建築家のanother story
#02
稲毛海岸、団地暮らし
ここ数年、私たちが勤める設計事務所では、
仕事場のある横浜を離れ、地方に拠点をかまえるスタッフが増えています。
この連載では、そんなローカルで働くスタッフの一日に密着し、
働き方の違いや地域との関わり方を探ります。
地方と横浜とを行き来する中で生まれる「循環」や「気づき」を共有し、
これからの働き方を考えていきます!
連載の第2弾は、千葉で働く櫻井 彩さん。
稲毛海岸の団地に拠点を移して1年。
自身で設計を担当した団地に移り住み、千葉と横浜を行き来しながら自分らしいライフワークを模索中。
そんな櫻井さんの「仕事と暮らし」に密着します。
設計を担当した、団地リノベーションプロジェクトについてはこちら。
設計後に実施した、暮らしワークショップのレポート記事はこちら。
地元としての千葉から、ライフワークの拠点としてもっと身近な千葉に。
櫻井彩(34歳)

稲毛海岸の団地内にある公園
櫻井さんのローカルスケジュールとヨコハマスケジュール
1週間の勤務割合 ローカル(3):ヨコハマ(2)
| ローカル | ヨコハマ | |
| オンラインmtg | 10:00 仕事開始 |
朝ごはんを食べながら 打ち合わせの資料づくり |
| ランチを買いに自転車で西千葉へ | 12:00 ランチ |
気づいたらランチを食べ損ねることも… |
| オンラインmtgがない時は、 カフェへ移動し時間を決めて作業 |
14:00 打ち合わせ |
お施主さん来社。模型を見ながら打ち合わせ |
| 団地暮らしのご近所付き合い | 18:00 退勤 |
残っているスタッフと1杯 |
| 新しいカーテンの打ち合せ | 休日 |
まちづくり拠点でイベントを開催 |
10:00 仕事開始!
| オンラインmtg | 10:00 仕事開始 |
朝ごはんを食べながら 打ち合わせの資料づくり |
Q 千葉で団地暮らしをはじめてから、時間の使い方は変わりましたか?
A 結構、変わったと思います。横浜の職場に出社するのは打ち合わせや模型を触りたい時で、千葉の自宅では作業をがっつり進める時間に使いたいと思っています。ただ自宅が仕事場な分、プライベートと仕事の時間がぬるっとつながってしまいがちなので、どんなに忙しくても週に数回はバレーで体を動かしたり、外出してリフレッシュの時間を意識的にとるようにしています。以前のように平日が仕事、休日がプライベートという時間の使い方ではないところが、大きく変化した点なのかもしれません。

朝は集中して仕事するため自宅の仕事場に
12:00 ランチ
| ランチを買いに自転車で西千葉へ | 12:00 ランチ |
気づいたらランチを食べ損ねることも… |
Q お昼の休憩時間はどう過ごされていますか?
A 自宅でできるものをちゃちゃっとつくって食べることが増えたかな。今、住んでいる団地の周りに、パッと食べられる美味しいランチのお店が少ない(見つけられてないだけかも・笑)ので、気分転換がてら少し足を延ばして西千葉へ自転車を走らせます。友人や同僚が遊びに来た時などは、「HELLO GARDEN」のキオスクに出店しているサンドイッチをよく買いに行きます。団地からチャリ圏内に「こんなにいい場所があるんだ」ってことを知ってもらえるように、できるだけ西千葉のまちの様子も見てもらったりしています。

HELLO GARDENでサンドイッチを買ってランチタイム
14:00 カフェで仕事
| オンラインmtgがない時は、 カフェへ移動し時間を決めて作業 |
14:00 打ち合わせ |
お施主さん来社 模型を見ながら打ち合わせ |
Q 千葉で暮らしはじめてから、まちに出ることは増えましたか?
A 気分転換にカフェで仕事をすることも多くなった気がします。今まで暮らしていた「水谷基地」(横浜・弘明寺)や「MINOYA」(東京・大森)は、“シェアする暮らし”だったので、自宅とまちのあいだにもうひとつのゆるい社会があって、それが“シェア”だったんだと思っています。一緒に住んでいる人との暮らしを楽しんだり、一緒にまちに出て楽しんだりするような感覚は、ひとり暮らしでは感じられない豊かさや暮らしの価値があったと思います。今は自宅にいる時間も、まちに繰り出す時間もシームレスな感覚で自分の日常とまちがもっと近くなったように感じています。

ZOZO STUDIO COFFEEで気分を入れ替えて仕事再開
18:00 帰宅
| 団地暮らしのご近所付き合い | 18:00 退勤 | 残っているスタッフと1杯 |
Q 横浜と千葉とで働き方のバランスは、どうとっていますか?
A 1年間過ごしてみて、横浜と千葉の勤務比は、2:3がベストかなと思っています。当然だけど横浜に出社するには移動に時間がかかってしまいます。でも、お施主さんや一緒に取り組んでいるスタッフとは模型を見ながら対面で議論する時間が大事なので、その時間をきちんと確保するために、ふだんからなるべく無駄な時間をつくらないように、仕事もプライベートも自分の動きを約1ヵ月単位で想定できるように意識しています。

帰宅途中に出会ったご近所さんにご挨拶
休日
| 新しいカーテンの打ち合せ | 休日 | まちづくり拠点でイベントを開催 |
Q 休日はどんなことをしながら過ごしているんですか?
A 休日と平日とでプライベートを切り分けてない気がするので、どちらも意外と同じかも。地元の友達と千葉や西千葉あたりでご飯を食べたり、すでにママになっている同級生も多いから、子どもも一緒に公園へ行ったりして……なので、千葉のどこかしらに出没しています(笑)。引っ越して1年が過ぎて、このまちに暮らしているという実感が少しずつ増してきた気はします。もちろん都心に出てインプットの時間をつくることもしますが、近所での楽しみ方をもっと増やしていけるといいなと思います。最近は団地の暮らしをアップデートするために、「fabricscape」」の山本さんに依頼して、1年ほど時間をかけて自宅のカーテンをじっくり検討してみようと思っています。

様々なファブリックを暮らしに取り入れながら検討中

ファブリックがあることで外との距離感が変わる
おまけ:取材日
取材当日は、オンデザインのスタッフと西千葉エリアを訪れて、「HELLO GARDEN」や「西千葉工作室」などを一緒に巡りながらまちの空気を感じてもらいました。その後、団地に戻って、みんなで美味しいご飯を食べながら賑やかな夜を過ごしました。

西千葉エリアを案内後は自宅にご招待

旬の食材を使った美味しい夜ご飯
当時プロジェクトとして関わっていた時には、地元ではあったけれど、自分がここで暮らす想像が全く付きませんでした。
オンデザインで仕事をしていく中で、住宅を依頼してくれるお施主さんと理想の家を実現するためのお手伝いしたり、まちの拠点を運営していくプロジェクトでは、地域の1人ひとりが、まちのために自分ができるTRYを積み重ね、地域が盛り上がっていく過程に携われたり……、設計を通して身のまわりを少しずつ自分自身で良い方向へ変えていく楽しさにたくさん気づかされました。そんなことを俯瞰して感じれるようになった7年目あたりに「MINOYA」の設計・暮らしの話が舞い込んできました。住むことを決めていたこともあって、設計をしてから暮らしを地続きに捉えることができ、設計と暮らしを行き来する思考がとても楽しかったなと感じてます。その経験が千葉での暮らしを決断させる原動力になった気がしていて、暮らしを創造する楽しさを身をもって実感できたんだと思います。
MINOYAは「シェア暮らし」ですが団地では「1人暮らし」、シェアするものが“まち”へと変化しただけで、暮らしを楽しむ意味合いでは何も変わらず千葉での暮らしを全力で楽しめればいいなと思っています。千葉での「楽しい」をたくさんキャッチしながら……団地暮らしを続けてみようと思っています。(櫻井)

ZOZO TOWN本社、広場が地域とつながる場所として開かれている

生活に根ざしたものづくりができるまちの工作室(西千葉工作室)

地域の人たちが気軽に立ち寄れる暮らしの実験場(HELLO GARDEN)

ZOZOの広場を案内中の櫻井さん(左)と小澤さん(右)
取材後記
稲毛のまちを歩いて感じたのは、「 HELLO GARDEN」や「西千葉工作室」など、 志しのある若者たちにとって自由に動ける土壌が育まれているということです。支えているのは比較的規模の大きな企業ですが、それを前面に出さずに、地域によって個人の活動を支えながら、まちの表層をつくっていることが「稲毛のロ ーカルスケープ」としての印象的でした。本連載の#01で取材した古賀では個人の点と点がネットワークとしてつながりはじめて いました。それに対して稲毛のオンデザインが設計した各拠点も竣工から10年近く経ち、個々の存在や活動がまちの 魅力を形づくっているように感じました。 (濱本・矢代)
profile
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櫻井 彩 aya sakurai1991年 千葉県生まれ |
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濱本 真之 hamamoto masashi1992年 兵庫県生まれ |
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interviewer profile
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矢代花子 yashiro hanako1999年 東京都生まれ |
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