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万博を歩く
#02
かろやかな建築群

text :mayu takahashi photo:beyond architecture

 

2005年の「愛・地球博」以来20年ぶり、また大阪開催は1970年の「日本万博博覧会」(大阪万博)に続いて2回目という「大阪・関西万博 EXPO2025」。大屋根リングをはじめ、著名建築家によるパビリオンも話題となり、連日多くの来場者で賑わいをみせています。前回に引き続き、編集部員が会場を訪れ、見て聞いて感じたことをレポートしていきます! 今回のテーマは「かろやかな建築群」です。 

 

reporter profile
髙橋真由 mayu takahashi

季節やその日の出来事など一過性の物事を受け止め、混ざり合い、時々の空気を作っていく様なやわらかなものをつくっていきたいです。日々の暮らしからの発見を大切に、どんなこともピュアな気持ちで楽みたいと思っています。

1997年 新潟県生まれ
2022年 オンデザイン/BEYOND ARCHITECTURE


仮設建築ならではの“かろやかさ”

仮設建築のおもしろさは、その場その時に生まれる「即興性」にあると思います。土地の素材に限らず、手に入りやすいものを使ったり、地域の人たちが慣れた工法で形づくったりすることで、建築と呼ぶには少し未完成で、けれどその土地柄が表面化された魅力的な姿が立ち現れます。

万博の場合は、すぐに立ち上がる即興とは違い、長い準備や計画の時間を経て形にはなります。そして、各国がその土地にしかない風土の中で醸されてきた文化が一堂に仮設的に表現されます。そんなふだんの建築ではできない、ちょっと建築からはみ出した「建築未満」の姿。ぷかぷか、ふわふわ、キラキラと存在するその建築群から、万博で心に残ったのは、たった184日間という限られた命をもつ仮設建築たちが見せてくれた、“かろやか”な美しさでした。
さっそく膜やファブリック、仮設ならではのゆるい建材をまとい佇む姿をお届けします!

休憩所1/o+h 屋根に注目されがちですが、ささやに参加するペットボトルのアップサイクル照明もかわいいです

とっても楽しみにしていたo+h 設計の休憩所1。屋根はファブリックで仕上げられ、ふわふわと風に揺れています。
生き物のようなひと屋根の中に来場者がすっぽりと包まれている光景は、人々をふんわり食べてしまっているようです。 

この日は気温が30度を超えていましたが、屋根の下は涼しく、ゆらめく屋根越しに風を感じられてとても心地よく過ごせました。訪れた人々がゆったりとした時間を楽しんでいる様子が印象的でした。

 

休憩所2/工藤浩平建築設計事務所 大屋根リングからこの休憩所を眺めると遺跡のようにゴロゴロと石が転がっているように見えます。おすすめ!

休憩所2。夢洲周辺で切り出された花こう石をふんわりともち上げる屋根。重量を感じさせる石を軽々と浮かすその姿は、石を有機的に見せ、訪れた人と対等な存在にしているように見えます。

この休憩所に限らず、個性豊かな建築群を受け止める背景として、大屋根リングの役割は際立っていました。

 

ポルトガル館/隈研吾建築都市設計事務所 「海」をコンセプトにしたパビリオン。大航海時代の帆船の重要な道具のひとつであったロープが取りまきます

ポルトガル館。ロープで構成された奥行きある外壁に、訪れた大人も子どもも思わず手を伸ばし触れているのが印象的でした。年齢を問わず “触れたくなる” 建築はなかなかありません。どこか遊具のような親しみある佇まいです。

近くで見ると手で触れられるほど細やかな質感が感じられ、遠くからはしっかりとした重みが立ち現れる。まさに仮設建築ならではの、かろやかで豊かな表情の往復は、万博全体を通しても印象的でした。

 

国ごとの個性が一堂に眺められます。アメリカ館のギラギラと、フィリピン館の織物のナチュラルな雰囲気が隣り合います

大屋根リングに登って眺める各国のパビルオン。仮設ならではの資材を使った、かろやかな建築群も遠景で見ると建築の物的強さを感じます。
会期が終わったら無くなってしまうなんて、信じられないです……。

 

編集後記

会期が終われば形を変え、あっという間に姿を消してしまう建築たち。

仮設建築だからこそ、会場を行き交う人やリングの周りで移ろう環境、その土地ならではの空気が混ざり合う姿は、会場の熱気も相まってある種即興的に生まれる「祭り」のような風景をつくり出していました。

一瞬のきらめきにすべてを注ぎ込んだ仮設建築たちは、儚くも力強く、記憶に残りました。
あと5回は行かないと味わいきれないですね!笑

こみゃくがかわいく彩る万博会場、楽しかったな〜(これは顔はめパネルではないです)