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自分ごと化のススメ
#06
夢はヴェネツィア・
ビエンナーレ!

text:satoshi miyashita photo:akemi kurosaka

スマイルズ代表・遠山さんとオンデザイン代表・西田さんとの対談もついに最終回。遠山さんのひらめきから話はいよいよ具体的になっていき……⁉︎ はたして、どんな結論になるのでしょうか。

 

これまでのラインナップ
第1回 はじまりは世の中への疑問や苛立ち(07.23)
第2回 コミュニケーションと教育の交差(07.29)
第3回 発意のバトン、どう届けるか?(08.02)
第4回 心の中にエンジン、ありますか?(08.06)
第5回 プロジェクトを仕掛ける側になれ(08.10)
第6回 夢はヴェネツィア・ビエンナーレ!(08.15)
 

 

@smiles(東京・中目黒)

 

 
 すべてはサイコロからはじまった!?  

 

遠山 仕事のことを考えていくと、

たとえば、お互いの立場自体を

交換してみるというのも、

ちょっと「ゲーミフィケーション」のようで、

試し方としてはなかなかいいかもしれないですね。

西田さんがクライアントになってみるとか。

 

西田 遠山さんが設計者になる、みたいな。

 

遠山 斬新です(笑)。

たとえば、クライアント、設計士、施工、オペレーターの4人、

シャッフルして、担当をサイコロで決めるとか……?

 

西田 今回は、ちょっと施工者にまわります、みたいに(笑)。

 

遠山 施工者っていっても、

当然、大工さんと組むと思うんですが、

「大体どのくらいでいつくれる?」からはじまり、

いや「何も分からんけど…」って(笑)。

 

西田 (笑)。

 

遠山 でも、チームの代表になったときの、

大工さんへの頼み方は、

普通の施工屋さんとは違う気がします。

「えっ、こうやるの?」みたいな。

映画とかも時系列で撮るんじゃなくて

途中から撮ったりしますよね? 

ああいう専門職ならではの意外な発見があったり。

 

西田 面白そう!

ぜひ遠山さんに設計者になっていただいて。

 

遠山 それなら、やりたいな(笑)。

 

西田 図面かけるスタッフは

用意しておくんで。

 

遠山 ありがとうございます(笑)。

 

西田 僕はクライアント側の役も、

ちょっとやってみたいですけどね。

無理難題しか言わないみたいな(笑)。

 

遠山 これ、クライアント、建築家、施工、オペレーターの

4者いればできるんですかね。

4者だったら、

たとえば、ひとり500万で、

資本金が2000万のひとつ完結した事業体として、

そこからいろいろ資金調達して。

べつに一戸建てじゃなくても、

古いビルをリノベしてもいいなあ。

 

西田 屋上だけ使うとかでも。

 

遠山 そうやって、なんとか3年はやろうと。

 

西田 2号店もまた、

サイコロで決めるみたいな。

 

遠山 「建築が、サイコロからはじまる日」(笑)。

 

西田 いやー、面白い。

 

遠山 なんか、ちょっと応援してくれる人が

いてもいいかもしれないなぁ。

普通の建築の仕事には入ってこないような。

 

西田 野球部のマネージャー的な?

 

遠山 そうそう、マネージャー。

「頑張れ〜」みたいな(笑)。

たまに、みんな集めて

焼き肉ごちそうしてくれるとか……(笑)。

マネージャー以外に、

アーティストもいれて、その計6者で、

2年後、ヴェネツィア狙うみたいな。

 

西田 いいじゃないですか! 

 

遠山 夢があります。

 

西田 遠山さんと話していると、

ものごとが動いていく醍醐味が、

リアルに実感できるからすごい。

 

遠山 ヴェネツィア・ビエンナーレとかで、

それ実現したい…(笑)。

あれは、どのくらい期間あるんですか?

 

西田 5月から11月です。

 

遠山 たとえば、その6カ月間、

団子屋かなんかの事業体を運営していて。

それがひとつのプログラムというか、

クリエーションになっていて。

アーティストも「施工がこれなら、なんとかなる」

とか言って(笑)。

 

西田 そのときアーティスト枠が、

いきなり施工者とかに、

なることもありですか?

 

遠山 はい。もし施工者がアーティスト枠になっちゃったら、

もう、なんとかして考えるしかない。

 

西田 「もう仕方ないから

アーティストになる!」みたいな。

 

遠山 でも、アーティストが施工者になるのは、

すごくいい機会だなと思いますね。

いまやアートがどんどんインスタレーション化しているから、

自分でトンカチを持つわけじゃなくて、

依頼して施工者に再現してもらうみたいな時代。

きっとお互いにいい経験にもなるだろうし。

 

西田 アーティストが現場監督になりますからね。

 

遠山 そう、しかも、アーティストが

設計者の作品をつくらなきゃいけないっていう。

「ええ、嫌いだな、この円い窓……」とか(笑)。

自分のクリエーションを設計者にばれないように

忍び込ませたりしてね(笑)。

 

西田 そういう葛藤もありながら。

 

遠山 その6者の視点みたいなのが、

交差していって観賞する人も、

その6者による「6つの窓」みたいなことで考えますよね。

 

西田 いやあ、その話はのれます。

 

遠山 どの窓が一番面白いか、

みたいな議論があったりして。

 

西田 なんか構築している

はずなのに分解しているような。

いろんなことを考える機会にもなりそう。

 

遠山 どの領域でも批評、論評しがいがある。

まず6人いたら、6つの業界から、

それぞれ言ってくれるだろうし。

でも、「いやぁ、ソフトクリーム、

きれいに巻けるようになりました。

これ結構、難しいんだよ」って話をしながらね(笑)。

 

西田 サイコロで

オペレーターになったら、

否が応でもそうなりますからね。

 

遠山 サイコロで決めるときの

映像もSNSで流して。

 

西田 それいいですね。

YouTubeに流した瞬間に

もう暗黒の未来が見えてきたみたいな。

いや、最高です。

 

遠山 最高です(笑)。

 

西田 ちょっと企画して、

今度、持ち込みます!  - 了 –

(  あ り が と う ご ざ い ま し た )

 

profile
遠山正道 masamichi toyama

株式会社スマイルズ 代表取締役社長。1962年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、85年三菱商事株式会社入社。2000年株式会社スマイルズを設立、代表取締役社長に就任。現在、「Soup Stock Tokyo」のほか、ネクタイ専門店「giraffe」、セレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」、ファミリーレストラン「100本のスプーン」、コンテンポラリーフード&リカー「PAVILION」、海苔弁専門店「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」を展開。「生活価値の拡充」を企業理念に掲げ、既成概念や業界の枠にとらわれず、現代の新しい生活の在り方を提案している。近著に『成功することを決めた』(新潮文庫)、『やりたいことをやるというビジネスモデル-PASS THE BATONの軌跡』(弘文堂)がある。

profile
西田 司 osamu nishida

オンデザインパートナーズ代表。1976年、神奈川県生まれ。横浜国立大学卒後、スピードスタジオ設立。2002年東京都立大大学院助手(-07年)。2004年オンデザインパートナーズ設立。2006年横浜国立大学大学院(Y-GSA)助手(-09年)。現在、東京理科大学准教授、明治大学特別招聘教授、大阪工業大学客員教授。近著に『オンデザインの実験 -人が集まる場の観察を続けて-』(TOTO出版)がある。