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自分ごと化のススメ
#04
心の中にエンジン、
ありますか?

ヒットコンテツを次々と生み出し、次世代のアントレプレナーやクリエイターからも注目を集めるスマイルズ。いま会社として、どんな人材を求めているのでしょうか。対談場所のスマイルズ本社でオンデザインの西田さんが深掘りします。

 

これまでのラインナップ
第1回 はじまりは世の中への疑問や苛立ち(07.23)
第2回 コミュニケーションと教育の交差(07.29)
第3回 発意のバトン、どう届けるか?(08.02)
第4 心の中にエンジン、ありますか?(08.06)
第5回 プロジェクトを仕掛ける側になれ(08.10)
第6回 夢はヴェネツィア・ビエンナーレ!(08.15)
 

 

@smiles(東京・中目黒)

 

 

 
 事件は現場で起きているんです  

 

遠山 (これまで話してきて)結局は

クライアントも、住み手も、


どれだけ「自分ごと」にできるか

ってことじゃないかな? と思ったりします。

そう考えると届ける側も余白を残すということ、

やり過ぎないことっていうのも、

ひとつの手法なのかもしれないね。

 

西田 確かにあらかじめ

用意されている感じを嫌う人って、

結構いますからね。

どっちかっていうと、

檸檬ホテル」みたいに、

その人が楽しんでいるのを見て、

自分も楽しめるみたいなほうがいいのかも。

 

遠山 檸檬ホテルは、

元スマイルズの酒井啓介くんが

支配人をしているんですが

物件探しから一緒にやって、

最初、香川県の豊島で物件を探している頃、

まだ決めていないのに、

酒井くんが「東京の家が売れました」って

言うから、「ほんとに?」って。

「奥さんは何て言ってた?」と聞いたら、

「いや、まだ言ってません」って(笑)。

 

西田 え、物件がまだ決まってないのに

自宅を売ってしまったんですか?

 

遠山 そうなんです。

でも、そもそも豊島には

賃貸物件なんてないんですよね。

大家さんとの賃貸借なんていう

行為自体がないような島だから。


どうなるかも、全然分かんない状態だったけど、

彼のその行動力で、

私たちもプロジェクトの本気度が

一気にマキシマムになって……。

 

西田 このままだと酒井家が

路頭に迷ってしまうと……。

 

遠山 もう酒井家は

バトンを持って走りだしちゃったみたいな。

これはちゃんと事業として

整えていかなきゃってなって。

だから彼は完全に自分ごと化していたよね(笑)。

 

西田 そうですね(笑)。

 

遠山 「事件は現場で起きているんです」

じゃないけど、会社も「現場」っていう言葉に

すごく弱いと思う。

「現場がこう思っているんだ」っていうと、

「だよね」ってなりませんか?

 

西田 「弱い」っていうのは、

そこに「引っ張られる」という意味で?

 

遠山 そうです。不満があったら、

どう解決したらいいかっていうことまで考えて、

(上に)伝えてくれれば、

こちらも「だよね」ってなるというか。

 

西田 確かに「どう思います?」って

中途半端に聞かれるより、

「今、現場はこうなっているんですよ、

これでいいですか」って言われたほうが、

こちらも、それなら、

「こういう選択肢も教えとくよ」となりますね。

 

遠山 やっぱり「こいつはしっかりやるだろう」

っていうのは見ていてわかります。

だから、自己責任感をもって、

これで、しくじったら会社にも迷惑かけるなって、

お互いに共有した上で、

あとは、もうやりきるだけみたいな。

西田 そういう社員の育成や醸成って

ふだんから意識的にやられていますか。

 

遠山 よく私が「自分ごと」って言うのも、

それを意識させるためだから。

 

西田 ああ、なるほど。

 

遠山 採用に関しても

自分自身の中にエンジンを

持っている人を優先するようにしています。

 

西田 エンジンですか?

 

遠山 列車って、

後列の貨車だけでは動かないでしょ? 

先頭に石炭と動力があって動き出すもの。

だから一人ひとりが自分に動力源があって、

ハンドルとかアクセルを操作できて、

かつ行きたい場所に行ける人がいい。

 

西田 でもそれを見分けるのって

なかなか難しくないですか?

 

遠山 私の会社だと「10年前はどうだった?」

「10年後どうなっていたい?」

みたいな質問を面接時にすることがあります。

 

西田 それは10年前と今を見つめれば、

自分の足で歩いてきたか、

どうか分かるから?

 

遠山 うん。でも、それを聞くと、

たまに泣きだす人すらいらっしゃいます。

「なんの進歩もなかったことに

気付かされた」って言って。

 

西田 あまり考えずにレールに

乗ってきた自分に気付いたんですね。

 

遠山 もちろんスマイルズという会社に

(入社希望者が)共感してくれるのはありがたいけど、


それは共通概念みたいなもの。

それよりも、ファンを超えていて、

「自分だったらスマイルズをこういうふうにしたい」とか、

「私はこう思う」とか、

「もっとこうすべきだ」とか。

あと、「こういうことをやりたいんで、スマイルズで経験を積み、

なんなら、一緒にそれを将来やりたい」とか、

そういうこと言われると、「もう、あとはやって」と!

 

西田 ああ、それはそうですね。

 

遠山 つまり人任せにしない人が、

スマイルズには向いているんだと思うんです。

「この上司の下でやっていけません」

と言って辞めるような、

他者に理由を求める人は、

次の会社に行ってもきっと同じだと思っていて。

世の中、うまくいかない話はいくらでもあるわけだから、

じゃあ自分だったらそれをどう解決するのか、

を考えればいいんであって。

 

西田 まさに自分ごとですね。 -つづく-

(  は な し は い よ い よ 佳 境 で す  )

 

profile
遠山正道 masamichi toyama

株式会社スマイルズ 代表取締役社長。1962年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、85年三菱商事株式会社入社。2000年株式会社スマイルズを設立、代表取締役社長に就任。現在、「Soup Stock Tokyo」のほか、ネクタイ専門店「giraffe」、セレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」、ファミリーレストラン「100本のスプーン」、コンテンポラリーフード&リカー「PAVILION」、海苔弁専門店「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」を展開。「生活価値の拡充」を企業理念に掲げ、既成概念や業界の枠にとらわれず、現代の新しい生活の在り方を提案している。近著に『成功することを決めた』(新潮文庫)、『やりたいことをやるというビジネスモデル-PASS THE BATONの軌跡』(弘文堂)がある。

profile
西田 司 osamu nishida

オンデザインパートナーズ代表。1976年、神奈川県生まれ。横浜国立大学卒後、スピードスタジオ設立。2002年東京都立大大学院助手(-07年)。2004年オンデザインパートナーズ設立。2006年横浜国立大学大学院(Y-GSA)助手(-09年)。現在、東京理科大学准教授、明治大学特別招聘教授、大阪工業大学客員教授。近著に『オンデザインの実験 -人が集まる場の観察を続けて-』(TOTO出版)がある。