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オンデザイン考察
#03
組織の現在地とこれから

photo:ryusuke ono text:satoshi miyashita


オンデザインの組織論や働き方について語り合うスタッフミーティング。組織としてプロジェクトに、どう向き合うべきかを考察した前回につづき、最後となる今回は、これからのオンデザインについて議論します!

>>前回の記事はこちらより。

THE BAYS(神奈川・関内)

(右から)櫻井彩(チーフ)、西田司(代表取締役)、鶴田爽(チーフ)、西田幸平(チーフ)、萬玉直子(代表建築家)

 

個人とオンデザインとの重なり

西田 ここでちょっと話題を仕切り直すと、後半のテーマでもある萬玉さんの「代表建築家」就任についてなんだけど、ここにいる西田Kくん、櫻井さん、鶴田さんも新たにチーフになったわけで、新体制になったオンデザインの集合知というか組織力みたいなものを今後どうやったら実装できるのか? その辺について、みんなに聞きたくて……。

萬玉 どうですか?

西田K えっ、僕、ですか(笑)!?

西田 結局、「オンデザインらしさ」みたいなものがあるのは組織としてよくないんじゃないかと思っていて、さっき(前回)、西田Kくんも言っていたけど、自分の知っている知識を相手に伝えることが「らしさ」になるのって、ただの管理社会と同じだなって思うんだよね。

西田K そうですね。

新チーフの西田幸平さん

西田 もちろん仕事だから、「水漏れをさせない」とか「資料をちゃんとつくる」とか、社会的役割は設計事務所としてあるとしても、そういうことが組織の本質的な価値ではなくて、大事なのはやっぱりクリエーションなんだと思う。
 萬玉さんには、「『代表建築家』になってほしい」とお願いしたときに言ったと思うけど、もう僕はどこまでいっても、二項対立の図式で物事を見ちゃう。「プライベートとパブリック」「都市と生活」「建築とまちづくり」みたいに……それをどうやってつなぐのかっていう視点を無意識にやっちゃう。でもこれって、そう発言している時点で、僕の中にふたつの間に境界線があるっていうことだから。そもそもプライベートもパブリックも混ざってていいじゃん(笑)
 例えば、神奈川大学国際寮(以下、神大)のポット※1は、プライベートなことをやっているのに何となく隣人の気配を感じるから、「空間としてはパブリックだ」みたいになっている。この視点って意識構造が違うからできるんだと思うんだよね。そういうことをオンデザインで萬玉さんひとりだけができていても困るわけで、もっと増やしたいんだけど、どうしたらいいと思う?

西田K どうしたら……。

(※1)ポットについての詳細記事はこちら

吹き抜け部分に点在するポット 〜『神奈川大学国際寮(まちのような国際学生寮)』(2019) photo : kouichi torimura

西田 いや、すでに増えている気もするんだけど……。

西田K 僕もそう思います。

西田 これってたぶん意識化するかどうかの問題だからね。そう考えると例えば、鶴田さんが担当した「バオバブ保育園」と「MINOYA」って同じ軸ではまだ語られてない気もして……。

『バオバブ保育園』(2022) photo : kouichi torimura

『MINOYA』(2021) photo:tsubasa kuroiwa

西田K でもそれって、そういう機会があればやれると思うんですよね。

西田 あぁ、確かに。

西田K そういう場というか機会があるから考えつくようなこともあると思うし。まぁ、ふだんから考えろよって話なんですけど(苦笑)

西田 いやいや(笑)

西田K 僕は神大からはじまって、今回「ホンゴウハイツ」という集合住宅を担当して、やっぱり「自分の設計ってどうなのか」「こういうのが自分の癖なのか」……、いろいろと見えてきたけれど、それをきちんと言語化するところにはまだ至ってないです。でもだからといって、自分がやってきたこと、考えてきたことを話せないわけがないと思うんです。

『ホンゴウハイツ』(2022) photo : kouichi torimura

萬玉 一昨年、私は「北沢のリベーション(A面/B面)」※2という自邸をつくったんですけど、やっているときはべつに作品として発表する気もなかったし、自由研究枠だったから、もう100%自分の興味だけで設計していたんです。
 でも、実際に暮らしはじめたらいろいろと分かってきて。つまり(自邸の)B面部分って家族みんなが自分の場所って思える共用空間で、この考え方はプライベートギャザリングのように、みんながそれぞれこの場所を語れるようなナラティブな集合場所で、これって神大とも重なるなって。そういう意味でも、さっきのプロジェクトと個人の興味の重なりとか、オンデザインとの重なりとか、組織との重なりとか、その「重なり代(しろ)」みたいなところに、結果、一周まわって気付かされたというか。

(※2)「北沢のリベーション」の詳細記事はこちら

『北沢のリベーション(A面/B面)』(2020)のB面 photo : akemi kurosaka

萬玉 だから今回、私が「代表建築家」になったからって、オンデザインのすべてのプロジェクトをチェックできるのかというと、そもそもオンデザインってそういう組織ではないし、それを求められてもいないと思う。結局は自分の目線でどういうふうにプロジェクトと対話するのか。それがオンデザインの価値につながっていくんだろうと思うんですよね。
 鶴田さんと櫻井さんたちが手掛けた「MINOYA」※3だって、今やっているプロジェクトと重なるところ、ブリッジするところ、きっとあるんじゃない?

櫻井 そうですね。このあいだ、自由研究で設計した「MINOYA」を住宅建築賞に応募したんですが、そのときにあらためて設計者3人(櫻井 彩、鶴田 爽、吉村 梓)でこのプロジェクトを考える機会があったんでんです。今日の話を聞いていて、萬玉さんが話してくれたようなプロジェクト単体の価値が、過去のプロジェクトとつながる瞬間って、正直まだ私は実感がない気がします

(※3) 櫻井さんによる「MINOYA」の記事はこちら

『MINOYA』のリビングにて。右から、吉村さん、櫻井さん、鶴田さん。オンデザインの女子3人が自由研究枠で手掛けた空間で、現在も3人による共同生活は続いている。 photo: akemi kurosaka

櫻井 西田Kくんが言っていたみたいに、もっと過去のプロジェクトも含めて振り返りながら考える時間をふだんからつくらないと意識的になれないのかなって思いました。でも西田さんとは、面談とかでそういう会話をすることもあるんだけど……。

西田 大丈夫、つながっている(笑)。

櫻井 えっ、それは西田さんの中でですよね? 

西田 そう(笑)

櫻井 いやいや、私の中でつながっていかないと……(苦笑)。やっぱり設計の案件数を重ねていったときに、それが過去と今とでどうつながっているのか、その瞬間では感じたとしても、3つくらい前のプロジェクトからつなげるのはかなり意識的にやっていかないと……

新チーフの櫻井さん

西田 そういうときに、もうすこし視野を広げて考えたほうがいいのが社会的価値。それは建築業界的な社会的価値もあるし、今こういうことがほかの業界でも起こっていて、それが自分がやっていることにもつながっているみたいな社会的価値もあるから。

萬玉 プロジェクト単位で、この作品は社会的にこういう文脈で価値があるってことを意識してやるのはいいことですよね。

 

それぞれの言葉で語る、それぞれのオンデザイン

西田K 結局、オンデザインって、これからどういう組織になっていくんですしょうね?

西田 僕は2年前、(設計における)代表の座を降りることを社内に宣言して、今回、萬玉さんにはモデルケース的に「代表建築家」になってもらったんですけど、それによって、インナーコミュニケーションを含めて、「クリエーションとは何か」を模索していきたいと思っているのね。
 その理由は、結局のところ、僕と西田Kくんは違う人間だし、僕と萬玉さんも違う。萬玉さんが語っている言葉が、どんどん外に流れていくほうがオンデザインにとってはよくて、そういうふうにオンデザインのスタッフもそれぞれの言葉でそれぞれの
作品やプロジェクトを語ってほしいんだよね。それが外から見たら「オンデザインの現在地」みたいになってるわけで、その感覚をすでに萬玉さんは体現されていると思う。つまり自分のプロジェクトの話をしてるのに、結果、オンデザインの話をしてるように聞こえるから。この感じをどうしたらみんなも実感できるのかなって。

萬玉 それはきっと時間の問題なのかも。

西田K 時間?

代表建築家の萬玉さん

萬玉 私は結構、損している年次というか。いや、損しているっていうよりも、初のインターンとしてオンデザインに入ってからは、とにかくそれまでオンデザインでやっていなかった場面に立ち会うことが多くて……。七ヶ浜の2次審査も、島流し※4も、その都度いちいち言語化、言語化って言われ(苦笑)。結局、それがそのまま、今の「オンデザイン」と「プロジェクト」と「私」みたいになっている。

西田 さっき西田Kくんが言っていたように、鶴田さんが語る機会や櫻井さんが語る機会が増えれば、きっと自分の言葉で話せるようになるだろうっていうのはそのとおりだと思ったんだけど、例えば、今年入った新人や2年目が、その感覚をもつようになるのはいつなのか。それってオンデザインのこれからにもつながる話だから結構、大事だなと思っていているんだよね。
 つまり、みんなが自分のことを語るんだけど、結局、みんなのことを語っているという感覚。僕だと無意識に組織を自分につなげられちゃうから、そのモデルになるのは僕じゃできない。だから僕以外で、そういうモデルケースをどんどん増やしてほしいと思っていて。

萬玉 西田さん、社長だし。

西田 創業者だから(笑)。

(※4) 「島流し」は、前回の座談会記事をご参照ください。

代表取締役の西田さん

萬玉 そこで大事なのは、たぶん実感値ですよね。言葉ってほかの人が同じことを言ってても、やっぱり実感を込めて話している人のほうが絶対に伝わるから。

西田 そこらへんもうすこし新チーフの3人に聞きたいし、質問とかしてもらいたいなと。

萬玉 「なんでこういう体制にしたのか?」とかの素朴な疑問でもいいですしね。

櫻井・鶴田・西田K ……。(新チーフ3人、しばし無言)

西田 難しそうなら、今日の総括でもいいよ(笑)。

西田K いや、それがいちばん難しい(苦笑)

鶴田 私は……、今日の座談会で、あらためて自分から発することの大切さに気付かされました。大学時代から日常のいろいろな風景を切り取った写真が好きで、一時期集めていたこともあったんですが、先日『新建築』(新建築社)に、設計を担当した「バオバブ保育園」※5が掲載されたとき、なぜか昔の風景写真のことを思い出して、ハッとさせられたんですね。「あっ、もしかすると自分の言葉で語れる軸ってここなのかも!」って。
 ただ、今担当している進行中のプロジェクトで、それにひもづけて後輩たちに何かを語れているかというと全然できてないんですけど……。

(※5) 鶴田さんによる「バオバブ保育園」の記事はこちら。

新チーフの鶴田さん

西田 プロジェクトとつなげて考えるとすこし難しいけど、風景写真を撮っている人って世の中にたくさんいるから、その人たちがなぜそれをやっているのかを知るようになると、さっきの社会性が生まれると思う。あと、めちゃくちゃ言葉を選ばずに言うと、そういうことは「戦略的」にやったほうがいいかも。なぜかと言うと興味のあることは言語化するのにそれほど苦労しないはずだから。
 ある意味、噺家みたいなもので、そこだけで専門性が高くて、ほかの人より知っている量が多いと、自分のプロジェクトに引き寄せてコメントできるんだよね。
 僕はちなみにマイブーム的なネタを10個ぐらい持つようにしていて、少しずつインターネットの記事や本とかでアップデートするようにしている。そうすれば会話がどんなテーマになっても切り替えができるから。

鶴田 はい……。あと、今年入社した1年目の新人スタッフによるインターンプログラム(テーマ『オンデザイン論』)に私も参加したんですが、一人ひとりの新人たちを垣間見られる機会ができて、すごくいいプログラムだったなぁって思いました。

今年行われた各インターン生によるプログラム(オンデザイン論)発表の模様 photo : beyond architecture

櫻井 えっ、インターンの話? それも今日の総括? 

鶴田 うん、一応、大事なことなので。

櫻井 じゃあ新チーフ代表として、最後西田Kくん総括して! それで終わりにしましょう。

西田 いやいや、櫻井さんも回ってくるから(笑)

西田K 今年、僕らは新たにチーフになって、チーフの中でもいちばん下の世代なんだけど、あらためてオンデザインを今後、発展させていくには、チーフ一人ひとりのプロジェクトへの関わり方、物事の捉え方にもっと意識を向けないといけないなと思いました。
 そのスキルが萬玉さんにはすごいあるけれど、それをそのまま模倣するんじゃなく、自分なりの重ね合わせで積極的にアプローチして、アウトプットしていく訓練みたいなのが求められているんだなと。そして、僕らがそういうところにすごい気を張っていると、後輩たちの意識も変わってくるのかなって。

西田 でも誤解してほしくないのは、「毎日、必死にインプットして!」っていうことを言っているわけじゃないからね。

西田K 分かります。むしろインプットももちろんそうだし、やっぱアウトプットしていく意識が高まっていけば、自然に「あっ、ヤベえ、足りねえっ!」てなると思うので。

西田 そうだね。じゃあ最後、櫻井さん。

櫻井 いやいや無理。今のまとめで大丈夫です。

西田 印象に残ったことでもいいから。

櫻井 うーん、楽しかったです……。

鶴田 以上?

櫻井 うーん……、そうですね、スタッフそれぞれ語る案件が違うのに、みんなオンデザインのことを話している、そういう組織の在り方ってどういうことなのかって考えると、今回私たち3人が同じチーフという役職名ではあるけれど、それぞれ役割が全然違うと思っていて。「それぞれの立ち位置で考えたり、語ることがオンデザインとして(外から)どう見られているか」をもっと意識していかないといけないんだなって、今日の話から感じました。

櫻井 あと、今回、私の中でいい意味で気持ちが変わった瞬間があったのを思い出したんですけど、それは萬玉さんから「代表建築家になる」って聞かされたときの話で。ある日、西田Kくんから突然、「萬玉さんがランチ行くっていうから、時間空けといてよ」みたいな感じでかなり雑な「調整さん」だったんですけど。私、めっちゃ不安で、びびちゃって。

西田K そんな雑じゃないから(笑)。

櫻井 そのランチのときに萬玉さんから「独立するか、代表建築家になるか」という話をしてくれて。「建築家としての独立って何となく想像できる道だけど、オンデザインという組織の中で『代表建築家』になるのって、想像できないからこそ楽しいんじゃないか」みたいな。それを聞いて、「めちゃいいな」って思ったんですよね。つまり私もオンデザインとしてどうあるべきかを一緒に考えられるし、その瞬間立ち会えるのがうれしいなって。

萬玉 私自身も建築家としてもっと強くなれるといいなって思う半面、オンデザインとして、おもしろいプロジェクトを今後、増やしていきたいし、コンペ取りにいきたいし、今日みたいに個人とか組織の話、体制の話をすればするほど自分たちの働く環境ももっとよくなるだろうし……。 
 私の同世代なら、ツバメアーキテクツとか、もう企画から事業まで設計業務以外のことにもいろいろ手を出したりしているからね。オンデザインも西田さんの次の世代でそういうことを自由に考えてやっていけたらいいのかなって。

西田 めっちゃ、やってほしい。

萬玉 そう言うと思った(笑)

櫻井・鶴田・西田K ですよね(笑) 【了】


物件ビフォー/アフター「オンデザイン イッカイ」編(株式会社 泰有社より)

 

座談会はそろそろ終了です。
2023年、事務所創立20周年のアニバーサリー・イヤーを迎えるオンデザイン。
リブランディングに向けての新たな展開に、ご期待ください!


profile

西田 司(にしだ・おさむ)/1976年、神奈川生まれ。使い手の創造力を対話型手法で引き上げ、様々なビルディングタイプにおいてオープンでフラットな設計を実践する設計事務所オンデザイン代表。東京理科大学准教授、ソトノバパートナー、グッドデザイン賞審査員。主な仕事として、「ヨコハマアパートメント」「THE BAYSとコミュニティボールパーク化構想」「まちのような国際学生寮」など。編著書に「建築を、ひらく」「オンデザインの実験」「楽しい公共空間をつくるレシピ」「タクティカル・アーバニズム」「小商い建築、まちを動かす」。

萬玉直子(まんぎょく・なおこ)/1985年大阪府生まれ。2007年武庫川女子大学生活環境学科卒業。2010年神奈川大学大学院修了。2010年〜オンデザイン。2016年〜オンデザインにてチーフ就任。2019年〜個人活動としてB-side studioを共同設立。主な作品は、「大きなすきまのある生活」「隠岐國学習センター」「神奈川大学新国際学生寮」など。共著書に「子育てしながら建築を仕事にする」(学芸出版社)。

櫻井 彩(さくらい・あや)/千葉県生まれ。千葉工業大学大学院修了。2016年よりオンデザイン。主な作品は、 シェアオフィス・コワーキングスペース「G Innovation Hub Yokohama」、vivistop 柏の葉リニューアルPJ 「子どもたちが更新し続けるものづくり空間」、DeNAべイスターズ選手寮。「BEYOND ARCHITECTURE」編集スタッフとしても活動中。

鶴田 爽(つるだ・さやか)/兵庫県生まれ。京都大学大学院修了。2016年よりオンデザイン。主な作品は、 深大寺の一軒家改修「観察と試み」、クライアントと建築家による超DIY 「ヘイトアシュベリー」、バオバブ保育園。模型づくりワークショップ担当としても活動中。

西田幸平(にしだ・こうへい)/奈良県生まれ。2016年東京理科大学大学院修了。2016年よりオンデザイン。主な作品は、「神奈川大学新国際学生寮」などのほか、今年竣工したオーナー住戸付賃貸共同住宅「Hongo Heights(ホンゴウハイツ)」を担当。

※座談会は感染防止に十分配慮して行われました。