update

建築家のanother story
#01
古賀と横浜の循環

text:masashi hamamoto / hanako yashiro
edit:masashi hamamoto / hanako yashiro
photo:ondesign

ここ数年、私たちが勤める設計事務所では、
仕事場のある横浜を離れ、地方に拠点をかまえるスタッフが増えています。

この連載では、そんなローカルで働くスタッフのとある一日に密着し、
働き方の違いや地域との関わり方を探ります。

地方と横浜を行き来する中で生まれる「循環」や「気づき」を共有し、
これからの働き方を考えていきます!


【紹介】
新連載の第一弾は、地元福岡・古賀で働く小澤成美さん。
古賀に拠点を移して1年。
古賀と横浜の往復をしながら、どう古賀に貢献していくかを模索する毎日。
そんな小澤さんの、古賀の魅力満載の働きぶりに密着します。

何もないからこそ、
何かを始めるとそれが古賀にとっての新しい魅力になる。
小澤成美(28歳)

古賀海岸に広がる海と空

 

小澤さんのローカルスケジュールとヨコハマスケジュール

ローカル    ヨコハマ
 早起きして、海まで散歩 8:00
朝食
仕事の時間に間に合うように過ごす
家に戻って、朝の掃除 9:50
朝の掃除 
 自転車で出勤、みんなで朝の掃除
1人で黙々と作業 10:00
仕事開始 
朝ごはんを食べながら
作業することも
いつものお店のお弁当 12:00
ランチ
  事務所のみんなとランチ
オンライン打ち合わせ 14:00
打ち合わせ
 お施主さんのところへ電車移動
車で大学のサークルに 18:00
退勤
 事務所イッカイでイベント
「るるるる」でアルバイト! 休日
仲良しのスタッフと美術館へ

 

8:00 朝食

 早起きして海まで散歩 8:00
朝食
 仕事の時間に間に合うように過ごす

Q 古賀での朝の日課を教えてください!

A 古賀に来てから、朝の時間が充実しています。横浜では仕事に間に合うように起きてバタバタと自転車で出勤していたけど、古賀では部屋に朝日が入り込んでくるので、早起きするようになりました。歩いて15分ほどで古賀海岸に行けるので、余裕がある時は海まで散歩して、途中でコーヒーと朝ごはんを買って海辺で食べています!

密着取材した日も海辺で朝食!

 

9:50 朝の掃除

家に戻って、朝の掃除 9:00
通勤
 自転車で出勤、みんなで朝の掃除

Q 出勤時間がなくなったことで、仕事を始めるまでの時間はどんな風に過ごしていますか? 

A ひとりでもメリハリをつけるために、事務所と同じタイムスケジュールで動くようにしています。横浜でやっている朝の掃除は、古賀でも続けています。床を掃いたり、窓を拭いたり……、掃除をしたら仕事開始です! この家も古賀の昔からの風景として大切に住み継いでいきたいと思っています。

朝の掃除は横浜と変わらず継続中

 

10:00 仕事開始!

 1人で黙々と作業 10:00
仕事開始
  朝ごはんを食べながら作業することも

Q 古賀ではどんな仕事をしているんですか?

A イベントの手伝いや簡単な図面作成など小さなお仕事をいくつか受けています。今はまだ、横浜の事務所メンバーとやっている仕事がほとんどです。地域のコミュニティを動かすのが得意なので、古賀でコミュニティを立ち上げたり、グラフィックを勉強してまちのフリーペーパーや、古賀のマップを作りたいと思っています!

化粧品売り場を仕事場として活用

 

12:00 ランチ

いつものお店のお弁当 12:00
ランチ
 事務所のみんなとランチ

Q お昼の時間はどう過ごしていますか?

A 事務所にいる時は12時頃にみんなでご飯を食べる流れに自然となるけど、古賀でひとりで仕事をしているとお昼の時間を忘れてしまいがちです。なので、お昼ご飯はいきつけのお店にお弁当を買いに行くことが多いです。最近は、古賀の良い場所とか新しいお店を見つけたくて、お店探しばかりしています。バイト先でもある「るるるる」に売っている「めんたいフランス」が美味しいので、古賀に遊びにきた時にはぜひ食べて欲しいです! 

「るるるる」では福岡で人気のあるベーカリーのパンを販売

 

14:00 打ち合わせ

オンラインで横浜のメンバーと打ち合わせ 14:00
打ち合わせ
 お施主さんのところへ電車移動

Q 古賀に来て仕事へのスタンスは変わりましたか?

A 自分の家を仕事場にしているので横浜に住んでいた時に比べて仕事と私生活の境目がなくなりました。なので、曜日感覚がなくならないようにカレンダーをよく見るようになりました。あと、古賀と横浜を往復することで見えてくる両方のまちの良さに気付いてからは、建築やまちに対しての考え方が変わったと思います。

仕事の合間に自分のペースでインプット

 

18:00 退勤

車で大学のサークルに 18:00 退勤 事務所イッカイでイベント

Q 古賀のまちに出ていくことが多いのですか?

A 私も一緒に企画した「こがのばトーク」で出会った人たちと一緒に何かイベントを行ったり、毎週木曜日の19時は学生時代にお世話になった建築サークルに参加したりと、まちに出て人と会う事が多いです。そうやって外に出ていろいろなコミュニティの点を増やしていく楽しみがあります。

仕事場の2階から見える古賀のまち並み

 

休日

「るるるる」でアルバイト! 休日  仲良しのスタッフと美術館へ

Q 休日はどんなことをしているんですか?

A 休みの日は自宅のキッチンのDIYをやることが多いです。将来的にこの家をまちにひらこうと考えてて、その準備をしています。でも、手をつけたいところが多すぎて困ってしまいます。他に近くの食の交流拠点「るるるる」を運営しているまちのキーマンの橋口さんのところで店番をすることもあります。古賀に来た際はぜひ立ち寄って下さい!

「るるるる」を運営する樋口さん(左)と小澤さん(右)

 

横浜と福岡を行き来する生活を通して、私の中での変化を感じている部分は、まちの「変わり方」への価値観です。かつては、地元・古賀の昔の風景が好きなあまり建物が壊され、新しい姿へと一新されていく光景に、どこかもの悲しさを感じていました。しかし今では、まちが変わっていくこと自体が、人が集まり、街を使いこなし、新しい営みを生み出していく——そんな活気のあらわれでもあるのだと感じています。横浜と古賀ではまちの大きさも規模も全く違いますが、そんなまちへの接し方があることに気付き、古賀でも「ただ変わっていくまち」ではなく、「次なる動きが生まれようとしている古賀のまち」として捉えられるようになり、自分自身の視点も少し客観的かつポジティブになったように思います。これからは、そんな変わりゆくまちに、小さな仕掛けからでも関わっていけたらと思っています。(小澤)

 

赤煉瓦で作られた塀がこのまちの文化となっている

空が広く、川との距離が近い

西鉄跡地にまちの声が集まっている

取材後記
古賀のまちを案内してもらうことで、このまちにある文化、日々の活動といった営みだけではなく、物や建物、公共空間も含めてこのまちに流れる空気感を知ることができました。都市部と違って、プレイヤーの少ないローカルだからこそひとりの活動がこのまちを動かす大きな要素のひとつとなることに驚きました。また取材前日、小澤さんは市長と飲みに行っていた話を聞いた時は、まちを自分ごととして考えるスケールの違いだけでなく、気軽に市長とコミュニケーションできる関係性が今の古賀の風景を作っているように思いました。昔から続く風情が古賀ならではの魅力となり、ローカルスケープとしてあらわれ、風景や営みが継承されていると感じました。(濱本・矢代)

 

profile
小澤成美 ozawa narumi

1996年 福岡県生まれ
2019年 九州産業大学卒業
2019年 オンデザイン
2024年 福岡県古賀市にUターン

interviewer profile
濱本 真之 hamamoto masashi

1992年 兵庫県生まれ
2016年 近畿大学工学部卒業
2018年 近畿大学大学院修了
2018年 オンデザイン

interviewer profile
矢代花子 yashiro hanako

1999年 東京都生まれ
2022年 東京造形大学卒業
2022年 オンデザイン