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都市を科学する
方法論
~都市科学概論~
#03

 

「都市を科学する」とは、
レビューして仮説を立てること。
問い決め、事例集め、意味付け、
グループ化、つながり把握…。
具体的な方法論を整理したい。

 

どんな方法で、「都市を科学する」ことができるだろうか?

都市科学概論の第1回第2回で整理した、

  1. 科学する=さぐる・分かること。工学(=つくる)と異なるプロセス
  2. 都市=規模の大小にかかわらず、人が集まり関わり合って生活しているところ
  3. 建築をはじめとするテーマを設定し、その周りの都市にフォーカスする

を踏まえて今回は、具体的な方法論を考える。

 

「スタジアム」や「小屋」などをテーマに、問いを立てる

科学する際には、問いや視点が大切になる。

「スタジアム」や「小屋」などのテーマを設定するのは、都市を眺める「視点」の役割を果たすためだ。

 

これによって、たとえばスタジアム編ならば、次のような「問い」が立つ。

「スタジアムは、都市において、どのような役割を果たすのだろうか?」

 

オンラインや取材で「事例集め」

まずは問いを念頭に置いて、事例を集める。

日々いろいろな角度からの情報があふれているインターネット社会。スタジアムについても、ビジネス、スポーツ、地域づくり、など様々な角度からの記事を見つけることができる。

またオンラインだけでなく、実際にスタジアムに足を運んで経験したことも重要な情報になるし、オンデザインが事業として取り組んでいることも、事例として扱えるケースが出てくるだろう。

 

都市に対する役割で「意味付け」

次にそれぞれの事例が、都市に対してどのような「役割」を果たしているのかを考える。

事例に対する「意味付け」と言っても良い。

たとえばスタジアムにあるバーベキューシートは、「形」としてはバーベキュー場だが、「役割」を考えると「野球を“つまみ”の扱いにして、試合の楽しみ方を多様化させる」と捉えることができる。

ポイントは、目に見える「形」ではなく、それが果たしている「役割」を考えること。

「意匠・デザイン」ではなく、それが果たす「機能」に注目する、と言うこともできる。

 

この過程は、ある程度の主観が入る。

たとえばバーベーキューシートは「野球の楽しみ方を多様化させる」だけでなく、「飲食物を提供する」「地産地消を促す」「焼き肉のタレを宣伝する」のような意味付けだって、しようと思えばできるのだ。

だから、本質的な意味を問い続ける姿勢が重要になる。

 

共通で意味付けできるものを「グループ化」

個々の事例の意味付けが進むと、「グループ化」できるようになる。

スタンドのジャグジープールも、高級ラウンジも、あるいはイニング間の演出も、バーベキューシートと「形」は異なるが、「役割」に共通点を見い出すことができるのだ。

グループを包括する「意味付け」ができれば、それは「スタジアムは、都市において、どのような役割を果たし得るのだろうか?」という問いに対する答案と考える。

いくつかの答案をアウトプットするまでが、「都市を科学する」の第1段階だ。

 

都市が求めているものを「逆照射している」という考え方

ここまでのプロセスは、スタジアムに注目するようで、実は都市をさぐる行為であるとも思う。

なぜなら、「都市が求めるているもの」を、スタジアムという切り口から逆照射するからだ。

たとえば、スタジアムのバーベキュー場が果たしている役割が「試合の楽しみ方を多様化させる」ならば、「都市は、野球が好きな人もそうでない人も、みんな一緒に賑やかに楽しめる時空間を求めている」と解釈することができる。

スタジアムが、ほかにもたとえば、興行の前後に「周辺ににぎわいを波及させる」役割を担っているととらえれば、「都市は、にぎわいの核を求めている」と解釈することができる。

冒頭の「スタジアムは、都市において、どのような役割を果たすのだろうか?」という問いは、「都市は、スタジアムのような大型施設に、何を求めているのだろう?」と表裏一体。設定した「スタジアム」というテーマが、都市を眺める「視点」になっているのだ。

そして、「それに応えるためには、どんなスタジアムをつくればよいか?」を考える材料にもなっていく。

 

果たしている複数の役割の「つながり」をシステム思考で整理

さて、ここまでの整理ができたら、もう1段階試してみたいことがある。

それは、見つけた複数の役割の相互影響・因果関係などの「つながり」を整理して、テーマと都市の関係の全体像を描くことだ。

たとえばスタジアムは、バーベキューシートによって「試合の楽しみ方を多様化させる」ことで、「ターゲット層の多様性」や「動員数」を増やし、「都市におけるシンボル度合いを高める」ことにもつながっていく。

いわゆる、「システム思考」的な考え方。

この整理ができれば、都市の「求めるもの」をより深く理解するのみならず、「そのニーズに応えたり、新たな価値を生み出したりするために、どうアプローチできるのか」を考える材料になると思うのだ。

スタジアム編で出た要素の「つながり」を整理した一例。赤字は連載番号に対応。黄色はアプローチしやすいところ。

 

段階を行ったり来たり

問いを立て、「事例集め」「意味付け」「グループ化」「つながの把握」を行ったり来たりする。

それが今のところの、アーバン・サイエンス・ラボの「都市を科学する」手法だ。

 

今回の記事ではスタジアムを例に説明してきたが、いろいろなテーマで問いを立てることができる。

「都市の人にとって、移動は、どのような意味を持つのだろう?」のような、建築に収まらないテーマでも、この思考法は応用できるだろう。

「これからの都市で、家は、どんな役割を求められるのだろう?」と、変化する社会の中での根本的なところを問い直すのも面白そうだ。

小屋編の問いは「都市の人は、どんな小屋を、なぜ求めているのだろう?」と、ニーズを紐解いていくような立て方をした。

 

レビューして、“仮説”を立てる

先にも述べたように、「科学」と言いながら、「意味付け」をはじめ随所に主観が入る。

だから、導かれる結論は、仮説のひとつに過ぎないと考えている。

 

また、新事実の発見を目指すというよりも、既存の情報を並び替える「編集」的な行為でもある。

事例や情報がたくさんあるからこそ、俯瞰的な視点からの“レビュー論文”のような役割も、必要だと思うのだ。

 

レビューして仮説を立てる。

それが、「都市を科学する」ことだと思っている。

 

文章や図表、イメージイラストなどによって、分かりやすく「見える化」することにもこだわりながら、価値を出していきたい。

(了)
<文、資料:谷明洋>

※次回は「都市を科学する」ことで、何を目指すのかを考えます。

 

【関連サイト】
システム思考の参考例(Change Agent)

 

「都市を科学する」は、横浜市の建築設計事務所「オンデザイン」内にある「アーバン・サイエンス・ラボ」によるWeb連載記事です。テーマごとに、事例を集め、意味付け、体系化、見える化していきます。
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