都市科学概論
#01
「科学する」とは
「さぐる・分かる」
都市を科学するとは、どういうことだろう?
アーバン・サイエンス・ラボの連載第3弾は
そんな問いに立ち返る“そもそも編”。
まずは「科学する」という行為の
目的や意味合いから整理してみたい。
“そもそも編”、始めます!
「都市を科学する」とは、どういうことだろう?
言葉からすぐにイメージするのは、少し難しいかもしれない。
「都市」や「科学」という言葉の解釈は、人によって変わり得る。
「アーバン・サイエンス・ラボ」の連載第3弾は、「都市を科学するとは?」をテーマに、都市科学概論を展開する。
「スタジアム編」と「小屋編」に続く“そもそも編”の位置付けで、「都市を科学する」をあらためて整理してみたい。
「科学」を分野ではなく行為ととらえる
“そもそも編”の第1回はまず、「科学する」とはどういうことかを考える。
「科学」という言葉から、どんなことを連想するだろうか?
宇宙や生物、化学実験、あるいは薬の開発や、ロボットのことを思い浮かべるかもしれない。
これらはいわゆる、理系の分野。自然科学分野といっても良い。
高校の教科書を思い出してみれば、物理、化学、生物、地学に分かれていた。
では、言葉が「科学する」に変わると、何が思い浮かぶだろう?
科学を分野ではなく、行為としてとらえると、何のための行為だろうか?
端的に言うと、「科学する」は、「さぐる」こと「分かる」ことだと思うのだ。
そこにある構造や法則を整理し、関連付け、理解していく。
そうして世界観のようなものを鮮明にしていくことが、科学の営みではないだろうか。
科学=さぐる・分かる、工学=つくる・変える
同じ理系分野の、「工学」と対比してみると分かりやすい。
工学の目的は、「つくる」こと、「変える」こと。
問いは、「どうする?」だ。
いろいろなものを組み合わせ、形にして、世の中を変えていく。
少し前に触れた薬やロボットなどの開発は、まさにこの「工学」の要素が強い(科学で得られた知識も、もちろん活用するのだけど)。
対して科学は、理解しようとする行為。
「どうなってる?」が、問いになる。
物理や化学のような理系の分野は特に、根本的な原理や法則に近づきやすい。
自然界を支配する、普遍的でシンプルなルールを追い求めているからだ。
けれども「科学する」行為の対象となる分野を、自然科学に限定する必要はない。
「社会科学」や「人文科学」という言葉が存在するのも、そのためだ。
都市にある仮説を導き、世界観を描きたい
アーバン・サイエンス・ラボは、その「科学する」対象を、「都市」にしてみようと思ったのだ。
都市はどちらかと言えば、「科学」よりも「工学」の対象だ。
都市計画、都市開発、都市デザイン、都市建設、都市の建築−。
「どうする?」を考え、「つくる」行為を積み重ねている。
都市は再開発で、つくり続けられる。By MonochromeGreen, CC BY 3.0
そうしてできた「都市」が「どうなっている?」かを紐解くと、どんなことが見えてくるのだろうか?
人、建築、都市など、さまざまな要素の間に、どんな関係や法則を見つけられるだろうか?
人の営みも含めて、都市がどうなっているか「科学」すると、何が見えてくるだろう?
物理や化学のような明確な結論を出すことは、難しいかもしれない。
個別具体の文化や地形などが背景にあり、なにより人の営みを含んでいるからだ。
それでも、次の都市を「つくる」ことにつながる世界観を描いたり、仮説を導き出したりすることはできるのではないか。
だから、都市を「科学してみよう」と思っている。
(了)
<文、資料:谷明洋>
※次回は「都市」という言葉について考えます。
【関連サイト】
科学(かがく)とは – コトバンク
谷 明洋(Akihiro Tani) アーバン・サイエンス・ラボ主任研究員/科学コミュニケーター/宇宙と星空の案内人 1980年静岡市生まれ。天文少年→農学部→新聞記者→科学コミュニケーター(日本科学未来館)を経て、2018年からオンデザイン内の「アーバン・サイエンス・ラボ」主任研究員。「科学」して「伝える」活動を、「都市」をテーマに実践してます。新たな「問い」や「視点」との出合いが楽しみ。個人活動で「宇宙と星空の案内人」「私たちと地球のお話(出前授業)」などもやっています。 |
「都市を科学する」は、横浜市の建築設計事務所「オンデザイン」内にある「アーバン・サイエンス・ラボ」によるWeb連載記事です。テーマごとに、事例を集め、意味付け、体系化、見える化していきます。
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