新連載
オンデザイン、海外へ!
#02
ベトナム現場確認 編
ここ数年のオンデザインは海外プロジェクトの増加にともない、現地への出張案件が増えています。本連載は、毎回さまざまなローカルルールに直面しながら設計業務を行う担当スタッフ・田邉さんによる奮戦レポート。今回は2日間にわたったベトナムでの現場確認 編です。
***
今回の海外プロジェクトの場所は、東京から飛行機で6時間、ベトナムはダナン。
ダナンは、ベトナム屈指のビーチリゾート地として成長中の都市。
ハノイ、ホーチミンに次ぐ第3の都市として人口100万人を超える中部ダナン。世界遺産などの観光スポットに恵まれ、急ピッチで進められるビーチリゾート開発によって一大観光都市へと成長を遂げたダナンは、今や有名旅行メディアでも「今注目の旅行先」としてたびたび取り上げられる人気の都市となっています。〜「トラベルjp」より引用
「ビーチリゾートが有名」と紹介した手前、せっかくなので海の写真をお見せしたいのですが、毎度弾丸出張のため、昼間のビーチの写真がありません(残念……)。代わりに街中の写真を。
ビーチ沿いは所狭しとリゾートホテルやコンドミニアム用のビルが立ち並び、建設待ちの土地も多く見かけます。しかし住宅地へと少し入ると、景色が一変。ローカルな街並みに出合えます。
「おおーこれこれ、アジアっぽい!!」
路上で販売されているサトウキビジュースは、レモン汁のトッピングもあってとても飲みやすい! 一年中常夏のダナンでは大人気のローカルドリンクだそう。
近年、ダナンは観光だけではなく、IT系企業の誘致にも力を入れているようです。日本からダナンへ向かう飛行機の機内は、コロナの影響もあってでしょうか、観光客はほとんど見かけませんでした(2023年3月当時)。それよりもITのお話をされているスーツを着た日本人をよく見かけました。
現場確認 1日目
さて、前談はさておき、今回の現場があるオフィスビル前に到着。
歩道には大量のバイクが停まっています。てっきり「これはバイク屋さんの売りものなのだろう」と思っていましたがそうではなくて、通勤者の私物だそう。とても綺麗に並べられています。
ダナンの街は住宅から職場、繁華街から観光地までバイクで移動できる範囲にギュッとコンパクトにまとまっています。電車はなく、移動手段は基本バイク。通勤時間帯には日本では想像できない量のバイクで道路が埋め尽くされます。
さっそく現場のあるビルのなかへ。
今回のプロジェクトは、200平米ほどあるオフィスの内装設計です。
細長いテラスが特徴的です。
前回、現場を訪れた時はまだ壁や天井が残っている状態でしたが、今回は、茶色のガムテープを床に貼り、大まかな壁の位置や家具の置き方をお施主さまと一緒にシュミレーション。一見、家具だけがポツンと置かれた、ちょっとシュールな光景ですが、こうすることでお施主さまとのイメージの共有がしやすく、詳細なデザインを決めるためのディスカッションにもつながります。
今回の現場訪問に向けて、工務店さまには既存の壁や天井の取り壊しをお願いしていたので、うかがった時はいろいろなものがむき出し状態でした。
さらに、工務店さまは赤いガムテープで、私たちが設計した壁や家具の位置をマーキングしてくれていました。実寸を体感できるのは、現場打ち合わせの醍醐味であり大事なポイントです。
例えば、この少し先がカーブしている赤いガムテープの線は、エントランスウォールです。
弊社ボスの西田と確認し、少し場所を動かすことにしました。図面上は問題なくても、実際に現場に行ってみると、窓からの光の入り方、共用廊下からの視線など、「もっとこうした方がよい!」と気付かされることがたくさんありました。
最近はiPadを使って、現場で撮った写真に数値などを書き込むことができるので、やりとりがとてもスムーズ。例えば天井まで手が届かなくて、
「あれです、あれ!」
「そのパイプの右の青い線です!」
「それじゃないですもっと右です!」
なんてやりとりをしなくてもよくなりました。このような単純なことほど英語で伝えるのに苦労するもので、iPadには助けられています。
現場を確認した後は、工務店さまが用意してくれたマテリアルをお施主さまと一緒に確認し、選定していきます。
床のタイル、壁の塗装、タイルカーペット、照明、コンセントやスイッチのプレート、ドアフレームの木材、フローリング……、大量のサンプルが用意されていました。
ちなみに選定のリミットは、なんと半日! 全員で集中して決めていきます。
自然光を当ててみたり、照明のサンプルを付けてみたり、既存の壁と見比べてみたり。
お施主さま、工務店さま、オンデザインと3者が真剣に素材を見比べます。
さて、ここでこのプロジェクトの特徴を少しご紹介しておきます。
これまでオンデザインの海外プロジェクトは、現地に拠点をもつ日系工務店さまに協力をいただいてきました。しかし今回は初の試みとして、地元の工務店さまとプロジェクトを進めることに! 地元だからこそのローカルな素材や工法を知ることができ、毎回打ち合わせがとても刺激的でした。
今回、打ち合わせに集まったのは、ベトナム人、シンガポール人、日本人。
それぞれ言語やバックグラウンドが違うので、共通言語となる英語でのディスカッションになります。私は学生の頃から英語が大の苦手でしたが、伝えないと仕事にならない危機的状況に身を置いたことで、どうにかこうにかプロジェクトを進められるくらいまでには話せるようになってきました。
とは言っても、私の拙い英語だけでは伝わらないことも多いです。そんな時は3Dでモデリングして見せたり、手でさっと図面を描いたりして伝えることにしています。
英語ができなくても、3Dモデリングや図面など、べつの「世界共通言語」を駆使して意思疎通が図れる建築設計の仕事って本当におもしろい!!
ほかにも例えば工務店さまにご用意いただいたマテリアルの光沢感が強すぎたので、「もっとマットなほうがいい」と一生懸命に説明したところ、お施主さまが理解してくれて「ノー シャイニー シャイニー, プリーズ!」と、ひと言。これだけで全員が「あー、なるほど!」と納得した瞬間でした。