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ワークスタイル再考
#02
働く拠点は
なぜ分散化するのか?

text:satoshi miyashita photo:akemi kurosaka illustration:awako hori

 

 
クルマで会議?

伊藤 あとアプリの活用で言うと、最近、PARTYで電気自動車の「テスラモデルX」を購入したばかりです。

西田 え、すごい!

伊藤 専用アプリをつくって、スタッフがテスラを予約乗車できるようにしようと。そして、僕は自宅が葉山なので、鎌倉と代官山間を決まった時間にシャトル便で行き来して、クルマを会議室として機能させたいと考えています。

伊藤 Skypeでの会議はまだ法律的にはできませんが、Googleが入った巨大なナビシステムがテスラに搭載されているので、会議の議事録ぐらいは残せます。

西田 面白いですね。

伊藤 このアイディアを考えたきっかけは、今、京都の大学で教えているんですが、毎週、新幹線に乗っていると「これはもはやオフィスだな」っと。自分にとって、アイディアを考えるのに新幹線っていちばんいいという感覚があります。

西田 誰も横から邪魔してこない、パーソナルスペースですしね。

伊藤 そうなんです。新幹線と飛行機は仕事に適していることに気付いて、ただ声は出せないので会議はできない。じゃあクルマならいいんじゃないかと。しかもEVで、葉山の自宅に充電器を付けて、夜はテスラで帰って充電し、朝また会社に出社し、今度は予約したスタッフが鎌倉のオフィスに行くっていう。

西田 テスラは、乗り心地も本当にいいですよね。昨年、グッドデザイン賞の審査員をしていたので、僕も偶然、試乗させてもらいました。

伊藤 確か、金賞をとってましたよね。以前、ディーラーの人とオートパイロット(自動運転)で首都高を一緒に運転したんですけど、場所を設定すればある程度は自動走行できるんです。途中、目黒方面へ曲ろうとしていたので、「おい、そっちじゃない(笑)」というのはありましたけど。

西田 はやく自動運転で乗りたいですね。自分で運転していると最近は眠くなっちゃって(笑)。その時間がもったいないなっていつも思うんですよね。

伊藤 僕もそうです。今は「ライドシェア」のアプリと同時に、「スマートロック」というオフィスの鍵のような、ID代わりのアプリをつくっています。フリーランスの方や会社のスタッフもみんなで使えて、いわば水戸黄門の印籠みたいなアプリにしようと。
 そこに仮想通貨を導入させて、コーヒーとかを買えたりできればいいなあと。会社でコーヒー代をいちいち200円渡すのも面倒くさいじゃないですか。なので全部をキャッシュレスにして……。

西田 そのアプリ、僕らも使いたいです!  オンデザインも地域にいろいろな拠点をもっていて、相鉄と一緒に横浜駅西口でやったり、石巻には「ISHINOMAKI2.0」の拠点があります。今いる関内のオフィスをメインにしながら、自分の家とかその周辺とかで、そういう分散型の働き方が起こりやすい環境になっているなあと感じています。
 今の話は仮想通貨とセットになっていているところもいいですよね。余ったお金で、ちょっとお昼も食べられるみたいな。

伊藤 まさに今、毎週水曜日に賄いランチみたいなことをやろうとしています。タダっていうよりは、仮想通貨の単位で食べるみたいなことができればと思っています。

西田 オンデザインでは、最近、鎌倉の「ひなや」さんというケータリングの会社に月1回、来てもらって、ランチをお願いしています。引っ越しするときに、「今後、会社のどこを強化したいか」ということをスタッフ一人ひとりにヒアリングしたら、「お昼」って言われて(笑)。僕はてっきり「打ち合わせや模型製作のスペースを拡充して欲しい」といった要望がくるのかと思っていたんですが……。

伊藤 最近は、キッチンセントリックなオフィスって多いですよね。結局、リノベ中の鎌倉のオフィスもキッチンが主役ですし。じつはPARTYの仕事場も近々引っ越すんですけど、そこでもオープンキッチンというか、カウンター型のキッチンが主役になりそうです。

西田 最近、そういうケースが増えている背景には、オフィスが「家」化してる感じがすごくします。自分の居場所とか、楽しく料理を食べたいとか、もともと家に求めていた居心地を、分けて考えるのではなく、ワークの中にライフを混ぜこぜにしたほうが、どうせ長い時間いるわけだからいいんじゃないかと。その感覚が浸透してきているように感じるんですね。(>>#03に続く)

これまでの記事
#01「ルールとルールの隙間を攻める!?︎」
#02「︎働く拠点はなぜ分散化するのか?」
#03「会社を溶かし空気のような存在に」

profile
伊藤直樹 naoki ito

71年静岡県生まれ。早稲田大学卒業。NIKEのブランディングなどを手がけるワイデンアンドケネディ東京を経て、2011年、未来の体験を社会にインストールするクリエイター集団「PARTY」を設立。サービス&プロダクト、エンターテイメント、ブランディングを軸に活動をおこなう。PARTYのクリエイティブディレクター兼CEOを務める。京都造形芸術大学情報デザイン学科教授、事業構想大学院大学客員教授。成田空港第3ターミナルの空間デザインでは、グッドデザイン賞の金賞を受賞。東京ミッドタウンDesign Touch 2017インスタレーション「でじべじ –Digital Vegetables– by PARTY」の総合演出なども手がける。メディア芸術祭優秀賞、NYワンショー、イギリスD&AD、カンヌ国際クリエイティブ祭、東京コピーライターズクラブなど、受賞歴は250を越える。「クリエイティビティの拡張、領域横断」をテーマに、表現のみならず、新規事業などのビジネスクリエイティブもおこなう。 PARTYでは、クリエイターのコレクティブオフィス「石(イシー)」グループとして、東京にTOKO、鎌倉にSANCIなどを展開中。また、スマイルズ遠山正道氏とアートの民主化を目指すThe Chain Museumを共同事業化している。展覧会に「OMOTE 3D SHASHIN KAN」(2012)、「PARTY そこにいない。展」(2013)など。著作に「伝わるのルール」などがある。作品集に「PARTY」(ggg Books)。(PARTYホームページより引用)