Book Log
#04
オンデザイン読書会
テーマ「アウトプット」
鶴田 「福島県立こころの医療センタープロポ」では、まず「オンデザインだからできる精神病院の提案って何だろう?」という問いからはじめてみました。さっきの西田くんの話とも共通するところがあって、ここもひたすら精神病院のプランを色分けして分析していきましたね。結果的には、それって「空間を家的なスケールで考えられること」なんじゃないかって思いました。
人のスケールに落とし込んで考えてみて、同時に地域の人や街の人が集まる場所のリサーチもやる。それを経ることで、私たちの提案の強みはどこなのか、設計の方向性を決めていくことにもつながる気がしました。
西田 建築は、そこ(リサーチ)の強度で提案が変わりますよね。
伊藤 小屋もカタチは分類できないけど、使い方やニーズの分類はできます。その使い方も変化していくっていうことを「見える化」したのが『都市を科学する』ですよね。結局ただ分類するのではなく、「○と□が合体した小屋があってもいいよね」というようなところへと発展させているのもいいなあと。
西田 提案の軸というか、インプットの積み上げがプロジェクトの価値を高めていて、その先にアウトプットがあるということを再認識できた気がしますね。
チーム力に必要な共通のビションとは?
本質をついたアウトプット「〜っぽい分類」
対象となる商品やサービスのもつ魅力をさまざまな角度から「分類」することで本質に近づいていくという方法。まずすべきは“長所探し”です。原点に立ち戻り、商品を素の状態でみつめてみること。その上で最大の長所を引き出すこと。
櫻井 設計には、最初の段階で描いた明確なビジョンがあり、そこに向かってプロジェクトが進むわけですよね。私は、その途中段階で起こる出来事や関係者から出てきた意見も丁寧に拾い上げて進めていくオンデザインの姿勢も特徴的だと思っています。
伊藤 その時に大事なのはチーム内でのビジョンの共有で、オンデザインはそこが明解ですよね。それができていれば、投げたボールはちゃんと許容される。そこにはインプット(ヒアリングとリサーチ)が関係しているし、その中でのやりとりがひとつの収束点をつくることにつながっているんだと思います。
西田 あとプロジェクトごとにつかんでおくべき「キーワード=言葉」も大事。それがあれば、設計者が増えてもビジョンを共有しやすい。何かを決定する場面で、そのキーワードさえあれば軸はぶれないと思います。例えば、神大で言うと「ポット」「街のような」などの言葉を指し、その言葉がプロジェクトを引っ張っています。それぞれのプロジェクトごとにビジョンを明確にするための「言葉」が、設計段階(企画段階)でちゃんとあるといいですよね。
鶴田 確かに、それがあるとプロジェクトの進行も加速します。
櫻井 設計者と施工者、クライアントも含めてプロジェクトに関わるすべての人が、ビジョンを共有していることが大事!
鶴田 女子高生やギャルたちが、よく「可愛い(かわいい)」っていう言葉を発して共有しあうのも、彼女たちには同じビジョンが見えているから言いたくなるのかもね。
伊藤 おもしろい!(笑)。実際にヒアリングとリサーチを積み重ねて、そのインプットをもとに明確なビジョンを提示することで、ひとつのプロジェクトが一気に進むことってありますよね。
櫻井 最初、設計者とお施主さんの間ではビジョンを描くけど、スケジュールが進んでいくと、当然そこには工務店さんや施工者といった関係者も増えてきます。
西田 その人たちの意見も同じように拾い上げていくことで関わるすべての人が同じビジョンに向かって進んでいる感覚や、同じプロジェクトをやっている全員で一緒につくり上げていく感覚があるのも、オンデザインの特徴なのかもしれないね。
鶴田 そのビジョンのためにチーム編成を変化させながらやっていくのもオンデザインらしさ?
櫻井 確かに進めていく途中でいろんな人がジョインする感じですよね。だとするとチームづくりもオンデザインの得意なポイントのひとつと言っていいのかも。
伊藤 関係者を含めて「チームでやっています!」っていう見せ方がうまいよね。
西田 だからこそ僕たちに求められているのは、それらをオンデザインのアウトプットとして、きちんと収束させていくことだよね。
全員 おー、確かに(笑)。〈了〉