Seasons Letter
#32
森の小屋暮らし
(秋編)
築30年の山荘をリノベーションした森の小屋「My Window」から、毎回、四季折々の日常風景をお施主さん自らがレターにしたためた連載シリーズ。今回のテーマは“紅葉と小旅行”です。
@長野・軽井沢

近所を散歩すると黄金色や黄色や真紅の複雑な色彩を楽しむことができる
やはり温暖化のせいでしょうか、軽井沢も例に漏れず、今年も夏が長く秋が短く、あっという間に冬支度になるイメージでした。
紅葉はいつもより少し遅れてはじまり、11月の初旬からほんの少しだけで、中旬まで 続きましたが色彩が美しい時期は短かった気がします。
だからなおのこと紅葉期間は大切に過ごしたいと切に願い、以前よりも目に焼き付けるように過ごしました。
とはいえ、学校があるため東京にいる期間も長く、短い数日間を慈しむように近所を散歩したりしておりました。

西日を受けて母屋がシルエットに。これも好きな景色
秋になるとキノコの時期が訪れます。
去年、稀有な真っ赤な「ベニテングダケ」を見つけた際には感動いたしましたが(笑)、
今年は現れませんでした。

今年も庭にキノコがたくさん生えました。とくに「ハナイグチ」というキノコが
今年はブラウンのナメコを大きくしたようなキノコが庭のそこかしこに登場いたしました。
傘の上部はツヤツヤと輝いており、少し不思議な怖さもあります。
キノコの知識があまりあるわけではないので、どなたかに伺ったところ、
それは「ハナイグチ」という種類だそうで、今年はとても豊作だったのだとか。
裏返して黄色い色味が見分ける基準だそう。

「ハナイグチ」を裏返すと少し黄色く繊維が複雑で美しい
よく見ると細かな繊維が網の目のように構築されており、生命体の美しさを目の当たりにします。
茹でて食べると美味しいと聞きましたが、もし万が一間違えたら……と眺めるだけで終わりました。
facebookでも「コクと旨味がたまらない!」とありましたが、鍋に入れても良さそう?

ひたすら別棟(離れ)のアトリエで制作する日々
あとは、卒業制作に追われがちの日々だったため、
離れのアトリエや庭で作業着を着て制作タイムが多かったです。
秋の入り口に、草津へ温泉ドライブするくらいであまり遠方へは行けなかった印象です。
草津はお蕎麦も美味しいですし、
1時間少しでいけるのでちょうどいい小旅行といった感じです。
いつもながら温泉街を散歩したり、お寺をお参りしたり。
何度も訪れているのに気付いていない場所があるとワクワクしますね。
西の河原公園は文字通り草津温泉の西側に位置し、
昔は「鬼の泉水」と呼ばれ、温泉が吹き出し、湯川の源流に。
泉温度平均49.3度という高さで自然に吹き出したお湯が各所に泉をつくり、
近くにある不動の滝の下には昔、露天風呂があったそう。
どうりで火山列島日本ならではの自然の恵み“温泉”が、
ジャブジャブと吹き出しているわけですね。

足湯を楽しむ人々

遥か昔からここにあるであろう風景

温泉の池の中には深緑色したマリゴケが
この公園には「不動滝」「穴守稲荷神社」「ゆるぎ石」などの名所がありますが、
驚いたのは酸性の温泉の中だけに生息するチャツボミゴケ(通称マリゴケ)と呼ばれる緑色苔植物の美しさでした。

やはり大好きな蕎麦の花。風に揺れてたまらなく可愛らしい
確かに温泉街中央の茶畑が少し緑がかっていたのは、その存在のせいなのかもしれません。
その土地土地が昔から育んできた生態系や、
見たこともない植物に出合うことはかなり刺激を受けますし、造形を考えるヒントになります。

御代田にできたパン屋さんの目の前には巨大なキャベツが並ぶ畑。秋の豊作を知る
ほかの時間といえば制作の合間に近所を散策したり、
軽井沢、小諸、御代田、佐久への買い物途中に出合う蕎麦の花々、キャベツ畑の大きさを感じたり。
家のテラスで今年豊作だった秋刀魚を焼いたり、キノコたっぷりのパスタをつくり、
自作の食器を愛でながら食事をするというここでしかできない貴重な時間を楽しみました。

自作のマグアップを眺めながら

秋のテラスご飯。今年はキノコたっぷりのアサリパスタが美味しかった

大豊作だったという秋刀魚を焼く。勢いのいい炎に気持ちもあがる
晩秋から冬にかけてが個人的には大好きな季節。
母屋をリノベーションして8年近くになりますが、窓を大切に設計していただいたおかげで
この季節だけの黄金色の世界を家の中にいながらにして満喫できました。

リビングからダイニングをのぞむと、窓の外は黄金色
リビングのソファに座ると5面ある窓から一つひとつ異なる景色を時間の経過とともに楽しめます。
またダイニングはガラスに囲まれた、まるで浮いているような特等席。

ガラス面に囲まれたダイニング。まるで外部空間に浮いているよう
キッチンからは家の紅葉を独り占め。
目の前の川面がキラキラと輝き、これから冬に向かって、
そのキラキラの景色を眺める時間も我が家ならではの贅沢三昧です。

キッチンの開口部から見る紅葉
思い切り深呼吸できる生活こそ人間らしい時間と実感しております。
都心には都心の良さがあり、
こちらでは自然の風景や人々の生業に触れたり……、
今秋は2拠点のいいとこ取りを楽しんでおりました。

我が家の庭での夕日。夕日がさして紅葉が黄金いろに
Autumn.2025
過去のレターはこちらから。
森の小屋暮らし #31
森の小屋暮らし #30
森の小屋暮らし #29
森の小屋暮らし #28
森の小屋暮らし #27
森の小屋暮らし #26
森の小屋暮らし #25
森の小屋暮らし #24
森の小屋暮らし #23
森の小屋暮らし #22
森の小屋暮らし #21
森の小屋暮らし #20
森の小屋暮らし #19
森の小屋暮らし #18
森の小屋暮らし #17
森の小屋暮らし #16
森の小屋暮らし #15
森の小屋暮らし #14
森の小屋暮らし #13
森の小屋暮らし #12
森の小屋暮らし #11
森の小屋暮らし #10
森の小屋暮らし #09
森の小屋暮らし #08
森の小屋暮らし #07
森の小屋暮らし #06
森の小屋暮らし #05
森の小屋暮らし #04
森の小屋暮らし #03
森の小屋暮らし #02
森の小屋暮らし #01
竣工時の模様は、こちらよりご覧いただけます。










