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Book Log
#04
オンデザイン読書会
テーマ「アウトプット」

text:aya sakurai  photo:ondesign

オンデザインの若手4人組による読書会。入社4年目を迎える私たちが、
各自担当しているプロジェクトやそのプロセスを振り返りながら、
今回は、「アウトプット」という観点で考えてみます。

📚

【読書会参加メンバー】 
鶴田 爽/伊藤彩良/西田幸平/櫻井 彩

 

左から、櫻井さん、伊藤さん、西田くん、鶴田さん

@水谷基地(横浜・弘明寺)

📖 今回、選んだ本

アウトプットのスイッチ
水野 学  著(朝日新聞出版)

(本書の内容紹介)
「ヒット」を生み出すためには、コンセプト、デザイン、ネーミングだけでは足りない。それはアウトプット=最終的に表現したものの質が最重要である。日本を代表するクリエイティブディレクター水野 学氏が明かす、自分が関わるプロジェクトを事例に話す、今すぐ役立つクリエイティブ思考と仕事術の話。

(本書を選んだ理由)
建築の仕事において、つねに求められるのが「アウトプット」。現在、関わっているプロジェクトでは、みんなどんな問題意識をもっているか。どんな(建築の)可能性を引き出そうとして、その提案(アウトプット)をしたのか。アウトプット(カタチとして出来上がる)までの過程で考えていること、感じていることを議論し、今、私たちがやっている仕事をもう少し深掘り(言語化)できないか。そう考えてこの本をテーマにすることにしました。

 

良質なアウトプットはインプット(ヒアリングとリサーチ)から

櫻井 まず、話のきっかけとしてなんですが、この本の中で「アウトプット」とは、以下のように定義されていました。

A.「品質」「価値」「デザイン」「パッケージ」「広告」といった意識的なアウトプット
私たちが普段意識しているアウトプット

B.発信する人や会社が内包している無意識のアウトプット
背景にあるもの、内包しているもの

目立たなかった長所の再発見

「日本の魅力の発信」「公園の魅力」を付け加えることで、より東京ミッドタウンの本質に近い良質なアウトプットになると考えたのです。人の長所が1つでないように、モノやサービスの長所も1つではありません。「やさしいところが長所」と思われていた人が、「いざという時は芯が強い」別の長所を持っていることもあります。その2つが組み合わさってその人の本質に近づきます。

櫻井 私たちの場合、住宅のプレゼンだと最初にやるヒアリングの時間がとても大事だと感じます。基本的なアンケートはもちろんのこと、お施主さんが会話の中で何気なく発した言葉にこそ思い描くライフスタイルがリアルに見えてくるような。そして、その少し先にボールを投げるのが、私たちの仕事なのかなと思います。だからヒアリングから見えることって重要ですよね。みんなは各プロジェクトで大事にしているインプットのポイントってありますか?

〈神奈川大学国際学生寮計画〉(2019年竣工予定) 200人の学生が集まって暮らす学生寮の計画。学生の生活の場となる4層吹き抜けの共有部に、“ポット”と名付けた小さな単位の場を階段動線上に用意している。それらが複数あることで、選択性があり、多中心で求心性のある人の集まる環境となる。誰のものでもあるけど、自分のものでもある“まちのような”環境の中で、学生同士の自発的な文化交流や学びの体験が生活風景として現れることを目指したプロジェクト。

西田 例えば僕の場合だと、関わっているプロジェクトが「神奈川大学国際学生寮計画(以下:神大)」になるからお施主さんは神奈川大学です。個人住宅と違って住む人が明確ではないので、最初のリサーチなどアプローチの仕方が少し異なります。
 リサーチでは、国内外の様々な「寮」を調べながら共有部と専有部を色分けします。そうすると共通する部分や、その寮だけの特殊な部分が自ずと見えてきます。僕らは共通のポイントは活かしながら、少しだけ置き換えて提案するので、リサーチがプロジェクトを計画する上での指標みたいなものになっていくと思ってやっていました。今振り返ってみても、このプロジェクトにおけるリサーチのポイントは、お施主さんが明確じゃないからこそ「広いリサーチからはじめる」というところだったんだと思います。
 じつはこの「広い目線でのリサーチ」は、住宅案件の時もやるべきだなと思いました。ヒアリングでは、お施主さんがどんな暮らしをしているのか拾い上げ、リサーチでは、現在ある建築の中でコンセプトが似ているものを調べます。そして、まだ見えていなかったポイントを発見し、それが建築計画の話へとつながればいい。つまり、そうすることで住みやすさだけではない、少し先の新しい提案が、お施主さんにできるのではないかと思っています

〈コミュニティボールパーク構想〉市民の野球ばなれかが進む中、改めて野球かがもつエンターテイメント性を再評価し、横浜の新たな賑わいをつくるものとして、新たなファンを 増やすことはもちろん、これまでにない市民の日常と野球とのつながり方を提案することを 目的としたプロジェクト。

鶴田 コミュニティボールパーク構想でも同じことが言えるような気がしますね。これまであった良いところを引き上げて、それを別の場所に落とし込むという手法は、落とし込む時に、横浜スタジアムだからこそできる「やり方」に変えながら、ちょっとずつできることからやっていくようにしています。

〈小屋プロジェクト〉自分の身の回りのサイズから、カスタマイズし続けられる小屋とその暮らしの価値を提案しているプロジェクト。

伊藤 私が関わっている「小屋プロジェクト」も同じ。お施主さんから「木材を活かした小屋を一緒につくりたい」っていう依頼ではじまったプロジェクトで、求められているのは「ありそうでなかったもの」。
 「小屋にはニーズがある」という“根拠”が必要だったので、YADOKARIさんにも協力してもらい、ありとあらゆる小屋をリサーチしました。「小屋が欲しい」というよりは「こういう暮らしがしたいから小屋がある」という観点で、自分たちの中で「小屋とは何か?」の再解釈をしています。

西田 そのプロジェクトから、BEYOND ARCHITECTUREにある『都市を科学する』の価値も一気に見えた気がします。なんとなくリサーチしているだけじゃなくて「表や数値にしてまとめる」=「定量化して見ていく」ことで、リサーチに厚みが出ますよね。

櫻井 なんだか最初に西田くんが話してくれた、神大のリサーチの件につながりそうですね。