ケンチク探検隊がゆく!
#02
卒業設計展と
ひも解き方
オンデザイン1年目の若手が現役建築学生と一緒に、設定したテーマに沿って、展示会や内覧会を観てまわり、建築について考えるシリーズ。
第2回目のテーマは「ひも解き方」です。
@神奈川大学
建築学生にとって4年間の集大成が卒業設計。そこで今回は、ちよだ隊員の母校である神奈川大学の2019年度卒業設計展を訪ねることからスタート!
探検先では、面白い作品、カッコいい作品、迫力のある作品、熱のこもった作品など、たくさん見ることができました。以下、その中から卒業設計のテーマをひも解くうえでの、「悩み」や「苦心」について話してくれた学生3人の作品を紹介します。
①さづかくん
テーマ「震災前と震災後を視野に入れた復興計画」
敷地:静岡県 |
これから到来するであろう東南海地震に対して、自分が住んでいるまちや人たちを守り、日常的に自然災害に対する意識を高め、まちをつなげる土木的スケールで考えた施設の提案 |
Q. どういう手法でこの計画を作ったの?
A. 3.11を参考に津波の想定高さなど、既存の避難計画をもとにマスタープランを作成しました。港や民家など、まちの文脈を読み込みながら、縦軸と横軸を意識した設計をしました。横軸は東海道や国道に対して日常的な緑道を通して「離れ」を付属させ、縦軸は駿河湾、港、バイパス、JR、東海道に「民家」を繋げるように計画しました。土木的スケールでまちを読み解いた後で、建築スケールに落とし込むという手法をとりました。
Q. 卒業設計を進めていく上で難しかったところは?
A. 生活面では、効率良くやるためにいかに最低限の生活を保ちつつ、長いスパンをやり抜くかということを意識しました。結果的には毎日家での睡眠確保していました。
②みやもとさん
テーマ「大学とオフィスにおける多文化交流施設の提案」
敷地:神奈川県横浜市みなとみらいエリア |
大都市における類似的なオフィス街と日本のおける自文化中心主義について追考し、港都市、MM21地区における労働者と学生の異文化的な交流を目指した地域型大学施設の提案 |
Q. このテーマにした理由は?
A. 近い将来、日本に移民が来ると想定されているけれど、今の都市では排他的で関係性をもてていない。そこで、普段から使っている大学とオフィスに異文化を織り込むことで、異文化を分かち合い、移民の方にとっては第二の故郷、海外に飛び立つ日本人の搭乗口となるような位置付けの場になってほしいという想いのもと設計しました。
Q. 卒業設計を通して感じたことは?
A. 敷地、延べ床面積、共に大きすぎて納得のいく設計ができなかったし、リサーチもしきれなかったので悔しい気持ちです。だけど、楽しい作業空間を創ってくれた後輩、同級生、先輩がいい思い出にしてくれて、人のあたたかさを感じた卒業設計になりました。
③いいだくん
テーマ「寺院墓地を拠点とした地域の文化活動の拠点」
敷地:東京都新宿区圓照寺境内 |
墓地独特の空気感を使い、境内を中心に周囲の公共施設、教育施設との交流を生み出し、寺院墓地が地域の文化的活動の中心になるような提案 |
Q. 難しかった点は?
A. 墓石のない場所を使って、墓地の空間体験をさせる案が最初からあったんですよね。東屋、別館、資料館と単体で考えるなら容易なんですが、境内すべてでひとつの学習施設にしたかったんで、ここでしかできない設計手法を見出すのが難しかったですね。今回は、墓石のないところをピックアップして東屋を設けるというところから、別館では柱を墓石に見立てて、柱の密度の変化で場所性の違いを出していきました。資料館では境内の裏側でもあるので、学習施設としてまとまるようにしましたね。
Q. プレゼンは、どうでしたか?
A. 考えたことが論文の段階からあり、どう優先順位をつけて話してよいかわからなかったです。プレゼンでうまく伝えられないんです。。。先生に伝わらなくて苦戦してます。
神奈川大学の学生のみなさんご協力ありがとうございました。ひとつのテーマを、どうひも解いているか。彼らの熱い想いが伝わる卒業設計には、たくさんのヒントがありました! そして、探検隊は次なる場所へ……