オンデザイン論
#03オノマトペから考える。
竣工写真ってどうあるべき?
髙橋 私の初めての仕事でもあるので自分らしいものが良いな、と思い「オノマトペ」を選びました。道の曲がり角も、空気も、建築も、無意識に音で覚えているので、伝える時もオノマトペを使うところがあって。建築を具体性のないオノマトペで表現したらどうなるんだろうという興味が漠然と浮かびました。
あと、同じオノマトペを聞いた時に、人によって思い浮かべるものが違うところも面白い言葉だなと感じていました。
「オノマトペを用いたオンデザイン建築の再解釈とその表現-6つの建築をめぐる物語集-」より抜粋
髙橋 興味から始めた研究だったので、終着点は自分でも見えていなかったのですが、結果的にはオノマトペはオンデザインらしい表現方法なのかな、と思います。
梁井 オンデザインの建築って人ありきじゃないですか。物体としての建築の状態に限らず使えるところがオノマトペのよいところで、うまくはまったのかも。
髙橋 オンデザインの建築って、どちらかというと行動を作っている感じですもんね。
松井 オノマトペ表現も写真で切り取られた建築に感情を足す手法ですよね。例えば、料理の写真を見て「楽しむ」ってよりは、料理を見て「美味しそう」となる感覚に似ていて、感情や情景が湧き上がってくるのがオンデザイン建築らしさなのかなと思います。
「オノマトペを用いたオンデザイン建築の再解釈とその表現-6つの建築をめぐる物語集-」よりバオバブ保育園の表現
梁井 オノマトペが建築を表現しているというより、状況や風景を表現しているというほうが近いのかな。建築写真家に撮ってもらった写真、ふだん人物や風景などを撮っているフォトグラファーの写真、自分たちで撮った写真とで全然見え方が違っていて。建築写真家に撮ってもらった竣工写真は、可能な限りシーンを作り込んで撮るので、カチッとしているんですよね。両者の写真を見て想像されるオノマトペって全然違うのではないかな。
宮下 梁井さんが『beyondarchitecture』で連載しているバオバブ保育園の写真を見たときにすごい感動していたのを思い出しました。これ見てたら小田和正の曲流れてくるよねって。(笑)
それを聞いて思ったのはオノマトペって音じゃないですか、だから音感が感じられたり、空気感が感じられるような写真なんだろうな。建築写真は、どちらかというと水平垂直にこだわってピシッとしていて解説的ですよね。
「バオバブ日和」#01 使い継がれる園舎の空間性/BEYOND ARCHITECTURE photo:akemi kurosaka
松井 オノマトペという表現は、写真で切り取られた建築に感情を足す手法なのかもしれないですね。例えば、料理の写真を見て「楽しむ」というよりは、料理を見て「美味しそう」となる感覚に似ています。バオバブ保育園の話を聞いていると、感情や情景が湧き上がってくるような空間は、オンデザイン“らしい”建築と言えるようにも感じますね。
梁井 写真で見た時と現場でリアルに見た時のオノマトペとでは、きっと違う結果が出たと思うんですよね。髙橋さんの中でそこはどういう風に考えていたのですか?
髙橋 初めは建築をやっている人たちの建築の解釈と、私たちが提案する相手(一般の方)の解釈とでは違うのでは? という疑問からきていたので、竣工写真をみた時のオノマトペを共通言語として収集することにしました。結果的には、竣工写真に情景を足す手法として提案したのですが、竣工写真自体が変わっていく方法もありますね。
松井 そういえば、以前に萬玉さん(オンデザイン代表建築家)が自邸の様子をオノマトペを使ってSNSに投稿していたんですが、思わず反応しちゃいました(笑)
オノマトペが加わった短い文章と写真の切り替えが、情景をよりイメージさせてくれて想像が膨らむ感じが新鮮でいいなと。
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萬玉さんのインスタグラム投稿より
髙橋 たしかに、不特定多数の人が見るSNSも想像力の膨らむオノマトペと相性良いかもです!