ボクたちの
“ライフ”と“ワーク”は
どうなるのか?#02
働く場と人材育成
ウエスギ) オンデザインは間もなくオフィスを引っ越すそうですね、すごく楽しみです。
西田) 同じ関内エリア内で移動します。と言っても、まだ既成のオフィスの領域からは抜け出せないと思います。たぶん徐々に変化していくでしょうね。いい機会なんで、僕だけじゃなくてスタッフにも一緒にいろいろ考えてもらっています。実感があると積極的に調べたりするじゃないですか。「働く時間こそ食にこだわりたい」とか、「打ち合わせスペースが充実するといい」とか、「じゃあ、オフィスにでっかいキッチンを付けよう」とか、それはいろいろ模索中です。
さわだ) サテライトで、東京にオフィスをつくる気はありません?
西田) 今のところはないんですけど、YADOKARIの展開はめっちゃ気になります(笑)。
ウエスギ) ところで、西田さんは人材教育みたいなのって、どんな感じでやられているんですか。
西田) おっと、けっこうディープなところをついてきましたね。あと2時間くらい話さないと(笑)。
ウエスギ) いやじつは、このBETTRA STAND 日本橋をやってから、お陰さまで事業も急拡大していて、現在15名くらいのスタッフがいます。つねに試行錯誤中ですが、単純に西田さんは、スタッフをどう統括されているのか知りたいなと。
西田) 僕も試行錯誤中ですよ。オンデザインで、僕がもっている唯一の権限は「人事権」です。一応社長なので(笑) 。人事っていうのは誰を採用するかと、報酬や給与をいくらいにするかと、あと誰をどの仕事に割り当てるかの3つです。これ意外、事務所の運営に関わる仕組みはみんなで考えるっていうやり方です。
例えば設計作業はすべて共同設計ですし、一緒にやっているメンバーと僕のふたりでやる場合もあれば、チームを組んで複数人でやる場合もあります。意思決定や事務所の中での責任はフラットにしています。あとは「パソコン増やしましょう」とか、「模型制作のスペースを広げよう」とか、「打ち合わせのアプリを使おう」とか、月1でバリューアップ会議をしています。また年に1回、全員と面談をやって、その人の一年の仕事内容や、仕事環境の改善点、これからどう働きたいか、この3点について各1時間くらいヒアリングします。
メンバーは20人以上いるのでざっと60時間。僕の冬の仕事のヤマ場はじつはこれです。でも、そうするとめっちゃ良い意見が出てくるんですよ。「飲み会をもっとやったほうがいい」とか、「CGをプレゼンだけでなく検討にも使用したほうがいい」とか。「じつは実家のほうでゆくゆくは街づくりをやりたい」とか、あと「子供ができて時短で働いているけど、週3日は家で仕事できる仕組みがあると仕事効率がいいんじゃないか」とか。そういうのを事務所の新たな価値としてひとつずつ採用していくんです。
ウエスギ) その場でジャッジするんですか。
西田) その場では「なるほどな」っていう感じで、次の全体のバリューアップミーティングのときにさも自分で考えたかのように発言します(笑)
さわだ) 若手スタッフはバリューアップミーティングで、「自分が発言した意見が取り入れられている!」って、ちょっとうれしくなりますよね。
西田) 内容によっては僕が切り出したほうがハレーションは起こりづらい提案もありますね。
ウエスギ) なるほど。
さわだ) 人材育成は今の僕らにとっては、本当に大きなテーマなので、その話、聞けてよかったです。
20%の自由研究
西田) あと最近、取り入れたのが、グーグルでやっている20%を自由時間にできるルール。僕らは自由研究と呼んでいます。1週間の勤務時間の20%までは、仕事として個人の自由に使っていいよというもの。仕事だから、担当案件以外に何をしていても、本人が「これやっています」ということを全体ミーティングで報告してもらえればいいと。
ウエスギ) 進捗はみんなには伝えるわけですね。
西田) そう、「誰々と一緒に今やっています」とシェアすれば良いことにしていて、狙いはそこで生まれるチャンネルがプライベートでは仕事になることで、事務所の新しいネットワークや発見につながると思いはじめました。これが意外に今後大事になるんじゃないかと思っています。
さわだ) 自分発信のコミュニティだから、そこに集まる人もモチベーションがすごく高そうですね。お金うんぬんじゃないところで。
西田) 重要なのは、土日にプライベートでしかできなかったことがやれるようになったり、平日に仕事の一部でやっていいよってなった途端、できることが増えて、かつ名刺を使うようになるんです。
ウエスギ) オンデザインの仕事としてってことだから。
西田) 当然、電話や打ち合わせもオンデザインにきます。そのときに、「なんとかってプロジェクトの〇〇さんです」ってなりますよね。つまり、ネットワークのチャンネルが、結果的に個人じゃなくて、オンデザインの〇〇となるわけです。その関係性のインプットが後々効いてくると思っています。あと打ち合わせも、これまではファミレスでやっていたのが事務所でやれるようになったり。
さわだ) こそこそするわけでもなく。
西田) そうです。今のグーグルのサービスの多くはこの20%ルールから生まれたと言われています。僕は震災復興で石巻2.0を立ち上げたとき、グーグルチームと一緒だったんですけど、彼らはIT系のイトナブっていうプロジェクトをサポートしてくれていました。はじめは20%ルールで石巻に通い、そこから東北TECH道場というプログラミング教育をはじめたり、ポケモンGOで有名になったイングレスを石巻で日本初の実証をしたり、ハッカソンの講師に「Google Chrome」を開発した及川卓也さんなどを連れてきてくれたりしたんです。彼らが講師として石巻の高校生を教えるのですが、めっちゃ豪華なプロジェクトになっています。
ウエスギ) そうだったんですね。
西田) 結果的に新しいコミュニケーションも、新しい産業も石巻から生まれはじめていて、これは何か生まれるって実感しました。
さわだ) グーグルの新たなブランディングにもなっていますね。
西田) なっています。
さわだ) 「そんなことやるだ」っていう。
ウエスギ) 実際に、20%の自由研究をやってみて、実体験として、生産性の加速具合はどうですか。
西田) まだ会社的にも取り入れたばかりなので分からないです。すくなくともインプットの効果はあると思います。それと、仕事が忙しい時にプライベートのことをやっていると「あのスタッフ、なにやっているの?」っていう雰囲気をほかのチームメンバーがもつことがあるじゃないですか。
ウエスギ) ええ。
西田) こっちはクライアントがいる仕事なのに、個人の遊びなのか仕事なのかわからないような業務をコソコソやって、バランスはどうなのかと。もちろんバランスが大事なのですが、両方を仕事にして事務所で認められている状態であれば、明らかにインプットは変わるんじゃないかと思ってます。ただ、生産性みたいなことに寄与しているかどうかは、まだわからないんです。むしろ一時的に下がる気もしていますが、、それでも継続することで人材育成的にも事務所の経験的にもあがるんじゃないかとは思っています。
さわだ) さっきのその面談も含めて、YADOKARIで取り入れさせてもらっていいすか。
ウエスギ) 今後、面談で職場環境や自分のライフスタイルのことなど、きちんと聞くとすごくいろんな話が出てきそうだなと思いました。