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ゲンバカンズ
#03
現場で働くことの
楽しさを知る

text:haruka nakamura photo:genbakans 
Illustration:haruka nakamura

今回も、下関での新たなゲンバの日々を綴るゲンバカンズ奮闘記をお届けします。
それは「何かやりたい!」という思いから始まったシェアオフィス<スタートアップ拠点>プロジェクト。実際につくっていく過程を、前回の濱本から今回は同じゲンバカンズメンバー、中村が振り返ります。

(※前回の記事は、こちらからご覧いただけます)

 

工事はなんとか着工

工事が進みながらもJOIN083のことを知ってもらい、まちの人たちと関わりながら場を作ることを実践したいということで舞台装置として使用するベンチや机、椅子、(舞台の)壁などの制作や塗装のWSを開くことにしました。

仕事はオンデザイン代表の西田さんに相談したところ「現地に行った方が絶対いいよ」とのことだったので、オープンまでの1ヶ月ほどを下関からのリモートワークに切り替えて、私の第二のおうちのような存在のウズハウスに滞在。

仕事場兼夜帰って来てくつろぐリビングのように使わせていただいていたウズハウスラウンジ 。徹夜で作業して朝日を眺めたり、夜ベランダのソファーで波の音を聞きながらくつろぐのが最高……!

 

いよいよWSの始まり

第1回目のWSは、濱本・中村ペアで前日から下関に乗り込み、チラシを見て応募してくれた学生たち、北尾さんの知り合い、下関市役所の方々など10名ほどで開催しました。

みんなで和気あいあいと作業を進める中、時折風が吹くとせっかくの塗装が汚れたり、部材が飛んでいったりと大変。脚を塗装し、座面の布をタッカーで留めて、最後はビスで固定という作業を繰り返し、結果的に、たくさんの椅子ができあがりました!

椅子作りWSの様子。強風に耐えながらも「大丸」の玄関前で塗装をしたり、インパクトを使ったり…

 

通りがかりの人に「この椅子って売り物なの?」、「このビスの止め方、甘いよ」、「君たち何屋さんなの?」など、開催した場所柄、老若男女さまざまな人たちから話しかけられ注目されていました。

「大丸で今度何かはじまるらしい」という告知効果は十分にあったようです。(ちなみにこの場所は下関市内で最も地価が高い場所だとか)

とくに「まちの人たちからの完成を楽しみにしてます!」という声を直接聞けたことは、とても励みになりました。下関ブルーの椅子が完成し、参加者たちとも仲良くなれたので、すでに達成感を感じていましたが、実際には完成までまだ20%ぐらい……(泣) 。

たくさんの椅子ができあがりました!

WS参加者と現場見学。まだ合板の貼られていない舞台で一般の方が現場に入ることはほとんどありませんが、途中経過をみんなでシェアしようということになり急遽見学会を実施

 

みんなでWSをしていると…

椅子作りWSが終わると2日間だけ横浜に戻り、ふたたび下関へ来るとすぐに怒涛の5日間の舞台装置WSがスタート。

正直始まる前から「本当に5日間で終わるのか」「塗装はまだしもやったことのないパテ処理は私たちにできるのか」という不安ばかりでしたが、それでも現場でなんとかするしかなく……。

まずは、今日この場所で初めて出会ったということで名付けた「出会いのベンチ」からみんなで塗装を開始。

「コロナでほとんど学校に行っていなかったから、久しぶりに楽しかった」という大学生や就職についてで焦っていたところ、北尾さんにこのイベントの話を聞いて参加したという短大生など、建築学科に通う大学4年生たち(ゲンバカンズの濱本の後輩)がさまざまな相談を受けていて、気づけば塗装ワークショップが人生相談所になっていました(笑)。 

結果的には下関の高校生から大学生、舞台女優さんなど多くの方に来ていただきました。
なかでも舞台の小道具なども作っているという女優さんとは、「(舞台を)こんな風に使えたら楽しそう」という話をしたり、「コロナで最近味わっていなかった達成感がある。また遊びに来たい!」と言ってもらえたり、JOIN083のファンも確実に増えたのでは!

そして、こんなふうにふらっとみんなが集まれる場、普段出会わない人たちがごちゃまぜになれる場、そんな場にになればといいな……と思いました。

▲深夜に千代田と2人 パテ処置のサンダーがけ作業。だんだん部屋の中が真っ白になって、自分たちも全身真っ白に

 

「大丸」の店作り担当の岩倉さんも、とくに制作作業の様子を気にかけていただいていました。

WSのあとは夜間作業が待っており、毎晩夜中の3時、4時まで作業することも……。問題だったパテ処理は職人さんに少しレクチャーしていただきなんとか習得。それでも素人がやると、サンダーがけが必要となり、どんどん視界が真っ白になって全身粉だらけに……。ひどい格好で大丸の通用口を出入りしていたので、館内でも有名だったそうです(笑)。

制作作業の後、あまりに疲れたので温泉に入ろうと思い、深夜に人気のない山道を30分ぐらいかけて自転車で向かいました(笑)。


▲塗装WS     白い壁をムラなく塗るのがこんなにも大変なのだと体感した日。

 

下関を思い出せば

「大丸」近くのホームセンターには毎日通っていたので店員さんに間違えらることもしばしば。今思えば、施工期間中は女子とは思えないボロボロの格好で生活をしていました。でも、そんなことも忘れ、パテ処理と白い塗装を終えて、カーテンを取り付けた時は、まるで本物の舞台のようになり、うれしかったです!

光の当たる方向や色の重なり具合で表情が変わるカーテンは、下関のまちをサイクリングしながら、海のまちでの暮らしや自然の色を見ながら決めました。

海とともにある暮らしの様子。ウズハウスの近くを散歩していたら見つけた場所

▲城下町の路地巡り

 

光が重なって海の中のような色合いに。透明感あるものが好きなので個人的にはカーテンがお気に入り

こんなに綺麗にカーテンが取り付いたのに、 まさかの壁が塗り終わらず、再度取り外すことに…

 

椅子作りWSが終わって帰る日は、まだ床面にクリア塗装をしていたのに、塗装WSに来た時にはすでに舞台が立ち上がり、舞台装置も搬入されていました。また、設計していた可動式什器を図面通りに作ってもらったらグラグラしていたので工場で溶接していただいたり……、現場にいると日々めまぐるしくすべてが同時進行でした。

それでも新しいことを習得したり、新たな出会いが生まれたり、作業のご褒美に下関の美味しいものを食べて、綺麗な海を眺めたり……。作業現場はめまぐるしく動いて大変でしたが、一方でそんな日々を楽しんでいました。オンラインではわからなかった現地の雰囲気やそこにいる人たちとの対話、そしてそこから生まれる新しいストーリー。“現場で働くことの楽しさ”を十分に得られた経験でした。

 

次回は、「出来上がった舞台はどうなった……!?」
お楽しみに!

 

 (おまけ) 

「椅子づくりWS」と「舞台装置づくりWS」を経て、ついに舞台完成。そして、実際に使うまでの思い出シーンを水彩で描いてみました。

イラスト/ 中村 遥

 

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profile
中村 遥 haruka nakamura
1993年神奈川県生まれ。横浜在住歴26年。2018年東京理科大学大学院卒業。主に横浜を舞台に社会実験や場づくりWSなどまちに入り込む活動をしながら、小さな什器〜土木スケールの設計など様々なレイヤーを行き来きして設計を行なっている。まちに出て、その場での出会いからものづくりをしていくことを大事にしている。運動が大好きで下関ではサイクリングしたりランニングしながらリサーチと現地での場づくりを担当。

濱本真之(はまもとまさし
1992年兵庫県生まれ。2018年近畿大学大学院修了。同年オンデザイン入社。

佐野敦彦(さのあつひこ
1993年新潟県生まれ。2018年法政大学大学院修了。同年オンデザイン入社。

千代田彩華(ちよだあやか)
1995年大阪府生まれ。2018年神奈川大学卒業。同年オンデザイン入社。