往復書簡2
#02
それぞれの世界で
つながる我が家
オンデザイン所属の建築家が自邸づくりについて赤裸々な想いを伝えあう連載シリーズ「建築家の往復書簡」が1年ぶりに復活。前回の梁井さんに続いて、今回は萬玉さんからの手紙です。
これまでの往復書簡はこちらよりご覧いただけます。
mangyoku>> yanai 📨
やないさんへ
お手紙ありがとうございます。
最近グッと冷えてきましたね。寒い季節はこどもも体調崩しがち(というかほぼ鼻水垂らしてるかも…)なので、ワーママとしては踏ん張り時の季節でもあります。
『往復書簡 season2』ということで2往復の復活、よろしくお願いします。
やないさんちは、なんといっても「庭」がとても魅力的ですね。北の庭(正面の庭)と南の庭(奥の庭)の環境の違いが、暮らしによって庭の様相にも違いが出てきていて面白いです。北の庭のコモンスペース化、たのしみにしてます!
さて、自邸に暮らし始めて2年目に突入しました。
新たな生活環境1年目特有のわくわくそわそわ感が落ち着き、すっかり日常に定着してきたように思います。実際、お気に入りのA面のウールカーペットも随分とくたっと落ち着いた手触りになりました(笑)。
季節も一周し、やないさんも温熱環境に言及していましたが、春夏秋冬の気候と付き合いながらの暮らしは日本ならではですよね。我が家はマンションの1室なのでコントロールしやすく、夏はエアコン、冬はガスファンヒーターで暑さ寒さを凌いでいます。そして中間期は自然通風です。意外にも風がとっても抜けます。とくにB面は北と南と東に開口部があるので、たまにほぼ外なんじゃないか!?というくらい吹き荒れるときがあるのですが……(一度、風になびいたカーテンによって花瓶が倒れて割れてしまったほど)。
B面は仕上げもラフなのですが、光も風もA面よりたっぷりと入ることもあり、とても開放的な環境です。
相変わらず突っ込みどころ満載な使い方をしていますが、暮らしてみて思ったのは、設計時に使っていた“余白”という言葉の意味がアップデートされたなということです。私たちが『season 1』で“余白”って呼んでいたものって、わりと空間的(平面的)余白だったと思うのですが、暮らしてみて気づいたのは、そのうえでもっと五感に響く質のような(マテリアルや光や風など)余白が深く関係してるなと。なんというか、頭で考えるよりも感覚を頼って場所を開拓していけるような……。そんな環境をひっくるめて“余白”のあり方を暮らしながら学んでいるように思います。
昨年の講評会イベントの際に、長谷川さんから「新しい家族のあり方を感じた。」とコメントをいただきました。そのときは(私自身、家族論まで深く考えてなかったので)結構びっくりしたのですが、とても印象に残っていて、以来、よくふと考えながら過ごしています。
タイミング的にもコロナによって、家にいる時間が増え、家族と過ごす時間が長くなりました。ただ、我が家をよく観察してみると、家族で過ごしている(気配はお互い感じている)が、みんなバラバラでそれぞれの世界(息子はNetflix、旦那はteams、わたしはzoom……)とつながっている状況が頻発しています。「“ひとりぼっち”にはなりたくないけど、“ひとり”になりたい」くらいのバリアを持ちながら一緒に居る。
たしかにこれって私のこどもの頃ではあり得なかった状況です。(nLDKという近代間取りだと、こういうとき、個室に籠るか、リビングで見たくもないテレビに付き合うかの二択だったかとおもうと確かに窮屈ですよね…。)
永山さんからも「住宅の評価はながく暮らしてみてわかるもの」とコメントあったように、まだまだ自邸との対話は続きそうですね。
さて、やないさんも住みはじめてみてからの「あーすればよかった、こーすればよかった」が尽きないと書いていますが、超共感です。そんななか、我が家はB面に造作家具を足す計画がすっごいスローペースで進んでいます(おそらく一年前の手紙にも書いていたのでスローペース具合が絶望的なんですが……)。この北側ニッチに小上がりスペースを絶賛企み中です。
また遊びにきてくださいね!
萬玉直子
次回は、11月中旬の投函予定です。 📪
萬玉さんの自邸<北沢のリノベーション>の竣工写真はこちらよりご覧いただけます。
profile |
萬玉直子 naoko mangyoku1985年大阪府生まれ。2007年武庫川女子大学生活環境学科卒業。2010年神奈川大学大学院修了。2010年〜オンデザイン。2016年〜オンデザインにてチーフ就任。2019年〜個人活動としてB-side studioを共同設立。主な作品は、「大きなすきまのある生活」「隠岐國学習センター」「神奈川大学新国際学生寮」など。共著書に「子育てしながら建築を仕事にする」(学芸出版社)。趣味は朝ドラ。最近はアレクサに話しかけるのが密かな楽しみ。 |
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