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プレイスメイキングキット
@弥生台TRY BOX

text : akiko nishioeda(ondesign) photo:jumpei kikuchi(Open A) & ondesign

PUBLICWARE×BEYOND ARCHITECTURE 共同連載 vol.3 

勝亦丸山建築計画による場づくりのためのツール「PMK(プレイスメイキングキット)」とオンデザインの手掛ける「弥生台TRY BOX」のコラボレーションを機に始まった「PUBLICWARE」(運営:OpenA/公共R不動産)とのメディア横断企画。
弥生台TRYBOXとは、本連載のvol.2でお伝えした「みなまきTRY STAND」の好調を受け、同様のスキームで実験的に設置されることになった地域のチャレンジスポット。今回は、勝亦丸山建築計画、オンデザイン、PUBLICWAREのメンバーによる対談を弥生台TRY BOXにて実施しました。まずはコラボの始まりから設計・制作までの過程を振り返ります。

 

@弥生台

 

———————対談メンバー ———————

勝亦 優祐(勝亦丸山建築計画)

丸山 裕貴(勝亦丸山建築計画)
西大條 晶子(オンデザインパートナーズ)
大西 未紗(オンデザインパートナーズ)
菊地 純平(PUBLICWARE/Open A)

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みなまきでの学びを弥生台へ

菊地 「弥生台TRY BOX」の設置にあたって、PMKはどのようにここへの導入に至ったのでしょうか。

西大條 弥生台のお話をいただいたとき最初に考えたことは「いかに貸室にさせないか」ということでした。路面でカウンター形式の「みなまきTRY STAND」(以下、みなまき)と違って、弥生台は商業施設2階の1テナントというやや閉じた空間です。そのため一回一回の利用者さんの使用にとどめることなくエリアマネジメント拠点として機能させていくには、なにか工夫が必要だと思っていました。
一方、先行する「みなまき」では、空間の制限と自由度の高い屋台というツールの組み合わせがオーナーさんの創造性を刺激していて、結果オーナーさんの個性が形となって空間や店頭に現れ出ることを実感していました。
それで、弥生台でも内部をカスタマイズしやすくすることで、みなまきと同様にここでの活動をよりオープンな形にしていけるのではと思ったんです。
そんなときに思い出したわけです、 はっ! アレだ! と……。

一同 アレ だと!(笑)。

西大條 5年前、小田原の商店街イベントでPMKが初めて使用された際、私もお邪魔していたんですよね。それでPMKは今回の件にぴったりだと思って、わくわくしながらカツマル(勝亦丸山建築計画)さんに連絡しました。

「アレだ!」と当時のことを語る筆者

 

菊地 オンデザインからは、カツマルさんに対して実際にはどんなオーダーをされたのですか?

西大條 「みなまき」で屋台がどんな使われ方をしているかは話していましたよね。

勝亦 そうですね。あと具体的な「これをいくつ」みたいなメモもいただいてました。けっこうあのメモを見ながら作っていました。かなり実用での経験値がたまっていることが感じられるオーダーでしたね。

西大條 「〜になるもの を◯個」 というオーダーをしていたかと思いますね。もし、PMKの使用が何らかの理由で難しいとなった場合、既製品を組み合わせて使うというようなことができないかと考えていて、例えば「テーブル」や「いす」そのものを置くのではなく、それらの「部材になり得るもの」を置くことで利用者にテーブルやいすなどに仕立ててもらい、空間をカスタマイズする感覚だったり、その人なりの使い方だったりを可能にしようと考えていました。なので、PMKもテーブルやいすというオーダーではなく、「テーブルになるもの」「いすになるもの」というような、いろんなものに変身できるものがいいと言っていました。

菊地 先の「部材になり得るもの」の例として当時のメモで挙げられているワイヤーメッシュやホワイトボードは、PMKでも有孔ボードやホワイトボードシートが貼られた天板として実現していますね。

西大條 スタンド形式の「みなまき」と、室内型の「弥生台」で、利用のされ方の区別ができるといいなと思っていて、みなまきではなかなか難しいギャラリーや講習会的な利用が、弥生台ではできるようになるといいなというところから、有孔ボードやホワイトボードのような展示やレクチャーがしやすい設えを希望していたのですよね。

PMKを組み立てた様子。ホワイトボードや有孔ボードを貼った板は、立てて使用することも、テーブル天板として使用することもできる。

 

勝亦 全部PMKで応えようと思って設計していました。

菊地 屋台が2台あることやフックが取り付けられているところも、みなまきの屋台を継承しているのですか?

西大條 そうですね。みなまきの屋台の使われ方を見ていて、「とにかく引っ掛けることができるようにしてほしい!」ってしきりに言ってました(笑)。

打ち合わせを経て改良された、屋台のスケッチ

 

紙管×エマーフ の設計術

菊地 例えば屋台に関して言うと、初号のPMKから他にどんなところが進化しているのでしょうか? 台座部分が以前のボックス型から今回は平面になったのは、なにか理由があるのですか?

勝亦 今回は屋台に立つ人の背景になるものを取り付けられるようにしたり、台の部分に関しても表と裏を作ることで下の部分に屋台に立つ人が使う備品などを置けるような設計にしました。台は構造的にも平面でいけたしRにすることで円柱の紙管とマッチしてプロダクトっぽくなったかと思います。

丸山 初号は作り方がほんとアナログでしたからね。ふたりで作業して1週間くらい。しかも最後は徹夜で制作したんですよ。紙管と材を留める位置出しから一つ一つ精度が求められる作業だったけど、今回はそういった工程がエマーフ(※) で「はめる」ということのみに集約されて、サクサク作れたのはよかったです。

勝亦 紙管とエマーフの相性がすごくよくて、エマーフによって丸い溝を正確に彫れるようになったことで、紙管を板材にスポッとはめる組み立てができるようになったし、できあがったときに水平垂直もある程度保てる。説明書がなくてもなんとなく組み立て方がわかったり、さっき話したようなRをメインにしてプロダクトっぽい形状に仕上げるといったことは今回、エマーフだからこそ可能になる点として意識しながら設計していました。

エマーフの木材加工工場にて。溝の深さなどを確認

※エマーフ:VUILD株式会社による木製ものづくりのクラウドサービス。オンライン入稿したデータをもとにデジタル加工機器でカッティングされた木材が発注者のもとに届く。

 

菊地 材料も初号より減っている?

勝亦 減ってますね。安定を保ちながら材料を減らすことができたと思います。この家具の量の割には価格も安く抑えられたと思いますね。紙管ってめっちゃ安いんですよ。

西大條 作りながらわかったことや、何か発見ってありましたか? エマーフを使っての制作は初めてということでしたがいかがでしたか?

勝亦 ヤスリがけが大変でしたね。VUILDの工場には専門のバイトさんがいてひたすらヤスリで擦ってるんですよ。

西大條 納品されてからここでもやってましたね。材にもよるのかな。

菊地 紙管はさすがに別で切ったのですか。

勝亦 紙管は紙管工場で切ってもらったものを納品してもらいました。

丸山 紙管を手動で切断は面倒ですよ。思い出したくない……!

西大條 紙管の長さもそんなにパターンなかったですよね。

勝亦 できるだけ長さを揃えるように設計しました。

丸山 紙管の長さを変えても切断にかかる費用は変わらないのですが、現場で間違えないように、ですね。

今回のPMKの全パーツ。手前が木材(エマーフにてカッティング & 溝を掘る加工済み)、奥が紙管

 

いよいよ組み立て!

菊地 組み立て系のプロダクトは重量のコントロールも大事ですよね。

勝亦 この紙管と紙管は経は同じだけど厚さが違って、横使いするときは厚い紙管、縦使いするときは薄い紙管を使ってますね。重量が全然違うんですよ。

丸山 水かけて横から蹴ったりすると紙管はすぐ折れちゃいますね。水・横に弱い。水は断面から吸っていっちゃいます。だから断面を下にして下に水が溜まったりするとダメですね。

菊地 ニスも塗ってるのですか?

西大條 いろんな人が使うので汚れにくいようにしたいという話をしていて、天板などの木材はニスを塗っています。紙管は素材感を出すため塗らずにおく想定だったそうなのですが、誤って一部の紙管には塗っちゃったんですよね。それで色の濃い紙管があるんです。
でも、大小のいすになる紙管のうち、大のいすの紙管だけに塗ったので、見分けがしやすくなりましたよね??

一同 (苦笑)

菊地 組み立てにはどのくらいかかったのですか?

西大條 丸3日はかかっていないですね。5人くらいで作業していましたが、フル稼働というほどではなかったです。組み立ててるときもみんな楽しそうでした。

勝亦 ワークショップ的なイベントとして組み立て費をかけずにできそうですよね。

木材をやすり、いすの脚を仮止め、有孔ボードを木材の大きさに切断。実制作に関しては大部分を学生さんたちにおまかせしていました

屋台の台座の制作中。紙管をはめてボンドで固定

いすの脚を固定し、屋台の台座の天面をはめこみ

完成したPMKの一部を早速使ってみる学生のみなさん

PMKを含む、弥生台TRY BOXのほぼ全ての設えが完成!

 

オープン2日前の夜、ようやく準備が整った弥生台TRY BOX。
PMKを用いて実際にどんな場が展開されていくのか、このときはまだわかりませんでした。
最終回となる次回は、初日から衝撃を受けたオーナーさんによる数々のPMKの使いこなしぶりを対談メンバーで検証するところからスタートします。お楽しみに!

 

★ 現在の「弥生台TRY BOX」の出店スケジュールはこちらからご覧いただけます。
☆ 各オーナーさんによるインスタ発信もぜひご覧ください!→→#弥生台TRYBOX

 


profile

勝亦優祐(かつまたゆうすけ)
〈勝亦丸山建築計画〉代表取締役。1987年静岡県富士市生まれ。工学院大学大学院工学研究科(木下庸子研究室)修了。静岡県富士市と東京都北区の2拠点で、建築、インテリア、家具、プロダクトデザイン、都市リサーチ、地域資源を生かした事業開発等の活動を行っている。

丸山裕貴(まるやまゆうき)
〈勝亦丸山建築計画〉取締役。1987年埼玉県坂戸市生まれ。工学院大学大学院工学研究科(西森陸雄研究室)修了。静岡県富士市と東京都北区の2拠点で、建築、インテリア、家具、プロダクトデザイン、都市リサーチ、地域資源を生かした事業開発等の活動を行っている。

西大條晶子(にしおおえだあきこ)
1983年宮城県生まれ。明治大学卒業。2018年よりオンデザインで、おもに地域拠点の企画運営を手掛けている。

大西未紗(おおにし・みさ)
1995年愛媛県生まれ。名城大学卒業、名古屋市立大学大学院終了。2020年よりオンデザイン。設計業務だけでなく拠点運営、カレンダーの制作など幅広い案件を担当している。

菊地純平(きくち・じゅんぺい)
1993年埼玉県生まれ。芝浦工業大学卒業、筑波大学大学院修了。2017年にUR都市機構に入社し、団地のストック活用・再生業務に従事。2019年にOpenA/公共R不動産に入社し、公共不動産活用のプロジェクトを担当。また、2015年よりNPO法人ローカルデザインネットワークにて静岡県東伊豆町の空き家改修、まちづくりプロジェクトに携わる。