update

往復書簡
#06
仕上げるために
解体する

 

オンデザインの建築家ふたりによる、家づくりの往復書簡。前回の梁井(やない)さんの手紙を受けて、今回は萬玉(まんぎょく)さんからの返信です。

photo: Akemi Kurosaka


mangyoku  >>  yanai 📨 

 

やないさんへ

 

こんにちは。

お手紙ありがとうございます。

公園のような家」とてもワクワクする響きですね。

そういえば、やないさんのお家が上棟した頃に一度現場を案内してもらいましたよね。

とっても晴れた日でまさに秋晴れ! という気持ちのいい朝でした。最寄駅からゆるい坂道をぐんぐん登って、住宅街のあいだを縫っていくと、あっけらかんとした建ち方の現場にたどり着き、そこがやないさんのお家でした。

周辺の住宅街は、広めの敷地に、おそらく低く設定されているであろう建ぺい率いっぱいに建てた2階建ての住宅がとてもきれいに並んでいる、というのがわたしの第一印象でした。まさにクラシカルでリッチな住宅地。そんな中、周辺の住宅にもわりと広めの庭があるけれど、やないさんのお家は、もっと広い庭(というか余白?)を残して建っていたので、拍子抜けしてしまった記憶があります。

その建ち方のキーワードという「公園」は、娘さんから生まれていたんですね。

工事中ということもあると思いますが、敷地と道路の境界にも閉鎖感を感じなかったので、そこにも公園らしいおおらかさを感じました。あと、周辺がわりと妻入りなのに対して、平入りのボリューム配置をとっていることも、よい意味で違和感がありました。正面に家型がみえてこないので、家なんだけと少し抽象度があるような……家らしい構えを弱めることは敷地の公園感にはよい効果を与えているように感じました。

庭を感じれるように平面形状を薄くしたとのことですが、内部に入ってみると、なるほど確かに外が近い、という印象。風や光が気持ちよく回りそうだな、と思いました。

平面や断面計画は確かにとてもシンプルなのですが、それゆえに外部との関係性に敏感になるということも私としては発見でしたね。

竣工が楽しみです!(←もちろんおじゃまさせてもらう気まんまん)

さてさて、私のほうの話ですが……

設計中の家族との対話についてでしたね。

やないさんは「施主である旦那さんや娘さん」という言い方をされているのに対し、我が家は「施主であり設計者である、私と旦那さん」というのがしっくりきます。

役割分担がされていないので、これがまた厄介なんです。

例えば、家でテレビ見ている最中に「やっぱりここの素材は……」とか「あれ、キッチンの図面のチェックバックしたっけ?」など、片方が家づくりモードに入ると、もう片方がテレビ見ていてオフだけど家づくりモードに巻き込まれる……ということが起こります。また、個人の中でも「本当はこれ掃除しづらそうだけど(施主的目線)」「こういうデザインがいいな(設計者目線)」「うーん……」というような天使と悪魔のささやき状態に陥って図面の進みが遅い、なんてこともしばしば。

最初の頃は、会話ベースでの設計対話を重ねていましたが、「A/B面」というコンセプトがふたりの間で腑に落ちたあたりから、プランや仕上げやそこでの生活像までがグッと解像度が上がり、設計が進むにつれて図面や実際のモノをベースとした対話のほうへとシフトチェンジしました。そのほうが、客観的な判断もできるし、具体的だから次のアイデアにもつながりやすい。なので、わりと設計初期の頃からマテリアル探しや器具選びに旦那さんと通っていました。そこで二人が「いいね」をつけたものが採用されていくような感じです。

この対話は現場に入った今も、施工のウェルカムTODOの佐藤さんも交えて続いております。我が家はフルリノベーションの改修工事なのですが、新築とは違って、本当に設計図があてにならない場面が多い。スケルトン躯体の築年数が50年近く経っているので尚更なのでしょうが……。なので毎日「ここどうしようか?」の連続です。

ただ、それが面白いというか、リノベの醍醐味だなとも感じております。

とくにB面側の仕上がりについては、とにかくラフに仕上げたいという思いがありました。できればスケルトン状態でもよいくらい。しかし、下階への遮音等級が管理規則で決まっているし、我が家の息子の自由を制限するのも嫌なので、二重床の上に仕上げをしておいたほうが安心だな、とか。壁は躯体の上にプラスター塗りされていて壊せないし、天井にはクロスの糊跡が……、いわゆるRCのかっこいいきれいな壁面ではないのです。こういう時、仕上げて綺麗にしてしまってもいいのですが、B面の余白やラフを目指したいときにどうしても違和感がありました。

そうした時、むしろ「仕上げるために解体する」という選択もあるのでは? と思い、仕上げとしてちょうどよい加減に既存の仕上げを削ることにたどり着きました。足し算も引き算も選択できるというのは改修案件の魅力です。

今日は少しマニアックな話になりました。

やない家はいよいよ完成間近ですね!

ではまた!

 

次回は、3月13日の投函を予定しています。 📪

 

profile
萬玉直子  naoko mangyoku

1985年大阪府生まれ。2007年武庫川女子大学生活環境学科卒業。2010年神奈川大学大学院修了。2010年〜オンデザイン。2016年〜オンデザインにてチーフ就任。2019年〜個人活動としてB-side studioを共同設立。主な作品は、「大きなすきまのある生活」「隠岐國学習センター」「神奈川大学新国際学生寮」など。共著書に「子育てしながら建築を仕事にする」(学芸出版社)。趣味は朝ドラ。最近はアレクサに話しかけるのが密かな楽しみ。