Seasons Letter
#30
森の小屋暮らし
(春編)
築30年の山荘をリノベーションした森の小屋「My Window」から、毎回、四季折々の日常風景をお施主さん自らがレターにしたためた連載シリーズ。今回のテーマは“春の食材と建築めぐり”です。
@長野・軽井沢

GWくらいからテラスライフが再開
2025年の春、軽井沢はいつもより桜の開花が早いと思いきや、GWもとても寒く、
6月の半ばまでストーブを焚いていたほどでした。
春から東京での通学もスタートしましたので、軽井沢に滞在のときは
あまり外出もせずにむしろ貴重な家時間を満喫しております。
窓外のブラウン一色の景色が日に日に芽吹いていき、気がつけば緑いっぱいに。
どこを散歩しても新芽と花々が迎えてくれて、「春の生命!」の喜びを
体いっぱいに浴びることになり自分自身も若返る気がいたします。
また、春の花々の色彩は黄色を中心に、濃いピンクやパープルなど
四季の中でも鮮やかで強い色が舞っているような景色がやはり心踊る季節なのです。

雨上がりの苔庭が、緑に輝く
春先といえば食材も豊富。ふきのとうやタラの芽、筍など、
この辺りの人気のスーパーにはいち早く出揃います。
しかも山積みになっていますので
「うわ! 春の山菜がこんなに!!」
「自分で何か作ってみようかしら!」
と強烈にこちらを刺激してくるのは東京と違うところなのかもしれません。
となると、外食もどんどん減って、ほとんど自炊に。
(その代わり東京ライフでは外食ばかり)
何と言っても、ツルヤ(地元にあるスーパーマーケット)や産直などでゲットできる
野菜やフルーツは東京の半額くらいの感覚。
新鮮ですので料理が楽しくなります。

ツルヤで購入した南紅梅。なんて美しいのでしょう!
料理への苦手意識が高かった私も、この3年でレパートリーが増え続け、
自慢は塩の加減が一発で決まるようになったこと。
とはいえ、まだまだ東京育ちで料理嫌いだった経験値の低い私には
トライしたことのない季節ごとの料理がたくさんありますので、
毎年少しずつ時間をかけて楽しんで参りたいと思っております。
私にとって今年は初トライがブームで、その第一歩がケーキでした。
辛党の私は、これまでの人生で一度も作ったことのない甘いもの!

この春は生まれて初めてケーキ作りにハマる。キャロットケーキも大成功!

そして、ヨーグルトマフィンにも挑戦

ケーキは自宅で作ると甘さ控えめにできるのが美味

こちらは手作りのブルーベリージャムを入れたクリームチーズケーキ
キャロットケーキ、マフィン、ブルーベリークリームチーズケーキ……etc.
甘いもの好きの主人も喜んでくれて、自作の器に盛り付けて楽しんでいます。
それもこれも時間に余裕がないとできないことですので、私にとっては最高の贅沢なのです。
そして、夏前にスーパーに山積みされる、
梅、新生姜、らっきょう、この3種の神器とも言える仕込みも、もちろん生まれて初めて!
新生姜は毎年ピクルスにしておりましたが、
これまでは山積みの梅を見ただけで何をしたらよいかわからず、
体が固まってしまったというのが正直な気持ちでした。
しかしネットで検索してみますと、わりと簡単にできるといった内容の記事が
記載されているではありませんか!
「よし! やってみるか!」と思い腰をあげて、いきなり3キロほど購入し頑張りました。
青梅を手に入れ、紙袋に数日入れておいたら
黄色に変わってきまして、ほんのり良い香りがいたします。

夏前の梅仕事、らっきょう仕事に初めて挑戦
カゴにのせてみますと、なんとも美しい宝石のような愛おしさ。
梅の香りを初めて堪能いたしました。これは毎年ハマりそうです。
酒好きの私にとって、梅酒は女子供が飲むのもだと思っておりましたので欲張らずに
今年は梅干し一本に専念してみようと思います。
重石を乗せて2日くらいで梅酢が上がって参りました。
現在でも冷蔵庫の上段に寝かせて、毎日様子を見ております。
4週間寝かせてから土用の丑のあたり(7月下旬)に天日干しをするということ。
手間暇かけて作り上げた梅干しは、きっとどんな高級割烹で出てくるものより美味しいに違いありません。
我が子のように育てたいと、今からワクワクしております。
らっきょうは甘酢漬けにしました。
皮をむくのが結構大変でしたが、こちらも調べますと血液をサラサラにするなど
健康への効果が大きいようですので、お酒のおつまみにいけそうです。
そして、大好物の山椒!
「今年は寒いからまだ先かしら……」と思っておりましたところ、
隣家のマダムから「今年の山椒の実はもう大丈夫そうよ」と声をかけていただき
はさみ持参でたくさん収穫させていただきました。

隣家の大きな山椒の木には、今年もたくさんの実がなりお裾分けいただいた
小ぶりながらほぼ自宅の庭で収穫したような感覚の山椒ですので格別な思い入れがあります。
2分間だけ茹でて即醤油漬けの瓶へ! そして冷凍庫へ!
1年かけていろいろな食材に使用します。
実の部分だけを外す作業で3時間もかかってしまい、毎年ながら肩がパンパンです。
東京のスーパーだったらこんなににも季節の野菜や果物が私に訴えかけてくることもないでしょうから、
やはり地方(軽井沢)の旬の食材のエネルギーを感じざるを得ません。
これも2拠点暮らしの醍醐味と言えます。
さて、私たち夫婦は毎年「DISCOVERY NAGANO」というキーワードで
広い長野県をドライブすることを楽しんでおります。
今年は2年前に購入したロードスターの3速のギアの調子が悪く、
ロングドライブを控えておりましたがギアボックスごと交換してもらって
やっと元気に走れるようになりましたので、茅野と諏訪湖周辺に出向きました。
じつは諏訪湖に参りますのも生まれて初めて。
結構大きな湖で「諏訪信仰」と言われるほど、
はるか昔から独特の文化が築かれていた場所だということを最近知りました。
『諏訪学』(山本ひろ子著/国書刊行会)という本もオススメなので、
ぜひご興味のある方は読んでみてください。
諏訪だけでなく日本の歴史や長野(信濃)の立ち位置などが見えてきます。
同じ諏訪文化でも南と北では異なること、そこを守る諏訪大社の壮大な歴史……。
そして、建築めぐりも好きな私は、建築家で建築史家の藤森照信さんのご実家がある南の茅野エリアへ。
以前、何度か藤森建築の取材に行ったことがあり懐かしくなり再訪しました。
藤森さんの(確か45歳の頃の)処女作〈神長官守矢史料館〉は、すでに35年以上もの月日が流れており、
竣工当時から「新しいのにどこか懐かしい」と、とある有名建築家が発したように、
完成当時から古びた、また古びることをよしとした設計でした。
いまでは、良い感じに風化し、隣に鎮座する守矢家の邸宅と、その背後にある祠(ほこら)とともに
ずっとそこにあったような素晴らしい風景を作り上げておりました。
縄文文化が色濃く残るこの地独特の狩猟民族の証がこの史料館にはあります。

藤森照信氏の処女作である神長館守矢史料館の外観

史料館では、諏訪信仰について垣間見ることができる
少し離れたところにある高さ約10mの茶室〈高過庵〉は、
いろいろな雑誌の表紙を飾ったことのあるアイコニックな外観。
2本足の土台はじつは栗の木の中にコンクリートを詰めて強度を出しています。
この茶室に入り窓を開けると諏訪地方ののどかで伸びやかな土地が
視界に飛び込んできたことを覚えています(10年ほど前に入ったことがあります)。

藤森建築の代表作とも言える高過庵。2本足で支える高さ約10mの茶室
そのすぐ隣にはなんと屋根が開閉する〈低過庵〉、
数百メートル近くにも茶室〈空飛ぶ泥舟〉が宙を飛んでおり、
藤森建築が一堂に会しているレアなスポットともいえます。

空飛ぶ泥舟の外観
ということで食材と長野の局所スポットへのワープで、
長野でしか味わえない土地のエネルギーを色濃く感じる春のダイアリーでした。
梅雨明け前で軽井沢は連日夕方の雷と豪雨、そして突然の晴れ間という、
くるくる変わる今だけの景色と気候を楽しんでおります。
今年の夏は少し涼しいと良いのですが……。

毎日散歩する御影用水はときに鏡が空を大きく移し、絵葉書きのよう

御影新田一面が春は田植えの景色でこの1ヶ月だけの水が滴る風景
Spring.2025
過去のレターはこちらから。
森の小屋暮らし #29
森の小屋暮らし #28
森の小屋暮らし #27
森の小屋暮らし #26
森の小屋暮らし #25
森の小屋暮らし #24
森の小屋暮らし #23
森の小屋暮らし #22
森の小屋暮らし #21
森の小屋暮らし #20
森の小屋暮らし #19
森の小屋暮らし #18
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森の小屋暮らし #06
森の小屋暮らし #05
森の小屋暮らし #04
森の小屋暮らし #03
森の小屋暮らし #02
森の小屋暮らし #01
竣工時の模様は、こちらよりご覧いただけます。