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トイレは、文化だ。
#04
トイレから見た
アジアとヨコハマ

text & photo & illustration:emiko murakami 

 

アジアで感じた
トイレ事情

 

 

している人と目が合う@中国

中国に行きました。シルクロードの東の起点、西安市(せいあん市)というところです。知り合いと街中のレストランで食事をし、途中でトイレに行ったんです。そしたら4つの便器が並んでいて、先客がいました。

で、こっちを向いて“している”んです。

入り口を向いて。

個室なんてないです。側面にパーティションの壁はあるけれど、前にふさぐものは何もない。

つまり、丸見え。

当然、目も合う。

こちらはびっくりするけれど、相手は泰然としています。「やってますけど何か?」という顔。想像かもしれないけど、なにか深遠な謎を解こうとしているような目にも遭遇する。

とにかく現地では丸見えが当たり前なので、郷に入っては郷に従えで私も同じようにやりました。でもそれも20年前の話、今は地方都市の街中だけの話かもしれませんね。

旅先では現地の文化に合わせるようにしています。全く異質な文化の中で、時には理不尽の中に身を置いたり、不便を感じながらでも過ごしてみる。うろたえもするのですが、それが旅の醍醐味ですから。

 
手を使うことの心地よさ@インドネシア

インドネシアに行きました。仕事で一ヶ月間、バリ島で過ごしたんです。あちらの人は、トイレで紙を使う習慣がないんですね。桶か何かが置いてあって、中の水を手ですくって、そのままお尻をぬぐいます。

その時に感じたのは「なんて違和感が無いんだろう」ということでした。

手という“肌”とお尻という“肌”、両方肌で触れあうことが自然に思えました。

最初は「朝から新鮮だなあ、今日は」なんて爽やかな感動を覚えたものです。それほど手を使うことは、自分に合っていたと思います。というか身体に良さそうなので全ての人に合っていると思う。

日本に帰ってきて紙を使ったら、摩擦でお尻が痛かったです。すっかりインドネシアの習慣が身についてしまい、しばらくは紙が使えませんでした。お風呂で洗ってさっぱりしてからズボンをはく、というスタイルでいましたね。ぜひ、みなさんも体感してみてください。

さて、長旅を終え、成田に久方ぶりに帰ってくると、空港のトイレで最初にすることはウォシュレット。旅の疲れと恥は、ウォシュレットの水圧がすべて流してくれます。「ウゥウゥウゥウー」と思わずなまめかしい声が出てしまいます。

日本のようにウォシュレット機能搭載のトイレが普及している国ってあまりありません。なので、最近は海外へ出かける時は、必ずウェットティッシュを持っていくようにしています。ウェットティッシュがあれば、清潔さを保てるし、お尻も痛くないので重宝しています。

 
頭の中がショートする@ヨコハマ

横浜市の野毛という地区は、市内随一の飲み屋街です。バーや居酒屋がひしめき合っていて、飲んべえがたくさん。

その中で、都橋(みやこばし)商店街という別名「ハーモニカ横丁」と呼ばれている一角があって、僕はそこのおかまバーによく行くんですね。

お客にも煌(きら)びやかなニューハーフの方がいます。常連客の中に、帽子が似合うひときわ美しい人がいて、プロポーションも最高でした。何度か顔を見て覚えていて、僕、ちょっと恋をしました。

ある日、その人と男性トイレで遭遇したんです。

すごく綺麗な人が僕の横で立って放尿している。スカートを戻して手を洗って、おもむろに出て行くのを僕は横目で見ている。

頭の中でショートするんです。

「ちょっと待てよ、こんなに綺麗な人が立ちション(?)するわけがない」

簡単には解決できないカオスか何かが、突然降りかかってきたような感覚になりました。美人と一緒に立ちションをした僕は、うれしいような、何か悪いことをしたような罪悪感すら感じ、まるで平常心を試されているかのように、新しい世界に突入したような気分になりました。アルコールも手伝って頭の中がぐらぐらになり、不思議な夜を体験しましたね。

 

profile
小嶋 寛 hiroshi kojima

横浜生まれ、横浜育ち。横浜を舞台にさまざまなイベントを仕掛ける会社、ハッスルホールディングス代表取締役。みなとみらい21SP推進委員会事務局。日本大通り活性化委員会事務局長。伊勢原日本遺産街づくり商品開発業務を進行中。ヨコハマに生まれて60年。ヨコハマが好きで現在の職業を選びました。横浜が自慢で、よい街にまた誇れる街にしたいと日々自分なりに頑張りたいと思っています。