One day
#08
港の人、街の人
ヨ コ ハ マ の ま ち を 彷 徨 う 文 筆 家 ・ 佐 伯 誠 に よ る シ ョ ー ト ス ト ー リ ー 。
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詩集って、みんなはどういうところで読むんだろう?
北村太郎の『港の人』を見つけたのは、
野毛の「天保堂苅部書店」だった。
二軒か三軒、喫茶店をハシゴして、少しずつ読んだ。
「灰色の船体、赤いマストのタグボートが
憂鬱そうに汽笛を鳴らし
港を出ていく」
詩人は、ヨコハマをうろついて
スケッチのように見たものを描いている。
つつましい淡彩の絵。あるいは、とぎれとぎれのバラード。
途中で小雨が降ってきて、ページにシミができた。
ヴィブラム底の靴で、坂道を上がって、
高いところから街を見下ろしたりもして、
一冊を読み終わったころ、たそがれもやって来た。
こういうときは、バーの止まり木にとまって、
ウイスキーをグイッと喉に放り込みたい。
メソメソしない、グズグズしない、
突き放すようなウイスキーにかぎる。
詩集を読んだあとなら、なおのこと。
if you can smell the street, you’ve nothing to loose.
profile
佐伯 誠 makoto saeki
walker+cyclist+文筆家。音楽、映画、文学、アートの分野に造詣が深く、雑誌、ウエブ、広告など、多様な媒体で執筆を行う。「よそ者として無遠慮にヨコハマをうろつくのは、occupied japanの残り香を嗅ぎたいから。この街には、東京が隠蔽してしまったものが残されているから」
松本祥孝 yoshitaka matsumoto
photographer +横浜関内にてmatsumoto coffee roasters 主宰。料理写真、街歩き写真が得意分野。コーヒー焙煎と白黒暗室の奇妙な関係を探索中。コーヒーの出前屋台や出前授業なども行う。横浜野毛ジャズ喫茶ちぐさで日替りマスター隔週金曜日担当中。