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新連載! トレンド研究部
#01
「オンラインイベント」

コロナ禍での影響は、新たな生活様式、ニューノーマルを加速させ、私たちの生活にも大きな変化をもたらしています。

そこでオンデザイン1年目のメンバーが、いま気になっているトレンドワードをピックアップ。

実際に体験したことを、対話形式で議論し、そこにある潜在的価値を探りながら、建築・まちづくり・空間特性へと活かせる思考を見出していくのがこの企画の目的です。

第一回目は「オンラインイベント」について探っていきます。

 

今回の参加メンバー

松井勇介(オンデザイン1年目)/水野愛子(同)/大西未紗(同)

今回参加した1年目のメンバー、左から松井くん、水野さん、大西さん。

オンデザイン1年目の3人で、それぞれが参加したオンラインイベントの面白かったところをプレゼンし合い、そこから得られる「気づき」を対談形式で掘り探っていきました。

 

水野さんが参加した
「オンライン宿泊(why kumano)」

水野

オンライン宿泊(why kumano)とは?https://www.whykumano.com/

和歌山県那智勝浦町にあるゲストハウス「WhyKumano Hostel & Cafe Bar」が “旅先での出会い”を擬似体験する「オンライン宿泊」を、2020年4月6日よりスタート。「ごろちゃん」の愛称で親しまれているオーナー後呂 孝哉さんやスタッフMARUさんが進行役となり、館内のライブ案内やゲスト同士の会話をつないでくださるというものです。

水野
わたしは最近、話題になってた「オンライン宿泊」に参加してみました。新聞とかテレビとかでも取り上げられて、気になっていて! コロナで休業中に「オンラインでも宿泊体験できるのでは?」という発想がきっかけとなって、「why kumano」というゲストハウスから始まったイベントらしいです。イベントでは最初、自分たちが実際に部屋を回るように、お店の人がカメラをアイレベルで持って案内してくれて。実際に体験しているみたいにカメラワークや速度とかもちゃんと考えられていました。カメラ視点はラウンジまで移動して、そこで初めて他の参加者にも会える仕組み。そのあとはギャラリービューで乾杯、歓談という流れです。

大西
オンライン宿泊」だけど、宿泊じゃなくて気軽にみんなと触れ合うのがイベントのメインてこと?

水野
そうゆうことです! ゲストハウスでの宿泊で得られる「コミュニケーション」が体験できるというのが、このイベントの売りですね。オンラインでゲストハウスの魅力を伝えるために、一番ポイントになる「ラウンジでの交流」部分が抽出されている感じ。

松井
なるほど。ホテル業者が同じイベントをしようとしても部屋紹介だけになっちゃうけど、ゲストハウスだとそういう旨味を伝えることになるのか。

 

水野
そのとおり! ゲストハウスの良さが体験できました。お店の人からはgoogleマップを使った地域の紹介もあって、「その地域のマグロの水揚量が日本で一番!」とか地元の温泉紹介など、いろいろと案内してくれて。その地域のことは全然知らなかったけど、行きたくなりました。

大西
googleマップを使った地元紹介はオンラインならではで、いいね! 情報をいち早く、しかもダイレクトに伝えることがオンラインの特徴と言えそうだね!

水野
ラウンジには6人で集まっていたけど、参加者も自己紹介のときにZOOMの画面共有機能を使って、みんな知らず知らずのうちに、地元紹介を始めてましたね(笑)

松井
その感覚、どこか実際のラウンジみたいだね。決まりごとは特になく、誰が何を話してもいいような、空間のゆるさはゲストハウスならではだと思うけど、オンラインでもそれを表現できてたんだ。

水野
面白かったのは地元の人もこのイベントに参加していたこと。普通、地元の宿泊施設に泊まりに来ないですよね? コロナの時期でもご近所付合いを忘れない地元愛を感じました。

松井
今までにない交流だね! オンラインという架空の場所を介して地元への愛着が表現できるわけか。“そこ”にいる感覚を得られることが実際に行こうと思うきっかけになりそうだね。
松井
じゃあ、次は松井が参加したオンラインイベントを紹介するね!

 

 

松井くんが参加した
「おうちでパンダ音楽祭」
松井

おうちでパンダ音楽祭とは?https://pandaongakusai.com/

パンダ音楽祭は2012年、上野公園の中にある野外音楽堂(キャパ1212席)でスタート、以来、毎年5月に同じ会場で開催しています。弾き語りを中心とした爆音知らずのフェスで、ベンチシートに座って半日(13時から19時まで)まったりと楽しむことができます。大きな特徴は「飲食物持ち込み自由」で、観客は好きなお弁当やおやつ、おつまみ、お酒などを用意して、食べ飲みしながらピクニック気分で音楽を楽しむことができます。今回はコロナの影響もあり、おうちからオンライン開催となった。

 

松井
僕は「パンダ音楽祭」という音楽イベントに参加してみたよ。毎年開催されている音楽フェスなんだけどコロナの影響で今年はオンライン開催だったんだ。パンダ音楽祭が普通のオンラインコンサート違うのは、本来もっているフェスの空気感を残したいということで、設計事務所がオンライン背景をコーディネートしてイベントの空気感をつくろうとしていたところだと思うな!

水野
なるほど、オンラインのための場所をつくったのは新しい試みですね。オンラインのための場を即興的に作ることは、設計事務所がコロナの時期でもできることとして良い試みだと思う。

松井
司会者もいて、チャットでリクエストされた質問を紹介する時間もあった。そこで曲のリクエストなんかも来てたな。

大西
リクエストタイム、いいね! 普通のフェスじゃまずできないし。ファンにとってもうれしいですよね! 歌っているライブ映像だけだと、ライブDVDを観ているのと変わらないけど、チャットとかみんなで盛り上げる空気感がいいね。

松井
これからは設計事務所がリアルな場だけでなく、オンラインのためのレンタルスペースとかもデザインできるといいね。番組スタジオのセットみたいな場所が街にポツポツ現れたりするのも面白そう。

大西
次は私が参加したイベントを紹介するね!

 

 

大西さんが参加した
「オンライン講演(フェンシング選手)」

大西
 

オンライン講演(フェンシング選手)とは?https://www.airbnb.jp/experiences/1698328

airbnbが展開しているオンライン体験では、ライブ配信で行う少人数制の参加型ビデオセッションや、ホストを務めるエキスパートたちとオンラインで交流し、世界中の人々とつながることができたりします。「オンライン講演(フェンシング選手)」はその一環で、普段なかなか出会うことの少ないエキスパートの選手に画面越しにいろいろなお話を聞くことができます。

 

 

大西
私はairbnbが展開しているオンライン体験のひとつで、「オリンピック選手から学ぶ人生の目標設定」というイベントに参加し、その人がオリンピックを目指したきっかけや転機とかについて聞くことができました。わたしは目的意識を持って参加、というより普段会えない人から話を聞けると思って参加してみました。イベントというよりはオンライン講演会みたいな感じで、参加者との距離感が近く感じるのか、逆に向こうからも質問してくれて、オンラインだからこその距離の近さがあるのかも。

水野
普通の講演会は席が遠くなると質問するのに勇気いりますよね。オンラインだと座席との距離が関係ないから、気まずさとか恥ずかしいという気持ちにもなりにくいのかもね!

松井
登壇者を独り占めできるのがオンラインのいいところだね。それに大西さんが言っていた“目的意識がなくても、ゆるく参加できる”こともオンラインの特徴かもね! 画面をオフにしてラジオ的に聞けたり、イベントの参加の幅が広がるよね!

大西
映画館みたいな「あの席がいいな!」とかもないですよね。音楽ライブでも最前列はちょっと勇気いるし、その点もオンラインの魅力かも。そう考えると講演会とオンラインの相性は良いのかもね。

 

 

3人のプレゼンを聞いての振り返りトーク

「改めてオンラインの魅力とは?リアル空間の価値とは?」

松井
「席の距離感」の話はおもしろいね。オンラインだと真ん中よりちょい前を陣取れる感じする。それと、オンラインだと色々な参加の幅があるからこそ、リアルの場にいきたくなる、実際にその人に会ってみたいといった“参加の動機付け”にもなっているのも発見だったな。

水野
私はパンダ音楽祭の話を聞いて、ライブの空気感はアーティストだけでなく観客も作っていたものだと思いました。オンラインイベントを通して改めてリアル空間の良さを再認識することができました!オンライン宿泊に流れるゆるい空気感も実際に肌身で感じてみたくなりました!

松井
現場の空気感は伝わりづらいけど、情報が限定されているからこそ、伝わりやすくて“リアルの場に行きたくなる好奇心”に繋がってるように感じました。新しいメディアとしての価値も持っているように感じました。

大西
youtubeとかだと一方的に情報を浴びるだけになるけど、オンラインだと一方的に見えて双方が作りあげてるのかも。他にはオンラインだと準備とか必要なくてフットワーク軽く参加できるのがいい点だと思うな。ちなみに「オンライン宿泊」はその後実際に行った時のためにワンドリンクチケットがついてきました。笑 そのチケットが手元にあるとリアルな宿泊もいってみたいと思えますね。

松井
引き続きオンラインの動きが今後どのような動きを見せるのか、自分たちの生活にどのように浸透してくるのか、目を向けて考えていきたいね。

 

トレンド編集部「オンラインイベント編」まとめ

・オンラインには目的意識がなくても耳だけの参加や質問を投げかけることができたりと、参加の幅が多様にあり、気軽に参加できる → イベント開催の幅が広がる

・オンラインイベントで映る画面をデザインする傾向が今後期待できる → 一時的なオンラインのためのイベント会場デザインなど設計の幅が広がる

・オンラインならではの整理された情報公開のあり方がある → 新たなメディアツールとしての可能性があるのではないか

・オンラインをきっかけにリアル空間への興味や関心をつくり出すことができる → リアル空間への動機付けをオンライン上でつくることができる

 


profile

松井勇介(まついゆうすけ
1996年石川県生まれ。2020年金沢工業大学大学院修了。同年オンデザイン入社。

大西未紗(おおにしみさ)
1995年愛媛県生まれ。2020年名古屋市立大学大学院修了。同年オンデザイン入社。

水野愛子(みずのちかこ)
1997年大阪府生まれ。2020年大阪工業大学卒業。同年オンデザイン入社。