ボクたちの
“パブリック”は、どこへ
向かうのか?#04
幸せを感じるポイント
ウエスギ) 僕は長野出身なんですが、実家の周りには空き家がすごく増えていて、彼らが家を貸さない理由はそこに仏壇があるからなんですね。でも、今の西田さんの話を聞いていて、仏壇も貸し倉庫じゃないですけど、うまく継承できるカタチにして、そこに行けばちゃんとお線香もあげられるようにしておけば、もしかすると地方の空き家の問題って解決できるのかって思いました。
この間、ある僧侶の方と対談したんですが、その際に、これからは移動式のタイニーテンプルも考えているって話をされていて。檀家さんがみなお年寄りで足腰も弱くなっているから、お墓参りもなかなか行けなくなるので、ならばお寺側から檀家さんの自宅に伺い、お墓参りするっていうのもあるんじゃないかって、僧侶がおっしゃっていました。
西田) 昔の仏壇がある家は、自宅にお坊さんを呼んで法要してもらってたじゃないですか。それがお坊さんの側からセットでやってくるってことですよね。
さわだ) ふだんはお寺の中の格納ボックスみたいなところに奉納されていて。
ウエスギ) お寺のいちばんいい場所に。
西田) 継承の話でいうと、もうひとつ、先進国50カ国の調査で、65歳以上が幸せだと感じる割合のランキングが日本は41位だそうです。
さわだ) だいぶ低いですね。
西田) 低すぎますよね。その調査だとほとんどの先進国は20代と、60代後半に幸せのピークがやってきています。つまり20代は夢がいっぱいで、仕事や結婚などに意欲的な世代。60代後半は仕事も辞めるタイミングで、これからどう楽しむかっていう時期で、いろんなことに寛容で、いろんなものを受け入れて、これからのスローライフをどう楽しむのかっていうのが高齢者の世代です。
でも、あるデータには日本の一部の高齢者がキレやすくなっているという結果がでています。その理由については、彼らの承認欲求が不足しているからだと言われています。会社に役職があるように、家の中でも役割があればその人の価値になります。でも、それが段々なくなっていくと、例えば夫婦のどちらかと死別して孤立化すると、その人が承認される機会がなくなります。いわゆる五大欲求というものが満たされず、そのストレスが外部に対しても出してしまうと。だから承認欲求を得るためにも、今後は高齢者への役割や仕事が、すごく大事になると思います。
ウエスギ) 多世代になればに職場だけじゃないところでも、多層的にいろんなコミュニティができますしね。
さわだ) 最近、とくに都市居住者にはシフトしたい欲求が潜在的にあって、でも、どうやっていいかわからないって感じている人が多いと思います。僕らもいろいろなカタチで発信しているけど、よく「それは土地が広くて自然が豊かな場所だからできるんだよ」って簡単に言われてしまいます。
ウエスギ) ちょっと前だと、都心から離れるなんて面倒くさいって思う人も結構多かったけど、僕らの世代から下はその面倒くささが逆に幸せのポイントになっているというか、そのほうが楽しいじゃんって潜在的にみんな分かっているような気がします。
西田) ちょっと郊外にでれば、たき火を囲みながら夕食はみんなでつくったり、そんな場所で仕事もできれば、きっとクリエイティブだし、コミュニケーション能力も高まりそうですよね。そういう場と、さっきの高齢者の働き方とをセットにして考えれば、その場所を維持するための仕組みづくりまで、いろいろと構想が広がりそうな気がしています。
さわだ) 話をしていたら、ワクワクしてきました。
ウエスギ) 何か一緒にできるといいですね。
西田) ぜひ、考えましょう!
【過去の記事】
YADOKARI×西田 司「ぼくたちの“ライフ”と“ワーク”はどうなるのか?」#01
YADOKARI×西田 司「ぼくたちの“ライフ”と“ワーク”はどうなるのか?」#02
YADOKARI×西田 司「ぼくたちの“パブリック”は、どこへ向かうのか?」#03
DATA
ヨコハマアパートメント
所在地:神奈川県横浜市
竣工年月:2009年6月
担当:西田司+中川エリカ
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