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これからのアパート、
これからの地域 ・後編

text:satoshi miyashita photo:kouichi torimura 

 
第2のヨコハマアパートメントが完成!?

西田 「藤棚のアパートメント」は、竣工までに苦節6年くらい掛かっていますよね。

川口 ヨコハマアパートメントとは大きさもコンセプトも違いますけど、今後は人々の交流とかで、両方を連動させながら、たとえばヨコハマアパートメントにはできない、小さな作品の展示とかをできたらいいなと思います。

西田 お〜、それはいいですね。

川口 「建築とは建物だけじゃない。そのあとどういうふうに使われていくか、どう関わっていくか、どう見守っていくか」という西田イズムが、アイボリィアーキテクチュアの永田さんにも、しっかり受け継がれていけばいいなあと私は思います。そうなれば施主としても安心感なんです。だって、私は施主ですが、ヨコハマアパートメントの半分は西田さんのものだと思っていますから。藤棚のアパートメントも半分は永田さんのものだと思っています。

西田 うれしいですね。そう考えると65歳とかで設計すると30年経つと95歳だからもう亡くなっている可能性があるけど、若い頃に設計した建物って、意外に自分のほうが長生きだったりするじゃないですか、35歳くらいだと、30年経っても65歳だから。

川口 西田さんは建物って何年くらいが寿命だと思っていますか。

西田 だいたい通常は30年くらいを考えます。30年をベースに、40年という人もいれば、50年の人もいるし。逆に20年の人もいます。いわゆる減価償却っていうのは、木造住宅だとだいたい15年。RCなど耐久性の長いもので20年、25年くらいです。だから30年をひとつの目安にして換算するんです。

川口 なるほど。

西田 ヨコハマアパートメントは、一応、11年間でもとがとれる計算になっています。つまり、竣工して11年以降は家賃収益がプラスになるので、川口さんにとっては、また、いろいろな挑戦ができますよね。あっすでに藤棚などで、再投資してますからね。

川口 建物自体は変わらずそこにあるわけだから、今後も大家業は続けていきますし、住んでいる人たちがどんどん新しい企画を提案してくれて、できること、できないこと、中にはやってみて失敗することあると思うけど、私はやぶさかではないと思っています。

西田 元の入居者から、1階の共有スペースを昼間の時間帯に貸しスタジオにしては、という話しもあったそうですね。

川口 そう毎日ではないけど、月に何日か決めてね。

西田 写真スタジオだとか、スペース貸しにしてみたらどうかと。そのあがりの何%かを川口さんに支払う仕組みで。

川口 それを私は貯めて、共有スペースの壊れたカーテンを修繕することになっています。でも、なぜそうなったかというと壊れたカーテンを直すお金をどう捻出したらいいか、みんなで考えた時に、「こういうやり方でお金を貯めたらどうか」って話しになったんです。でも、おかしいですよね、それを考えてくれたのが元入居者なんです。カーテンの修繕費について真剣に考えてくれるてね。

西田 それって、もう完全に実家感覚じゃないですか(笑)。

川口 そう考えると今度は、藤棚にも、「実家」ができるわけで。お互い助け合っていければいいですね。

西田 横浜の住宅地にすこしずつそういう拠点ができるっていうのもいい傾向です。

川口 そうね、まあ私はご飯しか作れないんですけどね。

西田 いやいや、もう川口さんがこの地域のエリアマネージメントになりつつありますから。

川口 そんなことよりも、最近の若い男子って、女子よりも料理するのが上手じゃないですか。だから負けちゃいられないと思って。私、負けず嫌いなんです(笑)。

DATA
ヨコハマアパートメント
所在地:神奈川県横浜市
竣工年月:2009年6月
担当:西田司+中川エリカ

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PROFILE

西田 司(にしだ・おさむ)
建築家。オンデザインパートナーズ代表。

川口ひろ子(かわぐち・ひろこ)
ヨコハマアパートメントオーナー。2016年に「藤棚のアパートメント」を竣工したばかり.

@オンデザイン