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ボクたちの
“ライフ”と“ワーク”は
どうなるのか?#01

text:satoshi miyashita photo:akemi kurosaka
 illustration:awako hori 

タイニーハウスやミニマルライフなどの世界的動向をいち早くキャッチし、独自の視点で発信し続けるソーシャルデザインカンパニー、YADOKARI。昨年オープンした「BETTARA STAND 日本橋」は、彼らが企画運営する飲食をベースにしたコミュニティスペースだ。都会のど真ん中に突如現れた刺激的な空間に建築家の西田司さんも興味津々。YADOKARIのさわださんとウエスギさんに案内されながら、3人は語りはじめた——。

 

@BETTARA STAND 日本橋

 

恵比寿神社に隣接した、ユニークな立地の「BETTARA STAND 日本橋」

 

BETTARA STAND日本橋の成り立ち

ウエスギ:BETTARA STAND日本橋では、週に3、4本、イベントを開催しています。映画,落語、トークショー、ワークショップなど、年に200本くらいのイベントを行う予定です。

西田:イベントの企画についてはYADOKARIも一緒に関わっているんですか?

さわだ:企画はサポートメンバーの持ち込みが多いので、僕らもできるだけ絡むようにはしています。

西田:サポートメンバーは今何人くらい?

ウエスギ:3,000人くらいです。バイトのスタッフは「コミュニティビルダー」と呼び、彼らも一緒に街の取材やイベントの企画をしてもらいます。

さわだ:隣りにある宝田恵比寿神社は、その名の通り、神様が恵比寿様。この神社を中心に街の人々が集う「境内」のような雰囲気がつくれないかなと。で、よくよく調べたらこの地域はべったら漬けが名物だってことを知って。

ウエスギ:毎年10月の2日間だけ、約10万人で賑わう名物の「べったら市」があって、この界隈をべったら漬けの屋台で埋め尽くされるんです。

西田:だから“BETTARA”だったんですね。ここはもともとは駐車場ですか?

ウエスギ:そうです。駐車場の土地を大手ディベロッパーさんから借りています。彼らとしても単に駐車場にしておくには惜しいので、日本橋エリアの活性化に繋がるような賑わいをつくれないかと今回相談をいただいたのがきっかけです。

全国のクラフトビールや日本酒などを豊富に揃えた飲食ブースを併設

さわだ:きっと合理性を考えたら駐車場のままにしておくほうがいいけど、「街」という視点で、もっと交流人口を増やして、今後のブランディングを考えようと。

西田:いや〜、最初に外観を見たときは、みんなでDIYしている感じがして、僕はすごくいいなあと思いました。

さわだ:うれしいっす(笑)。

西田:ふたりはいわゆる建築系の出身じゃないですよね。この案件を、どんな感じでディレクションされたんですか。

ウエスギ:一応、細かな設計には、サポーズデザインオフィスから独立された小泉設計室の小泉秀一郎さんに入ってもらっています。なので、例えば「ワークショップで、この部分はDIYで僕らが関わりたい」ってところは、事前に余白として残してもらいました。あえてスケジュールをとってもらうので、工期で言えば通常、業者に頼むと1カ月くらいで終わるところが、3ヶ月くらいは掛かっています。

移動可能なタイニーハウスを使ったオープンスタンドなスペース

 
ワークとライフの狭間で

西田:家を設計していると、結局、その人の生き方の話しになることが多いんです。例えば、週末だけ自分の家でお店をやりたいだとか、せっかく東京から離れて湘南エリアに住むなら、ここで働くのもいいじゃないか、みたいな感覚。最近は家がオフィス化している感じを受けるんですね。

さわだ:なるほど。

西田:いわゆる会社のオフィスって均一化され、効率化され過ぎて、息苦しく思っている人は、けっこういると思うんです。イギリスのランカスター大学教授のキャリー・クーパー氏が「バイオフィリックデザイン」という論文の中で、20カ国で2,000人くらいを対象にアンケートをとったんですが、緑があったり光があったり風が抜けていたりする環境で働いている人たちと、そうじゃない環境で働いている人たちとで、それぞれヒアリングを行って、いわゆる自然に近しい環境で働いていたほうが、業務効率の観点から見た生産性が7%もアップしたという結果がでたそうです。そして、個人的な幸せ度でいうと15%、さらに僕らの業界でいうクリエイティビティに関しては同じ15%くらいアップしたんだそうです。つまり、すべてにおいて良くなっている。僕は、こうした環境が働くモチベーションに影響するという考え方に、とても興味があります。

さわだ:なるほど。

西田:最近取り組んでいる公園活用に関しても、同じようなことを感じています。これはYADOKARIさんがやられていることにもちょっと近いんですが、ここ数年、規制が厳しかった公園を国交省が緩和をしているんです。そこで僕らは一昨年くらい前から横浜で「パークキャラバン」っていうチームを立ち上げて、子供の遊具をDIYでつくったり、スノーピークスさんに協賛してもらって、「防災キャンプ」と名付けてテントで寝たり、一日を通して都市の環境を感じてもらう試みをやっています。そうすると運用の仕方次第で公園が地域拠点にもなりそうだと分かるんです。これって、じつは働き方にも重なると思っていて……。子供を連れて遊べる場があれば、その横でお母さんが働けるかもしれない。つまりオフィスには連れて行けないけど、隣りにコワーキングスペースやカフェがあれば働けるみたいな。たぶん、ここもそうですよね。これまでにない「ゆるさ」が、新たな環境を生み出しているように感じています。

ウエスギ:今までは、住まいとオフィスが、パキっと分かれている感じだったのが、変わってきていると。

西田:つまり「ワーク」と「ライフ」は一緒なんじゃないかっていう考え方です。ここもどこから飲食店でどこからオフィスで、どこから交流の場なのかが謎ですよね(笑)。でも、きっとそっちのほうがインプットも多いし、そこに行く価値みたいなことにもつながるんだと思います。僕は職業柄、打ち合わせで外出したり、こうしてYADOKARIのふたりと話したり、いろんなインプットの機会がありますが、スタッフたちはつねに同じ環境の中で働いています。彼らの職場環境がよくなるにはどうしたらいいか。最近は彼らにとってのインプットの部分を考えるようになりました。

DIYでつくった居心地のいい空間で語り合う3人