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ケンチク探検隊がゆく!
#03 
竣工後の建物を
読み解く

 

現役建築学生とオンデザインの若手が、設定したテーマに沿って展示会や内覧会を観てまわり、建築について考えるシリーズ。第3回のテーマは「竣工後の建物を読み解く」です。今回は建築倉庫ミュージアム主催の企画展「Wandering Wonder –ここが学ぶ場」に行ってきました。

 

@建築倉庫ミュージアム(東京・品川)

(左から)はまもと隊長 、みやのくん 、なかむら隊員

 

探検隊参加メンバー

自己紹介(①好きなクリエイター②お気に入りの場所③初めて読んだ本)
ケンチク学生

みやのくん(① 小林賢太郎 ②家の近くのラーメンバー ③はてしない物語)

ケンチク先輩
 なかむら(①フィンランドのテキスタイルデザイナーさん ②プール(水の中) 窓際のトットちゃん  
隊長はまもと(①恩田陸 ②畳のある部屋 ③はらぺこあおむし
 ) 

 

今回、一緒に探検してくれるケンチク学生は「みやのくん」。もともと就職インターン中の学生でしたが、オンデザインに入社後、最初に任された仕事が今回の展示会に出展するための模型製作。模型は、2015年にオンデザインが設計した「モリウミアス 」です。はたして、どんな展示になったのか。さっそく、先輩のはまもと隊長となかむら隊員は、みやのくんの案内のもと探検をスタート!

 

新人のみやのくん、「モリウミアス 」の展示前にて

 

はまもと
これは、みやのくんがインターン中に担当を任されたはじめてのプロジェクト。分からないことだらけだったと思うけど、何がいちばん大変だった?

みやのくん
このプロジェクトは、すでに竣工している建物を模型で再現するのがテーマなので、ふだんの模型づくりとは違いました。
建っているものを模型化するためには単なる「検討としての模型」ではなくて、それ自体が作品として成り立っている意味性を見出していかなければならない、そう考えました。

なかむら
まず製作するにあたって、何をとっかかりにしたの?

みやのくん
設計の担当者にヒアリングするところからはじめました。
そのヒアリングの中で「既存の旧校舎に対して、手を最小限に加えることで新たな環状の流れを生み出せた」という発言があり、これを伝えることが模型自体を作品として成り立たせる意味なんだと考えました。

なかむら
現地までは距離があるからなかなか建物を見学に行くのも難しいよね。
そのなかで、どうやって模型にしていったの?

みやのくん
与えられたものは、図面一式と竣工写真のみ。図面集は穴があくほど見ました。
実際に何度も読み返していたので、穴があいてしまいましたが……😅
また、モリウミアスの公式ホームページに載っている動画も繰り返し閲覧しました。そうすることで、ようやく模型製作にとりかかれました。

みやのくん
使用する素材やそれを使った理由、既存の構造に対して新しい構造の取り入れ方など、ふだんよりも高解像度で図面を眺め続けられたのは、僕にとっても大きな経験になったと思います。
とにかく参考とする対象が具体的な建物である分、読み取れる情報量が多い。情報の取捨選択が必要とされる点では、通常の模型づくりとは異なる難しさがありました。

はまもと
なかでも、とくに力が入ったのはどこ??

みやのくん
今回の展示テーマだった「学びの場」に対して、ここに来場すること自体が学びになるようにと考え、模型上で「シーン」を表現することに力を入れました。
展示中は、来場者にその場で解説することができません。なので文字情報を思い切って取り入れることにしたんです。
ほかにも視覚的に伝わるようアイコンを作成しました。 

みやのくん
この企画展ではオンデザインとブルースタジオさんだけが、一から模型をつくる必要がありました。つくりながら言葉を使うなどの工夫をすれば、表現しづらい内容も伝わると考えました。

なかむら
実際の建物を模型化することが難しからこそ、表現の仕方には工夫が必要になってくるわけですね

みやのくん
はい、やりたかったことを来場者にわかりやすく伝える必要がありますからね。
あと伝えたい内容をより明確にしていくためには、いくつかの表現を省略しています。

なかむら
えっ、どこを省略したの?

みやのくん
省略したのは3つ。ひとつは、屋根です。屋根を表現すると内部空間が見えなくなってしまうので、屋根を天井から吊るす案を検討しました。しかし、会場との兼ね合いでこれは断念せざるをえませんでした。
別案で、屋根を透明材で表現することも検討したのですが、光の反射によって内部が見えなくなることが懸念されたのでやめました。結果的には屋根を次第に剥がしていくという案になったんです。

みやのくん
2つめは、既存の木構造の着色を省略しています。
モリウミアスは廃校となった小学校を改修した案件なので、既存の小学校をできるだけ尊重した構造となっています。今回、既存と改修を暗に示すため、着彩という工程を模型から省きました。

みやのくん
最後の3つめは、添景の人です。実際のモリウミアスに行くと、森や海と密接に関わった体験が各所で展開されています。
ただ、その体験をしている人の添景を置いても、行為の具体性に欠けると思いました。ならば、その行為に必要な物だけを配置すればよいと考えたんです。