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ワークスタイル再考
#02
働く拠点は
なぜ分散化するのか?

text:satoshi miyashita photo:akemi kurosaka illustration:awako hori

 
 
コレクティブオフィスとは?

伊藤 そういえば、この間、鎌倉に古い料亭を買ったんですよ(笑)。潰れた料亭で、土地は、もともと鎌倉幕府の北条家の親戚が住んでいた場所です。

西田 由緒ある土地ですね。

伊藤 「宝戒寺」っていうお寺が持ち主で、第1次世界大戦の頃は、日本海軍の大将が住んでいたとも伺いました。僕らは、その土地の借地権を買ってリノベして、シェアオフィスにしようと。

西田 完成はいつですか?

伊藤 まもなくです。まさに今、スキーマ建築計画の長坂常くんと仕事をしています

西田 そこも、いろいろな人が働ける環境にするんですよね。

伊藤 そうです。だから、もはやPARTYのオフィスではないのかもしれませんね。僕らはよく“コレクティブオフィス”と言っていますが、シェアオフィスだと面識のない人がいるけど、知っている会社のスタッフとか面識のあるフリーランスの方だけが使える空間にしようと。
 例えば、村田製作所、オムロン、任天堂などがある京都って優秀なエンジニアの宝庫でもあるので、僕らとしても京都にオフィスがあったほうがいい。札幌はグラフィックデザインが結構強いし、博多には映像のプロダクションもたくさんあって、東京より安い予算でできます。今後は、そういう分散的な働き方が実現できたらいいなあと思っています。

西田 ご当地のおいしいものを食べて、エリアの得意な分野と協業して、みたいな。

伊藤 そういう組織の在り方を模索しているところです。そして、僕はそれぞれの場所をブランド化していこうと思っています。
 例えば、近場の代々木上原は映画の『ファイト・クラブ』みたいな地下組織のイメージで、工場の倉庫みたいな空間にしようと。鎌倉のほうは誰かの家っていうのがコンセプトなので、「誰々さんち」という、「SANCI」を名にしようと思っています。

西田 ネーミングがめっちゃうまい。北条家の家ですもんね、もともと。

伊藤 ええ。誰々さんちなんで、看板を「北条」って勝手に出そうかなと。

西田 「北条さんち」みたいな。

伊藤 誰も北条家ではないんですけどね(笑)。今後は、家を改装したシェアオフィスを広げていきたくて、博多もそういうスタイルになればいいかなと。

西田 お話を伺っていると、いろんな業界や職域にタッチポイントがありながら、働く場所や役割、関わる人もそれぞれ違うはずなのに、伊藤さんの話は、なぜか同じことのように聞こえてきます。つまり“働く場所”や“働き方”という話と、仕事をアウトプットしていく話が、同じ構造に聞こえたんです。

伊藤 それはやっぱり「いいものつくろう」というための組織論が基本にあるからだと思います。さっき言った離合集散、烏合の衆、細胞分裂みたいなワードで考えていくと、それぞれの分野のエースが一緒に仕事をしていけるような環境づくりを考えなきゃいけないんですよね。そのためにスマートフォンのアプリを活用することで、どこにいても仕事ができる「コレクティブオフィス」という環境を実現していきたいし、「いいものをつくること」を逆算していくと、そうならざるを得ないと思うんです。