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建築と模型とメディア #03
“建築”から考える
メディアの可能性

text:satoshi miyashita photo:akemi kurosaka illustration:awako hori

 

 

BEYOND ARCHITECTUREについて

西田 『BEYOND ARCHITECTURE』というウェブメディアを始めようと思ったきっかけでもあるのですが、建築って、じつはとても一般的なのに、専門性が高いために外からは「閉ざされた知」として見られがちじゃないかと。つまり社会の一部に見えても、内側で話されてる言葉が、こことここの境界面をまたいでいないことが多いと思えたんです。
 だとしたら、松井先生もいろんな角度から切り込んでいただきましたけど、ここで生まれた言葉が、じつは建築自体を開いていくんじゃないかって思います。

松井 『BEYOND ARCHITECTURE』を拝見していて、すごく重要な試みをされているなあと思いました。建築関係の専門誌って、使われている用語も難しかったりするので、読む人は読むけどなかなか敷居が高いですよね。さっきのメディアの話のように模型自体が施主と建築家をつないだり、施主の未来を見せたり……、建築っていうメディアの在り方をさらに広げるためには、それこそ雑誌やウェブマガジンのようなメディアが必要で、じつはそれこそ本当の意味のメディアミックスかなと思います。

西田 なるほど。

松井 だから、建築というメディアと雑誌やウェブマガジンのメディアとのコラボというか、施主と建築家をつなぐって意味では強いメディア性を持ちながら、さらに一般の社会とつないでいくメディアとして、『BEYOND ARCHITECTURE』のようなウェブマガジンは存在しているのかなと思います。
 メディアミックスというと一般的には、いわゆるディズニーや角川系のように、アニメ(映画)と出版、あるいは出版と放送、通信などの連携が有名ですが、狭い意味のメディアだけではなく、テーマパークやショッピングモール、コンビニなどの空間を含めて展開する場合もあるわけです。
 西田さんが建築で実践されていること、さらに、その発表の場としてカタチはないですけど広がりがあるデジタルメディアとコラボレーションしているわけで、本当に今後の展開を楽しみにしています。

西田 よく「衣・食・住」って年齢に応じて成熟してくって言われていて、若い世代はファッションに興味を持って、次に食で、最後が住。その住への興味って、昔は、40代、50代ぐらいが多かったんですけど、成熟する年齢が早まってきたことによって、もう20代で住に興味を持つ人が、だんだん増えてきている感じがします。
 最近は、DIYがブームになったように、そこそこ自分でカスタマイズしながら暮らす人が増えてきて、建築が日常化してきている感覚があります。で、日常化するときに、僕ら設計事務所をはじめとする建築業界は、さっきも話したようにそれを見える化したり、発信したり、共有したりしていくと、いろんなところで波及が起こるんじゃないかなって、そう考えてメディアもやっています。

松井 広い意味では、ミュージアムも似たような課題があると聞きます。ミュージアムってどちらかっていうとハイカルチャー的なものだと思われていて、そこには独特な魅力や媒介性があって、ミュージアムに来ないと分からないものっていうのはあると思うんです。最近なら森美術館がSNSを積極的に活用しています。

西田 確かに。

松井 空間的なメディアには圧倒的なリアリティーがあって、そこがデジタルメディアにはない魅力です。一方で、僕も模型の研究をしていて思うのですが、物質的なモノは、残念ながら拡散性は弱いんですよね。逆に、デジタルメディアやソーシャルメディアは、手触り感や、その場にいる実感みたいなのがない分、複製可能で広がりやすい。
 そう考えると美術館とかが、SNSをうまく利用しながらデジタル発信に積極的になるのもよく分かりますし、『BEYOND ARCHITECTURE』も同じ方向性なのかなと。ウェブと建築って、非モノとモノ、つまりデジタルの対極、逆方向ですよね。だからこそ両方の魅力をうまくメディアミックスしたらいいと思います。ただ、建築の良さはやっぱり見ないと分からない側面もあると感じます。そういうところをうまく連動させていければ、いいのかなあと。

西田 すごくいいヒント、いただきました!

松井 こちらこそ、たいへん勉強になりました。

【これまでの記事】
ケンチクウンチク「建築と模型とメディア#01」
ケンチクウンチク「建築と模型とメディア #02」

『模型のメディア論〜時空間を媒介する「モノ」』(青弓社)

profile
松井広志 hiroshi matsui

1983年大阪府生まれ。大阪市立大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得退学、博士(文学)、愛知淑徳大学講師。専攻はメディア論、文化社会学。編著に『いろいろあるコミュニケーションの社会学』(北樹出版、近刊)、共著に『動員のメディアミックス』(思文閣出版)、『広告の夜明け』(思文閣出版)、『ポピュラー文化ミュージアム』(ミネルヴァ書房)。論文に「メディアの物質性と媒介性」(「マス・コミュニケーション研究」第87号)、「ポピュラーカルチャーにおけるモノ」(「社会学評論」第63巻第4号)など。