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トイレは、文化だ。
#02
こんなトイレが
ありますよ

text & photo & illustration : emiko murakami

このビルをつくったのはどんな人?

profile
Antonin Raymond アントニン・レーモンド

チェコ出身の建築家。1888年生まれで、享年88歳。今回のビル以外にも日本全国で設計を行っており、銀座界隈では松阪屋やYAMAHAホールがあります。教文館・聖書館ビルは、銀座界隈では唯一、今に至るまで建て替えられずに使われ続けています。

アントニン・レーモンドは、ヨーロッパに生まれ育ち、アメリカで建築家フランク・ロイド・ライトの下で設計を学び独立しました。その後、日本に暮らし、さまざまな建築を設計。まったく異なる文化圏に身を置き、独自の建築理念を形成していった人でした。

また彼は「建築は力強くなければならない」として、設計の5原則を打ち出しました。

・直裁性……クライアント(建主)からの抽象的な要求を目的空間として構成し、機能を最重要視すること
・単純性……虚飾を排し、無駄、無意味な空間を造らず、これ以上削ぐものがない状態まで簡素に徹する心
・経済性……費用を無駄なく有効に使いながら、贅肉をつけない端正な仕上がりを心がけ、完成後の維持・管理費等のライフサイクルコストに十分配慮する必要性
・自然主義……資材はできる限り自然の素材を使い、既存の樹木や敷地形状などの周辺の環境を保持するためにも、自然を損なわずに活用する姿勢
・民主的な建築……建築は個性的、人間的でなければならないという根本的原則

【参考文献】
教文館創業130年記念 『日本近代建築の父 アントニン・レーモンドを知っていますか』
(発行:教文館)

アントニンは「最も簡潔にして直裁、機能的にして経済的、かつ自然なるもののみが真に完全なる美を有するものである」と考えていたそうです。

いかがでしたか?
教文館・聖書館ビルへ行く際は、ぜひエレベーターを使わずに階段で上がってみてください。
この場所の本当の魅力は、実際に訪れて体感してみないと分からないかもしれません。
ちなみに4階の「Caféきょうぶんかん」では銀座3丁目の交差点が一望できて、ちょっとした穴場です。

DATA
名称:教文館・聖書館ビル
所在地:東京都中央区銀座4丁目
規模:地上9階、地下2階
竣工:1933年
特色:本来、2つの建物である教文館ビルと聖書館ビルがエントランスホールや階段室を共有し、一体化するように建てられている。

>ライタープロフィール
村上恵美子 emiko murakami
大阪生まれ。福岡育ち。横浜在住。 名古屋市立大学 芸術工学部 卒業。ギャラリースタッフ、NPO法人、大学の非常勤職員、出版社勤務を経て、Beyond Architecture ライター。自称TOILET HUNTERとして、めくるめくトイレの世界を思案中の日々。

 

連載シリーズ「トイレは、文化だ。」、さて次回は何処へ。お楽しみに!