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ワークスタイル再考
#01
ルールとルールの
隙間を攻める!?

text:satoshi miyashita photo:akemi kurosaka illustration:awako hori

 

ビッグデータ、VR、IoTなどの最新技術とストーリーテリングを融合させ、未来の体験をデザインするクリエイティブ集団、PARTY。2011年の起業以来、手がけた数々のクライアントワークは、国内外でも高く評価されてきた。創業メンバーであり、クリエイティブディレクターの伊藤直樹さんは、今も多くのプロジェクトに関わりながら、仮想通貨や会社経営にも興味を寄せているという。
今回のケンチクウンチクは、職種は違えど同じクリエイティブシーンで活躍する、伊藤さんと西田さんの両氏にご登場いただき、昨今、何かと耳にする「働き方」をキーワードにトコトン語り合ってもらった。

 

@PARTY(代官山)

対談場所は、クリエイティブシーンをリードするPARTYの仕事場。

 
イリーガルのギリギリで遊ぶ

西田 以前、「六本木未来大学」での講演の記事を拝見して、伊藤さんの発言から幅広い活動領域が紹介されていました。それを読んでいたら、つねにいろいろな人と横展開しているなあと。「逃走」というキーワードなんかを使われていたのも印象的でした。

伊藤 あれは逃げで考えたんですけどね。

西田 逃げで(笑)。その記事を読んでいて思ったのは、普通、ひとつの業界で仕事をやっていこうと思うと、その業界の中を突き詰めていく人が多いのに、伊藤さんは柔軟ですよね。ブルーオーシャンを移動していって、そこに行くとまた違う人がいるから、こっちへ行くみたいな。やりながらキャリアをステップして、できる幅をどんどん広げていっている感じがします。

伊藤 そう言ってもらえるとうれしいです。

西田 ひとつのもので勝負せずに、他のジャンルに行くのを恐れない感覚というか。どういうきっかけでそういう考え方に至ったのかが知りたくて。

伊藤 きっと僕自身、「ルールとルールの隙間を狙う」のが好きなんですよ。

西田 面白いですね、その表現。

伊藤 子供の頃からそういう不法侵入ギリギリみたいな遊びばかりしてきたので(笑)。たぶん昔からこれ以上行くと警察沙汰になっちゃうなっていうところを攻めるのが好きで、ルールの隙間を突いて、何かをつくり、ルールごと変えていったりという。

伊藤 じつは僕、大学は法学部なんですよ。

西田 えっ、そうなんですか。 

伊藤 だから、そういう意識が強化されちゃったという背景もあると思います。

西田 もともと(法学部を)目指されていたんでしょうか。

伊藤 いえいえ。高校生のときに静岡から東京の池袋近辺に引っ越して来たんですが、周りには単館系の「文芸坐」や「アクトセイゲイ」とか、高田馬場にもいい映画館があって、その影響で当時は映画青年だったんです。なので、大学に入ったら映像をやりたくて手当たり次第に受験したら、たまたま法学部に入っちゃったというわけです。
 だから法律は全然好きじゃなかったんです。やっていくうちに『六法全書』に記されていることって、結局、裁判官の「解釈次第」で、そこに立ち向かうのが弁護士だということが分かってきて。だから彼らはある種、法律を冷静に見ているところがありますよね。
 僕は“常識”と“法律”ってけっこう近いと思っていて、そこには何か不文律のような世の中に漂う“ルール”が存在します。人間はそれに縛られることにより、少し保守的になったり、アクションするのをとどまったりしている。法律を学ぶうちに、そこにものすごい違和感を抱いたんですね。

西田 なるほど。

伊藤 「そこまで法律はえらくないよ」と。勉強しながら気づいたというか。例えば“著作権”って、大学4年生の最後の最後で学ぶんですけど、当時からすごくあやふやで未整備だなと思っていました。

西田 たしかに僕ら建築業界の“著作権”もとても曖昧で、制定されたのもすべての著作権の一番最後ぐらいです。

伊藤 そうですよね。結局、著作権の判例って古い時代に制定されたものなので、現実にそぐわなくなっているんです。最近のドローン法とかも、(2015年にドローンが)首相官邸に落ちて以降、「ドローンを活用しよう」っていう法律と、「規制しよう」っていう法律がセットで出てくるわけです。
 だいたいの法律の制定は、何かをやらかした後に民事裁判で判例が出て、少し改正されていくというような流れです。だから、僕は何か“こと”を起こさなきゃって、つねに思っています。でも、誤解されたくないのは、べつに違法行為がしたいというわけではありません。その手前ギリギリのラインで、リーガルチェックをきちんと受けながら打って出たいということ。
 最近はとくに弁護士と連携する仕事が多くなりました。逐一、弁護士に「これはやばいですか? アウトですか?」とたずねて、「ギリギリ、セーフです」っていう回答を得てから攻めるようにしています。
 例えば、PARTYで開発と運営を手掛けている「VALU」は、いわゆるフィンテックのサービスですけど、金融庁の方や弁護士に事細かな相談をしながらやっています。

VALUのトップページ

伊藤 日々、かなりチャレンジングなことをしていますけど、それがPARTYという会社のミッションだとも思っていて、私たちは、その多くの部分でインターネットの力を借りています。インターネットだとギリギリまで攻めやすいんです。

西田 それは、まだ(インターネットには)未整備の部分が多いから?

伊藤 そうですね。