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往復書簡
#02
リノベーション
という選択

photo:akemi kurosaka, naoko mangyoku(letter)  illustration:mangyoku naoko

 

オンデザインで働く、梁井さんと萬玉さんは、現在、子育てと自邸づくりに邁進する日々を送っています。そんなお互いの近況を伝えあう新連載の往復書簡。梁井さんの手紙を受けて、2回目は萬玉さんの返信です。

梁井さんへ返信する萬玉さん


from mangyoku  to yanai

 

やないさんへ

お手紙ありがとうございます。

お互いいまは子育てしながら働き、なかなかゆっくりランチなんてわけも行かず、じつはプライベートなことをあまり知らず、今回お手紙というかたちでお話しできることうれし恥ずかな気持ちです。

さてさて、これを書いているのは大きな台風がきた10月の三連休です。やないさんの自邸は既に着工されているとのことですが、現場は大丈夫でしたか? 我が家は台風のおかげ(?)で久々に家族の時間がとれ、目下設計中の自邸リノベが少しだけ前進したような気がします。

お手紙で質問もらっていた「自邸づくりのキッカケ」ですが、我が家もキッカケは現実的で、いま住んでいる社宅を出ないといけないからです。とは言え、私も夫も建築設計を職業としているという厄介で小さなプライドを持っており、いつかは自分たち家族の暮らしの場を創造したいというフワッとした想いはあったので、後押しされたかたちでスタートしました。

ただ、自邸づくりといっても今の世の中選択肢は溢れかえっており、我が家も初っ端から判断に苦戦しました。

新築なのか改修なのか?

戸建なのか集合住宅なのか?

住むエリアはどこがよい?

ローンってどうやって組むの?

そもそも、いまって不動産お買い時なの……??

恥ずかしいことに仕事で住宅設計を経験しているにも関わらず、いざ自分のことになると、設計の前段階から優柔不断が爆発です。笑

リノベーション中の空間

息子も模型で奮闘中

まず、私と夫がスムーズに意見が一致したのは「中古のマンションを改修する」という選択でした。新築と戸建てという選択肢を最初に捨てたのですが、どうやら”土地”という不動産を所有することに何故だかピンと来なかったのです。おそらくうちは、私も夫も実家は関西方面なので、近くに親族が住んでいません(やないさんの状況はとても羨ましくもあります。とくに子育てしていると、近居生活はもう向かうところ敵なし! 状態という感じです。笑)。なので、大袈裟にいうと、土地に縛られるよりももう少し将来の余白を残しておきたかったんじゃないかと思います。

では、何に一番悩んだのかというと、住むエリアでした。

いま住んでいるところは社宅だからという理由で住み始めたため、私も夫も通勤時間がそこそこかかります。そして職場が逆方向なので、どちらかの職場に寄せるのもお互いしっくりせず……。むかし住んだことあるエリア、なんだか人気らしいと広告で謳われているエリア、SNSで見つけた物件のあるはじめて行くエリア……いろんなパターンで不動産探ししてみたものの今度は予算とにらめっこ…

なかなかエリアを絞れずにいた頃、家族で近所を散歩しながら、ふといま住んでいる場所っていいよね、となりました。3年半住んで愛着も芽生え、保育園に通う息子のおかげでわりとネイバーフッドな暮らしもたのしめており、満足度高めだったことにようやく気づきました。そして、知らないまちに行くことの選択肢は無くなり、同エリアでの不動産探しがはじまりました。(エリア的に土地含めた新築は目が飛び出る金額感なので、最初に新築戸建てを諦めておいてよかったと思います、笑……)

そんなこんなで築年数の古い中古マンションを見つけ、ぼちぼちと設計をはじめているところです。

設計する作業は、どこか自分たち家族のこれからの生き方を考える作業とも言えるなと感じています。

やないさんはどんなことを考えながら設計の作業を進めましたか?

お返事、たのしみにしてます。


次回は、1月14日の投函を予定しています。📪
profile
萬玉直子  naoko mangyoku

1985年大阪府生まれ。2007年武庫川女子大学生活環境学科卒業。2010年神奈川大学大学院修了。2010年〜オンデザイン。2016年〜オンデザインにてチーフ就任。2019年〜個人活動としてB-side studioを共同設立。主な作品は、「大きなすきまのある生活」「隠岐國学習センター」「神奈川大学新国際学生寮」など。共著書に「子育てしながら建築を仕事にする」(学芸出版社)。趣味は朝ドラ。最近はアレクサに話しかけるのが密かな楽しみ。