往復書簡
#11
庭のある日常
自邸の設計過程を手紙で綴りあってきた、建築家の往復書簡。今回から、いよいよセカンドシーズンに突入します。完成したばかりの新しい家では、どんな日々が待ち受けているのでしょう。建築家という視点だけでなく、子育て中の母としての視点も織り交ぜながら、新たなライフスタイルを報告しあいます。まずは、梁井(やない)さんから、萬玉(まんぎょく)さんへの手紙です!
yanai >> mangyoku 📨
まんちゃんへ
お手紙を書くの、なんだか久しぶりな気がします。
お互いの家を見学してからずいぶん時間が経ちましたね。あれからリモートワークがはじまったり、子ども二人の保育園が休園になったりで、ずっと自宅に引きこもっています。
以前は家族四人では暮らせないくらい狭い家だったので、引っ越してからのタイミングでよかったなと思っています。とは言え、子どもがいるとやはり仕事にならず、大人が交代しながらなんとかやるべき仕事はこなしていました。
今は登園も再開し、担当物件の現場監理で多摩に通いはじめたので、少しずつですが日常を取り戻しつつあります。
まんちゃんも息子さんが休園になったと聞きましたが、どうやって日常を過ごしていましたか??
さて、ちょっと特殊な日常からスタートした我が家での生活だけど、3月に引っ越しをしてから、この家でどんなふうに生活しているかお手紙に書きたいなと思っています。
3月から、ちょうど暖かくなる時期だったので、庭が徐々に変貌を遂げています。もちろん雑草も含めて。。
引っ越してから少しずつ植えたヤマボウシ、ハナミズキがゆっくりのペースで芽吹きはじめ、常緑のソヨゴやハイノキも新しい土に慣れてきてくれたようで新しい葉っぱをつけはじめました。引っ越し後に焦って蒔いたシロツメグサの種も、今では三つ葉となって風に揺れています。
そんなうちの庭。樹木も芝生もたくさん植えたつもりだけど、まだ土が顔を出してる状態……。強風が吹くとご近所に砂嵐が(すみません……)。
庭があることで気持ちいいし、楽しみはあるけれど、(庭があることでの)大変さも同時に実感しています。
庭で早速やってよかったのが、食べられるミニ植物園。庭のはしっこに、パセリ、大葉、バジル、大好きなディルなどを植えています(たまに子どもが踏み荒らしますが……)。
こういうハーブとか香味野菜ってスーパーで買うとすごく大量で、あまり料理をしない私には多すぎるので、「ちょっとほしい!」ってときに便利なんです。
隣りには試しにトマト、ナス、きゅうりを植えています。我が家の野菜は成長スピードは遅いようですが、気長に楽しんでいます。
この状況で、ずーっと家にいる子どもたちにとっても庭は楽しめる場所だったようです。
まだ庭が土のままなので、水を使えば土間付近まで泥だらけにされますが、コンクリート土間に撥水剤とかアクアシール(浸透性表面含浸材)とかをかけておけば、泥汚れが染み付きにくかったかな(無駄な抵抗!?)と、自分のせいにしています(笑)。
我が家はみんな苦手なのですが、鳥や虫などの生き物もたくさん来るので子どもたちは興味津々(でも、触ろうとはしない……)、賑やかな庭ライフです。
(気付いたら建物本体の話をまったくしていませんね!)
でも建物があるおかげで庭の中にもいろいろな場所ができて、長時間いても飽きない、よい居場所になっているのかもしれません。
これから数年で少しずつ整備いきたいなと思っています。しばらくしたら、また見に来てくださいね!
まんちゃんの新居での生活はいかがですか?
書籍もそろっていて作業環境としては、うってつけのB面はこの時期すごく羨ましいです。
将来、何が起きるかわからない日々の中で、フレキシブルな空間が生活空間とは別に存在することが本当に重要なのことだと気づかされました。キッチン、ダイニング、リビング、個室、浴室……、これまで当たり前のように存在していた空間が、これからの家にとって本当に重要なのか? 別の空間がむしろ必要なのでは? とあらためて考えさせられますね。
「そもそも家ってなんの場所だっけ」と不思議な気持ちです。
我が家の庭もそうですが、しっかりと機能をもっている場所よりも定義づけられない場所の方が、先の見えない私たちの生活に寄り添ってくれるのかもしれません。
とはいえ、少しでも早く日常に戻れるといいですね。現実世界で人と会わないのは寂しいものです。
ではではー。
次回は、7月3日の投函予定です。 📪
profile |
梁井理恵 rie yanai1983年生まれ。神奈川県出身。2002年、恵泉女学園高等学校卒業。2009年、首都大学東京修了。同年、オンデザイン所属。これまで、「FIKA」「軒下と小屋裏の家」などを担当。 |
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