Seasons Letter
#10
森の小屋暮らし
(春編)
築30年の山荘をリノベーションした森の小屋「My Window」。四季折々の日常風景をお施主さん自らがレターにしたため、お届けする連載シリーズ。今回のテーマは“緊急事態宣言時の暮らし”です。
今年はコロナウイルス拡大により、
いつもは混雑する軽井沢のも閑散としていました。
緊急事態宣言を守り
観光や外出をきちんと控える日本人は本当に真面目で
素晴らしい民族だと改めて痛感しました。
私もテレワーク中心となり、ライフスタイルも一変。
公共機関を使用しなくなり、食事会もすべてキャンセル、
まさにステイホームの日々。
ここ山の小屋で過ごす時間がどんどん増え、
気が付くと月の半分以上こちらにいたかもしれません。
とはいえ、徹底的に外出を控えましたので、
滞在中一度だけスーパーへ行き、ほとんど自炊。
持っている食器をいろいろコーディネートしたり
お料理も楽しみました。
ときどきテイクアウトのお弁当も
(御代田町のお店では、町からテイクアウトに
補助金がでるということでワインも3割引してもらえました)。
また、封印していたピアノ(キーボード)を
小屋に運んで弾いてみたり。
都会の暮らしでは、早朝の散歩もマスク必須ですが、
こちらは誰もいない川沿いを犬の散歩をしながら、
好きなだけ深呼吸できます。
空気や光がこんなにも人間にとって大切なものだと
思い知られる時間でした。
GWはほとんどステイホーム。
その後、宣言が解除されてから、
久しぶりに自転車で散策しました。
「キャボットコーブ」へニューイングランドの
朝ごはんを食べに行ったり。
サイクリング時には「森のマスク300円」と
書いた箱を見つけ、そこで手作りのマスクをゲットしたり。
この地域なりにみなさんそれぞれできることを
ステイホーム中にしていたようです。
人類にとっては大変な時期を迎えても、
自然界では変わらずに春が訪れます。
東京では経済活動が停止状態のため、
皮肉なことに東京の空もとてもきれいになりました。
いつもは前のめりで歩いていて気づかない、
街路樹の美しさや街の建築物……
だれもが一時停止を経験して、
見えなかったものに気づいたのではないか、と。
2020年の軽井沢の春は少し遅く感じましたが、
それでも、野草の花々、桜、藤、そして新緑という順番で
いつもの春が到来しました。
初夏を迎える今でも肌寒い夜にはダウンを着ています。
晴れの軽井沢ももちろん好きなのですが、
この梅雨の時期も大好き。
うちの庭には苔が生えていますので、
雨の時期にはますます苔の密度と色合いが
成長して美しい庭が楽しめるんです。
また、開口いっぱいに複雑な色彩を放つ緑が
ここぞとばかりに飛び込む気持ちよさは
この時期特有のもの。
朝はキツツキ、鴬、カッコウ……
昼になるとこの時期はエゾゼミ……
苔の美しさを常に感じることができるかげがえのない生活……
リノベーションによって、自然との距離が近づいて、
ますます小屋暮らしの良さを味わえるようになりました。
これからは都市集中のライフスタイルから
開放される人々がもっと出てくるかもしれません。
いち早く拠点を2つもつ暮らしを始めていて
本当によかったと思います。
spring.2020
過去のレターはこちらから。
森の小屋暮らし #09
森の小屋暮らし #08
森の小屋暮らし #07
森の小屋暮らし #06
森の小屋暮らし #05
森の小屋暮らし #04
森の小屋暮らし #03
森の小屋暮らし #02
森の小屋暮らし #01
DATA
所在地:長野県北佐久郡
竣工:2017年8月
設計:西田司+湯浅友絵
施工:第一建設
規模:木造平屋
建築面積:72.02㎡
延床面積:72.02㎡
竣工時の模様は、こちらよりご覧いただけます。