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東京ビエンナーレ2020/2021
災害対応力向上プロジェクト
#01

text:Rina Watanabe

「災害対応力向上プロジェクト」とは?

 

2021年7月10日より、現在開催中の「東京ビエンナーレ2020/2021」の中で、
オンデザインは会場計画のプロデュース以外にも、
「災害対応力向上プロジェクト」のディレクションを行っています。
この連載では、東京ビエンナーレというアートプロジェクトの中で、まちの一人ひとりのリアルな声をどのようにすくいあげ、地域コミュニティの強化につなげていこうとしているのか、そのアプローチの手法を紹介していきます。

「Tokyo Biennale #01都市とアート、その関係性の設計」https://beyondarchitecture.jp/projects/tbodn/tb01/

「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉がありますが、この華とは「町火消し」のことを指しています。かつて江戸の「防災」は、地域コミュニティと深く関わってきましたが、近代以降、個人個人で生きることができる(ように見える)ことによって、私たちをつなげるコミュニティはとても弱くなってきています。

そこで、今の私たちは災害に向けて、日常的にどこまで向き合えているでしょうか?

多様化する災害、いざ被災した際に、誰に助けを求めるべきなのでしょうか?

また、その時、誰かのために役立つことはできるのでしょうか?

災害に対する新しいアプローチ

2011年の東日本大震災において甚大な被害を受けた「石巻」で、オンデザインは多様なジャンルの人々を集めたまちづくりプロジェクト「ISHINOMAKI2.0」を発足しました。以来、地域のコミュニティ拠点の立ち上げやメディア発信、人材育成の活動に多く関わっています。東京ビエンナーレでは、そうした石巻での10年という歳月の中で、オンデザイン が培ってきた災害との向き合い方をベースに、「無印良品」を展開する株式会社良品計画と連携し、アートなアプローチで東京の災害に備える「いつものもしも、神田五軒町・市ヶ谷エリア」を実践します。


「ISHINOMAKI2.0」https://beyondarchitecture.jp/projects/ishinomaki2-0/

 

一人ひとりの声をすくいあげ、地域でシェアする

「災害対応力向上プロジェクト」では、まちで生活する一人ひとりの声に着目し、災害時に生じるであろう個人レベルでの課題や不安などをヒアリングにより集めています。
その集まった声(VOICE)を、建築家ならではの表現手段として建築模型へとインストールし、作品として展開していきます。会期中は集積された「VOICE 模型」に、地域の方や来訪者の知恵やアイデアを重ねていきながら、ワークショップなどを実施。地域の災害リスクや解決策についてシェアし、考えていきます。

diagram:オンデザイン

 

地域を巻き込む参加型プラットフォーム

「VOICE模型」は、地域を巻き込む参加型のプラットフォームとしてデザインされています。
ある人の抱える課題から空間化された模型を下敷きに、参加者による課題解決のアイデアや、もしくは課題に対してお手伝いできるなどの立候補の声を集めます。さらに、アーティストのアートワークでの参画、企業などの技術やリソース提供など、コメントやモノを模型に重ねていくことで、今までになかった人同士のつながりや知恵の集積を試みます。

「VOICE模型スタディの様子」photo:オンデザイン

 

異なる特徴をもつ2つのエリアでの開催

プロジェクトの開催は、神田五軒町の「長谷川ビル」と、市ヶ谷の「MUJIcom 武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパス」の2会場を拠点とします。昔ながらのコミュニティをもちながらも、観光地としても賑わう神田五軒町と、大学や大企業がありながら自然環境にも恵まれた市ヶ谷と、異なる特徴をもつ2つの地域でヒアリングを行い、そこで集積された声を「VOICE模型」などでシェアしていきます。それぞれの特徴を比較しながら、地域によって異なるコミュニティの見える化を図ります。

 
左)神田五軒町エリア会場「長谷川ビル」photo:オンデザイン
右)市ヶ谷エリア会場「MUJIcom 武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパス」photo:良品計画

 

無印良品 <くらしの備え。いつものもしも。>とのコラボレーション

「無印良品」を展開する良品計画の防災プロジェクト「くらしの備え。いつものもしも。」をベースに、「VOICE模型」によって浮かびあがってくる課題やニーズに対して、「いつも」備えるアイデアや、「もしも」のための防災グッズなどを提案していきます。企業の視点で、アートとのコラボレーションをしていくことで、よりリアルな課題へのアプローチが可能となります。

  
「くらしの備え。いつものもしも。|MUJI無印良品」
https://www.muji.com/jp/ja/feature/other/559811

 

楽しく備える、体験型のイベントメニュー

災害時に役立つ知恵や技術をシェアするワークショップ、防災目線でまちを見るツアー、アイデア会議やVOICEについての座談会など、会期中はさまざまなイベントを開催し、災害時に機能する知識をシェアしながらコミュニティの形成を図っていきます。

「一昨年に行った防災まち歩きツアーの様子」photo:オンデザイン

 

「いつものもしも、神田五軒町・市ヶ谷エリア」の活動記録は、今後BEYOND ARCHITECTUREを通じて発信し、災害という分野を超えた「災害対応力の大切さ」を伝えます。

#2では、現在開催中の会場レポートをお届けします!


東京ビエンナーレ2020/2021「災害対応力向上プロジェクト」
https://tb2020.jp/project/projects-to-improve-disaster-response/

会期:2021年7月10日(土)〜2021年9月5日(日)
会場:「長谷川ビル」(インフォメーションセンター併設)
〒101-0021 東京都千代田区外神田6丁目12
「MUJIcom 武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパス」
  〒162-0843 東京都新宿区市谷田町1-4 武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパス1F


プロジェクトディレクター
株式会社オンデザインパートナーズ(一色ヒロタカ、渡邉莉奈、内藤あさひ、村田百合)

プロジェクトパートナー
株式会社良品計画
「無印良品」を展開する良品計画は、人や社会の「役に立つ」という大戦略のもと、くらしの些細な断片から地球規模の未来までを見通し、考え抜く気配りの集合体を目指している。社会でいま起きているさまざまな課題に敏感に呼応し、「良心とクリエイティブ」からそれらをより良い方向に解決していくプラットフォームでありたいという想いのもと、小売業の枠を超えてさまざまな活動に着手している。

協力
社会福祉法人千代田区社会福祉協議会/千代田区及び、五軒町・番町の地域のみなさ