばいいか!」というくらい大らかに思っています。

いつからか私と夫は、耐力壁を境に、2/3の生活インフラエリアを「A面」、1/3の余地あるエリアを「B面」と呼ぶようになりました。

住居なのでやっぱり生活をメインに据えての「A面/B面」という発想です。

耐力壁の唯一の開口部。A面からB面を見る

A面側。左が耐力壁

この「B面」は、ゆっくりごはんを食べるとき、友人を大勢招くとき、息子の遊び場として、私や夫の書斎のような、植物を育てるための庭のような……など、いま想像できるだけでもたくさんの「〇〇したい」を受け止めてくれそうな予感がしています。

ちなみに余談ですがこの「B面」にはもうひとつの意味がありまして。

私も夫も一応は会社勤めのサラリーマンでもあります(私はオンデザインなので随分と自由度は高いのですが、夫はゼネコン会社の設計部なので、それはもうとっても頑張っていてゴリゴリです)。そんな環境の中で自宅を設計する作業は、本業とは少し違っており、その感覚も「B面」と呼べるなと思ったりもしてます。

着工前にB面の壁仕上がり検討中

さて、やないさんの「シンプル」への探求もお伺いしたいです。

では、今日はこのあたりで。

 

 次回は、2月14日の投函を予定しています。 📪

 

profile
萬玉直子  naoko mangyoku

1985年大阪府生まれ。2007年武庫川女子大学生活環境学科卒業。2010年神奈川大学大学院修了。2010年〜オンデザイン。2016年〜オンデザインにてチーフ就任。2019年〜個人活動としてB-side studioを共同設立。主な作品は、「大きなすきまのある生活」「隠岐國学習センター」「神奈川大学新国際学生寮」など。共著書に「子育てしながら建築を仕事にする」(学芸出版社)。趣味は朝ドラ。最近はアレクサに話しかけるのが密かな楽しみ。


>過去の記事もご覧ください。

往復書簡 #01
往復書簡 #02
往復書簡 #03