ゲンバカンズ
#01
動きはじめた
4人の同期たち
自分たちが何気なく暮らしているまちが、新型コロナウイルスによる環境変化によって内へ内へと閉じていく時代に、それを逆手に「何か新しいことをはじめてやろう!」という気概をもった人たちがいる。そんな人たちを見て、「僕も何かやりたい!」と、ただ実直に思ったことが、このプロジェクトのはじまりだった。今回は、ゲンバカンズ結成間もない1年半前、あるコンペに応募した日々の「現場感」を、メンバーである私、佐野が振り返ります。
(※「ゲンバカンズ」についての詳細は、こちらから)
すべては何気なく
見つけたサイトから
「何かネタが転がっていないかな……?」
休日に何げなくサイトを物色していた時に見つけたのが、現在まで一緒にお仕事をさせていただいている「Join083」(ジョインゼロハチサン)のコンペティション実施を知らせるサイトでした。
オンラインを主体とした、これまでにない共創施設の実施設計コンペティションであったこと、また個人的にも誰かと一緒に働く価値について考えることに興味があり、サイトを見て参加しようと心に決めました。
ですが、ふと自分自身をかえりみれば、新しいことをすぐにはじめられるほどフットワークの軽い人間ではなかったことに気付き、結局その日は一日中コンペの参加について、ひとりウダウダと考えこむことに……(苦笑)。
夜になっても答えは出せなかったのですが、なんとなく後押ししてくれる人が周りにいないものかと考えたところ、「どうせなら同期の仲間で結成した“ゲンバカンズ”(濱本、千代田、中村、佐野)に相談して巻き込んでしまおう!」という結論に至りました。
翌朝出社して、さっそくメンバーに相談すると、全員から即OKの返事。「取りあえずやってみよう!」がモットーのゲンバカンズらしく、今回も「面白そうだから」という理由だけで話に乗ってくれました。
そうなれば、ことはスルスルと動き出し、いつの間にかコンペの参加も正式に決定。いったい僕は何に悩んでいたのかというくらい、ポジティブな同期たちには本当に助けられました。
ZOOMを活用しながら、
終わらない深夜の熱論
でも、コンペ参加がいざ決まってからが、まさに怒涛の日々(涙)。
期日はスタートから課題提出までの2週間という短期制作が求められました。もちろんオンデザインの通常業務をこなしながら、ゲンバカンズの活動は自由研究枠を使っての作業。なので、コンペの検討・作成は、ほぼ深夜になってからはじめることになります。
ちょうど緊急事態宣言もあって、事務所で一緒に作業するのが難しい状況となり、毎晩のようにZOOMを活用しての会議が開かれました。
今でこそZOOMによる打ち合わせは当たり前のように社会に浸透し、個人的にも仕事だけでなく飲み会やふだん会えない遠方の知人と会話したり、様々な用途で活用しています。
でも、コンペ参加が決まった一年半くらい前までは、「オンライン化」について、まだまだ掘り下げ中の段階だったように思います。それぞれの場所で電波環境が整っていないこともあって、誰かが唐突にZOOMの会議から落ちたり、話しだすと途切れたり、対面じゃないから勝手に寝落ちしたり……。
僕たちゲンバカンズは同期ということもあり、そうしたさまざまなハプニングに見舞われながらも、つねに対面に近い感覚で着々とコンペについての検討ができていたと思います。
ZOOM会議では、まるで聞きかじったようなメディアの話題やコンテンツの最新情報、また、ときにコンペに関わることやそうでないことまで……、日常の何気ない会話も含めて、ふだん同じ職場にいながらお互い取り組んでいる分野が少し違う同期にとっては、非常に楽しく貴重な時間だったと思います。
なにより、深夜に熱く語り合いながら作業するって、なんだか漫画の主人公たちみたいでいいなと(笑)。
(こうやって厨二病とか意識高い系とかって、できるんでしょうかね……)。
ホッとしたのも束の間、
またも難関が……
期日内の課題提出が無事に終わり、一息つきながら「コンペ、どうだろうね」「少しゆっくり寝れるかね」などと話してから2、3日。
さっそく一次審査通過の知らせと二次審査の案内が事務局から届きました。その内容は公開審査会まで、残り5日というもの。
一次通過にホッとしたのも束の間、さっそく二次審査に向けての会議がリスタートされました。
二次審査に向けたプレゼンシートの検討・作成作業は、前回とはうって変わって大揉めでした。
プレゼンテーションの時間として与えられるのは1チームにつき3分間。一般的なプレゼンよりもかなり短い設定です。これだと内容の書かれたシートをただ並べるだけでは圧倒的に時間が足りず、おそらく主要なことを伝えるしかできないだろうと思いました。
「どの要素を切り取るか」「どう伝えるか」などをメンバー同士、トコトン話し合う中で、個人的には、もちろん勝ちに行きたい気持ちも強くありましたが、それよりも伝わらないことの怖さのほうが大きかったように思います。
(これは建築だけに限らず、僕自身、これまで様々な場面で感じていたことなのですが、ほかの同期メンバーはどうだったんだろう?)
同期について、
あらためて感じたこと
そして、いよいよコンペの二次審査となる公開審査会当日。
参加チームは、関西で活躍されている方々ばかりで、関東勢はゲンバカンズの1チームだけという完全アウェイ。発表順は後ろから2番目で、良くも悪くも目立つポジションになりました。
ゲンバカンズの発表は、メンバーを代表して千代田さんが行いました。彼女のキャラ(社内では森の妖精と言われている⁉︎)もあいまって、審査員や下関市長、聴講者の方々のハートをガシッとわしづかみに。
千代田さんの建築というジャンルを飛び越えたプレゼンテーション力には、只々感心させられました。
そして結果は、大変名誉なことに我がゲンバカンズの案を選定していただくことに。
思い返せば今までこうした勝負事に対して、同期4人で一緒に取り組んだことはありませんでした。オンデザインに入社して2年半となり、今回、働きながら蓄えてきたそれぞれの“地力”を発揮できたことは良かったなぁと思いました。
例えば、濱本くんは施工的部分からの鋭い切り口や、与えられた要件に対する切り口だったり、
千代田さんは発表する機会がダントツに多いので、その積み重ねと、まちへの開き方だったり、
中村さんはヒューマンスケールによる居場所の構成についてと、そこに込める利用者の実感性だったり……。
僕としては、「まだまだ同期から学べるところがたくさんある」と、あらためて思い知らされる貴重な時間でもありました。
(余談ですが、コンペ終わりの打ち上げは4人で2000円のパフェを堪能。ひときわ美味しく感じられたのは言うまでもありません)
「JOIN083」のYouTubeチャンネルにて最優秀作品受賞インタビューをしていただきました。
>>「JOIN083オフィシャルサイト」は、こちら。
次回のゲンバカンズは、「はじめての下関」編です。お楽しみに!
ゲンバカンズ
> instagram
> genbakans@gmail.com
profile |
佐野敦彦 astuhiko sano1993年新潟県生まれ、神奈川育ち。2018年法政大学大学院卒業後、同年オンデザイン。みち勉強会所属。ツリーハウスや小さな壁面緑化の素材や技術、環境をかき集め、横断しながら設計を担当。ゲンバカンズではいろいろなものやコトを現場にして活動していくなかでの技術屋担当。 |
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濱本真之(はまもとまさし)
1992年兵庫県生まれ。2018年近畿大学大学院修了。同年オンデザイン入社。
中村遥(なかむらはるか)
1993年神奈川県生まれ。2018年東京理科大学大学院修了。同年オンデザイン入社。
千代田彩華(ちよだあやか)
1995年大阪府生まれ。2018年神奈川大学卒業。同年オンデザイン入社。