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「箱根本箱」を読む
#01
Ondesign is
On Reading

text: akihiro tani, photo: koichi torimura & ondesign

 

2019年2月、オンデザインが「読む時間」をテーマに、研修旅行に出かけました。滞在先は、「本との出会い」「本のある暮らし」をテーマにしたブックホテル「箱根本箱」。建築家たちはどんな「読む時間」を体験し、何を考え、どんな気付きを得たのでしょうか。全3回のレポートは、その風景の紹介からスタートします。

 

本に囲まれて
暮らすように過ごしました。
体験した時間を記録し
「読む時間」を語り合いました。

 

photo: Koichi Torimura

 

「読む時間」を追求する滞在型ワークショップ

箱根本箱は「本との出会い」「本のある暮らし」をテーマにしたブックホテル。 国内外の良書1万2万千冊を集め、館内の様々な場所に、本棚や、「本と一緒に暮らしたくなるような仕掛け」を散りばめています。

研修の目的は、その空間をオンデザインの視点で体験し、紐解き、気付きを共有すること。30人あまりの建築家たちが、箱根本箱のブックディレクションを手がけた染谷拓郎さんや、設計を担当した海法圭さんをはじめとする5人のゲストと意見を交わしながら、「読む時間」を考えました。

ヒントにしたのは、写真家アンドレ・ケルテスによる「読む時間 -ON READING-」。「読む」ことに心を奪われた人々の姿を世界のあちこちで撮り集めた写真集です。

 

ワークショップは、次のような流れで進みました。

    1. 好きな場所で好きな本を読む
    2. 良いと思った「読む時間」を撮る
    3. 「読む時間」はどう素敵なのか、グループで話し合う
    4. 話し合ったことを、全体で共有する

箱根本箱に到着した建築家たちは、玄関から入るなり、リビングの両サイドにある大きな本棚に圧倒された様子。吹き抜けの2階までつながった本棚は、人が入れるスペースもあり、見ているだけで楽しくなってきます。2日目午前中の「04.全体で共有する」までの過ごし方は自由。染谷さんと海法さんから館内の簡単な説明を受け、さっそく「読む時間」の追求が始まります。

photo: Koichi Torimura

 

大きな本棚の読む時間

好きな場所で、好きな姿勢で本を読みます。

本棚の中で。

photo: Koichi Torimura

 

無邪気な格好をしてみたり。

photo: Koichi Torimura

 

階段に腰掛けて。

 
部屋での読む時間

部屋に移動して。

photo: Koichi Torimura

 

ハンモックに揺られてみたり。

photo: Koichi Torimura

 

足湯に浸かってみたり。

 

リビングでの読む時間

リビングに戻ってみると、同じ場所でも違った時間があることに気づきます。

コーヒーを片手に。

photo: Koichi Torimura

 

みんなで違う本を読んだり。

photo: Koichi Torimura

 

一冊を囲んだり。

photo: Koichi Torimura

 

心地よい居眠りも、「読む時間」の一部かも?

 

そんな様子をお互いに撮って、オンライン・コミュニケーションツールの「slack」で、共有します。

いろいろな「読む時間」が蓄積されていきました。

 

夜の「読む時間」

豪華な夕食と、温泉の入浴も挟んで、「読む時間」の探求は続きます。

湯上がりの廊下で。

photo: Koichi Torimura

 

ちょっとした書斎にこもってみたり。

photo: Koichi Torimura

 

もちろん、部屋のベッドの上でも。

photo: Koichi Torimura

 

箱根本箱には、いろいろなところに「本」と「読むスペース」があります。

こうして、初日の夜は更けていきました。

 

「読む時間」を語り合う

翌朝になると、発表に向けてグループの話し合いが進んでいました。

あるグループが話していたのは、「読む時間が生み出すコミュニケーション」について。

「本を読む空間って、“こもる” 場所と、“オープン” な場所があるよね」

「ひとりで集中したい時も、本を通じて人と話したいこともあるのかな」

「確かに。私がソファのところで写真集を広げていたら、みんなが面白がって集まってきて」

「『目の前の人が楽しそうに読んでいるから、その本への興味が湧いてくる』ということも、『読んでいる本が見えたから、その人に興味が湧いて話しかける』ということもあるよね」

「建築からはどうやって、そういう風景をつくることができるのだろう?」

誰かが体験を言語化すると、誰かが気付きを重ね、また新たな問いが生まれます。

そんな豊かな話し合いの時間が、あちらこちらで繰り広げられ、全体共有の準備が整いました。

#02:「本との出会いから味わうまでを考える」につづく)

 

【Guest Profile】

染谷拓郎:日本出版販売株式会社リノベーション推進部 / YOURS BOOK STORE プランニング・ディレクター。書店のリノベーションなどを通じた「本を使った場づくり」に取り組み、「箱根本箱」ではブックディレクションを手がけた。
海法圭:建築家。海法圭建築設計事務所代表。「箱根本箱」の設計を担当した。1982年生まれ。2007年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。2010年海法圭建築設計事務所設立。
古田秘馬:株式会社umari代表。東京・丸の内「丸の内朝大学」や農業実験レストラン「六本木農園」など、数多くの地域プロデュース・企業ブランディングなどを手がけ、都市と地域、世代を繋ぐ仕組みづくりを行う。
  山本桂司:ながと物産合同会社 COO / 販売戦略プロデューサー
  原田佳南子:UDON HOUSE共同経営 / 支配人

【関連サイト】
「箱根本箱」を読む#02 本との出会いから味わうまでを考える
「箱根本箱」を読む#03 本との関係を都市で応用するには?
箱根本箱
読む時間 -ON READING-