ワークスタイル再考
#02
働く拠点は
なぜ分散化するのか?
仕事の多様化とともに、働く場も目まぐるしく変化する昨今。多拠点化するオフィス、家化するオフィス、そして、クルマをオフィスに!? …etc、
前回に引き続き、今回もPARTYの伊藤直樹さんと、オンデザイン西田司さんによる対談をお届けします。
PARTYの職域
西田 今、PARTYのスタッフは何人ぐらいいらっしゃるんですか?
伊藤 東京に25人、ニューヨークに5、6人です。デザイナー、エンジニア、プロデューサー、PR、プランナー、コピーライター、アートディレクターなど、映像系、CG系、グラフィック系といろいろな職種がいます。
西田 それは徐々に増やしていったのですか? それとも最初からある程度、多様な状態でスタートされたのですか?
伊藤 段々とですね。仕事をしていくうちにCGの作成はしていたので、空間のシミュレーションはできるけど、構造的なことや地域との交渉ごととかになると内部にできる人がいませんでしたから。
昨年、ミッドタウンで、「DESIGN TOUCH 2017」っていうイベントに参加して、「でじべじ」という作品展示を芝生のスペースでやらせてもらったんです。そのときも建築家と一緒だったらもっといろんなことできたなって思いました。
西田 PARTYは、YKKAPの「未来窓」や「成田空港第3ターミナル」など、ここ数年、建築と近いところで仕事されるケースが増えていますよね。
伊藤 そうですね。「成田空港第3ターミナル」の仕事は、日建設計の後藤(崇夫)さんという方の依頼で、彼と一緒でなければできていなかった企画ですし、「未来窓」のプロジェクトも建築家の方に入ってもらいっています。
僕自身、グラフィックやデジタルのデザイン業界にはあんまりこだわりがなくて、建築もアートもデザインもすべて好きだから、ある種、平等に関わっていたいんです。ただ、そうなると器用貧乏になりがちなので、やっぱり一緒に組める専門家がいればと思っています。
伊藤 「成田空港第3ターミナル」におけるPARTYの仕事はサイン計画でした。でも、日建設計さんからは「基本設計の段階から一緒に意匠を考えようよ」っていうオファーがあって、そのオファー自体がまず素敵だなあと。
西田 その段階で、インテリアも含めてディテールは最終的にPARTYにお任せしたいっていうことだったんですか。
伊藤 そうです。PARTYが最初に提案したコンセプトが「陸上トラック」だったので、「それならみんなで一緒にピッチに出ましょう!」と。結果、一緒にプランを考えて、コンペに勝ちました。
流れとしては、最初、PARTYがデザインのイメージを3Dに落とし込んで、日建設計さんとの打ち合わせの中で、「こういうふうにトラックを敷いたらいいんじゃないか」ていう映像をお見せしながら進めました。そこから先は、Googleのスケッチなどを使ったり、あとは1日にどれくらい人が行き来して、どう流れていくかっていうシミュレーションをしたり……。サイン計画も、成田空港でずっと関わってきた製作会社に入ってもらい、「お手洗いのサインはここに置いたほうがいいですよ」とか細かいアドバイスをいただきました。
西田 なるほど、社外からもそのプロジェクトに付属していろんな人が入ってくるわけですね。伊藤さんがふだん仕事をされているときのチーム感には、境界線のようなものってあまり感じないんでしょうか。
伊藤 僕は、もともと「ワイデン+ケネディ」というアメリカの広告代理店の東京支社で働いていたので、サンフランシスコとかLAなど、アメリカの西海岸へ行く機会がありました。やっぱり海外の組織デザインを見ていると、例えば、フランク・ゲーリーとかには「勝てねえな」って思うわけです。
フランク・ゲーリーのスタジオって、人材が豊富で、ふだんから100以上のプロジェクトを動かしています。映像製作会社のピクサーも、絵コンテを描く専門家や、着色専門のスタッフが社内にいます。絵コンテだけをずっと描いている人は、アングルの切り方にはやっぱり一日の長があって、例えば僕らPARTYが、それを社内で全部抱えるっていうのはちょっと難しいし、太刀打ちできるわけがありません。
だから、単純に比較にはならないんだけど、やり方としては、フリーの人や他社さんと協業しながら、プロジェクト単位で離合集散を繰り返すような烏合の衆みたいにしていかなきゃという思いがあります。「働き方改革」とか言われていますが、今はそうした細胞分裂がしやすい組織を試行しているところです。